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モンスター強襲

 ざざ……。ざざ……。

 「やった。あった」

 そこには、あるはずのものがあった。

 「やったー。やっほー」

 航は、一年間の浪人生活を経てついに大学に受かった。大学に昨年落ちてから、しばらく、絶望を味わった。それから、その絶望を乗り越えて一心不乱に勉強したから、その喜びはひとしおである。

 スキップしながら学校に行き担任に報告を行い、ふきっぷしながら家の玄関を開けた。

 「ただいまー」

 「おかえり、結果はどうだった?」

 「ばっちり、うかっていた」

 「そうよかったわね」

 航の返事に母親もうれしそうである。

 

 ざざ……。ざざ……。

「受験先はここにするといい。父さんの母校なんだ」

 ぼやけた意識の中でそんな父の言葉を聞こえた。

 「いや、俺は○○大学に行きたい」

 今や航には確固たる目標がある。その目標を達成するためには父親が推薦する大学では無理だ。だから、航は父親には悪いと思いながらも自分の意見をぶつけた。

 「そっか。はは」

 父親は、航の返事に若干衝撃を受けたようだが、そんなことよりも彼から自分の意志を伝えられたことにうれしさを覚えたようだった。


 カーン、カーン

 カーン、カーン

 カーン、カーン

 「うーん・・・・・・」

 何か耳障りな音がする。この村に来て初めて聞く音だ。そんなことを航が考えてきたとき、そのとき。

 「早くおきな、航」

 緊迫した声でアデラが航に命令する。

 「アデラ、どうした?」

 まだ、寝ぼけている航は気の抜けた声で尋ねた。

 「何、寝ぼけてるんだい。大変だよ。この鐘の音は、モンスターの襲来を告げる鐘音だよ」

 「何? モンスターの?」

 「そうだよ。モンスターの襲来だよ。航、早く起きな。この鐘がなっているということは村の近くにまでモンスターが襲来してきているということだよ。私たち猟師や戦える人間は、この鐘がなったら緊急招集されて、村の防衛にあたることになっているんだよ。一刻の猶予もないよ。早く起きて、準備をおし」

 「!? 分かった」

 そういうなり、航はベッドから飛び起きてモンスターと戦う準備を始める。アデラも手慣れた様子で準備をしている。

 「よし。準備ができた。航、あんたもできたね?」

 「ああ」

 「じゃあ、行くよ」

 そう掛け合い、航とアデラは家の外へ飛び出した。

 すると、そこには急いでどこかに逃げている人々の姿が見えた。鐘の音はまだ大きく鳴り響いている。

 「あの人達、どこか一か所へ向かっているようだけど?」

 「そうだよ。こういった時のために、避難場所が一応この村には用意されている。といっても、みんなで広場に集まって身を寄せ合うだけなんだけどね。そんなことより、あたしたちは村の南側に向かうよ。おそらく、森から襲来してくるモンスターに対するために、戦えるものは村の南側に集まっている」

 「分かった」

 航とアデラはいそいで村の南側に向うことにした。

 カーン、カーン。

 カーン、カーン。

 航と、アデラはそんな鐘音を聞きながら、人波に逆らうように村の南側へ大急ぎで駆ける。

 「それにしても、モンスターがいきなり攻めてくるなんて」

 駆けながら、叫ぶように航はアデラに話しかける。

 「そうだね・・・・・・。ないことはないけど珍しいね」

 「ないこと、ない?」

 「ああ・・・・・・。ないことはないよ」

 航の問いにアデラの顔が少し暗く陰った。アデラのまとう空気が少しどんよりと重くなったようだった。

 「それって・・・」

 航がそう尋ねようとしたときだった。

 「もうすぐ、着くよ」

 それは、村の南側に着いたという合図であったとともに、それ以上聞いてくれるなよというアデラの言葉であった。

 「・・・・・・」

 その先の言葉が気になりはしたものの、今は目の前のことに集中しようと航は言葉を飲み込んだ。アデラがいつか話してくれることを期待しつつ。

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