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ロスト異世界処女

 何かに締め付けられているような感触がし、航は意識を取り戻した。何か、耳障りな音も聞こえる。何の音なのだろうか?

 目を開けて立ち上がろうとするが、体の自由がきかない。何かに縛られている感じだ。何ごとだろうと、体に顔を向けると、なんと、ひもで体中をぐるぐる巻きにされて地面に転がされているではないか。

 「なんだこりゃ」

 思わず大声で叫んでしまう。すると、顔の上に醜悪な顔がのぞいてきた。そこにあったのは人間の顔でもこれまでに見知っている生物の顔でもない。緑いろの皮膚をしており、目は充血し、耳と鼻はするどくとんがっている。見たこともないみにくい生物だった。

 そして、その充血した目と視線が合ってしまった。航は、ごくりと喉を鳴らす。

 「ギャー。ギャギャギャー。フシャー」

 その醜悪な面をした醜い化け物はくさい息を航の顔に吐いたかと思うと、手に持っていた棍棒を振りかぶり、勢いよく振り下ろそうとしている。万事休すか――。自身の身に振りかかる凶行に覚悟もできないままそう思ったとき。

 ヒュっ、という音が聞こえたかと思うと、鋭く何かが刺さった音が聞こえ、醜悪な生き物の頭に一瞬にして矢が左側頭部から右側頭部にかけて生えていた。

 醜悪な生き物は一瞬何が起きたか分からないように突っ立っていたが、くぐもった低い音を出して航のそばに倒れた。

 ドスン。そんな音を出して、航を肉の塊にしようとしていた醜悪な生き物は己に振りかかった災難に気が付くこともなく、この世を去った。


 「大丈夫かい?」

 そんな声が聞こえた。

 「ちょっと待ちな、縄を今切ってやるから」

 「……」

 航は、自身に振りかかろうとしていた恐怖により言葉が出なかった。心の中で、神使に対する恨みの言葉を述べつつ、縄を切ってもらい助けられるのを待った。

 「ほら、できたよ」

 彼女はそういい、手を差し出してきた。航は手をとって立ち上がった。まだ、体をぶるぶる震えている。

 「このたびはなんてお礼をいったらよいか」

 「いいよ、そんなことは。森に入って猟をしている途中で助けたようなものだから。それより、大丈夫かい?」

 そう言ってくれた彼女を見て航をどきりとした。身長は170cmくらいで、引き締まったボディをしており、年のころは30歳前後だろうか、目鼻立ちの整った顔をしている。それだけなら別にドキリとはしないのだが、航の気を引いたのは、銀色に透き通ったポニーテールとあまりにも慎ましやか胸部であった。

 航は、先ほどとは異なる意味でごくりと喉を鳴らした。

 「よっぽど怖かったんだろう。 水でも飲むかい?」

 「はい。ありがとうございます」

 そういわれて気づいたが喉がカラカラだった。そして、彼女から受け取った水を飲む。恐怖でカラカラだった喉は水で潤い、若干気持ちが落ち着いてくるのを感じる。

 「あたしの名前は、アデラ。あんたの名前は?」

 「俺は、航です」

 「よし、航、いろいろ聞きたいこともあるけど、ここでは少し危険だ。村に案内するから、ついておいで」

 こうして、妙齢の女性に案内されて、航は村に連れて行かれることとなった。

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