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ゴブリンの集団

 キィド村南側広場

 「ギャー。―ャーギャー。―シャー」×たくさん

 森に面するキィド村の南側にたどり着いた航とアデラを待っていたのは・・・・・・。ゴブリンだった。

 広場にたどり着いていた村の猛者たちがその集団と戦っていた。

 百余りのゴブリンに対しているのは15人ほどの屈強な村人たちであった。

 「村長」

 ゴブリンと村人が戦っている後方あたりにいる村長にアデラが緊迫した様子で叫ぶ。

 「アデラさんですか」

 「遅れてすまないね。それにしても、なんだか、ずいぶんと苦戦しているようじゃないかい?」

 広場では、血しぶきが舞い、あちらこちらに血だまりができている。その血だまりを作っているのは、ゴブリンばかりではない。すでに、数十のゴブリンを倒しているようだが、村人の遺体も転がっている。

 「ギャー。―ャーギャー。―シャー」

 「ギャー、俺の腕が・・・・・・」

 「殺してくれ。お願いだから、殺してくれ」

 耳をつんざくようなゴブリンの鳴き声に交じって、戦いによって負傷した村人のむせび泣く声が聞こえる。

 「そうなんですよ。ゴブリンが集団で現れれること自体まれなのに、なぜか、このゴブリンの集団は異常に統制が取れているのです。ゴブリンシャーマンにしては・・・・・・」 

 ゴブリンは最弱のモンスターである。ゴブリンを最弱たらしめるのは、個体の弱さ。そして、個体間の無連携にある。

 別々にゴブリンが十体出てきても、モンスターに熟練した人間なら問題なく倒す。しかし、同じ数が集団で現れると、例え熟練した人間であっても一人では対処ができなくなる。それは、数の論理で押されるからというのもあるが、上位のゴブリンが存在し集団を統制するからともいえる。

 「そうかい? 変だね」

 そう言うと、アデラは弓を背からおろすと、矢筒から矢を取り出し、一本の矢を素早く射た。

 「あ? ギャ?」

 アデラの射た矢は、集団の前方にいた一匹のゴブリンの前頭部に直撃した。そのゴブリンは、一瞬何事が起ったのか分からない風な呆けた顔をして、次の瞬間には地面に倒れて、ただの肉塊となり果てた。

 「でも、やるしかないね。航、あんたは集団から外れてこちらにやってきたゴブリンの相手をしておくれよ。とりあえず、数を減らすしかないね。そうじゃないと、ゴブリンシャーマンにたどり着けない」

 「分かった」

 航は、アデラの命令に返事をすると、腰に掛けた鞘から剣を抜き かまえた。剣の切っ先が細かく震える。アデラと共に数匹のゴブリンと戦ったことがあるとはいえ、これほどの修羅場には航は直面したことはない。

 航の額から汗が一本、二本と冷たく、滴り落ちる。

 「なんだい。怖いのかい?」

 「いや、これは武者震いだ」

 航は、腕で汗をぬぐいそう答えた。

 「そうかい。フフ。それじゃあ、そういうことにしとこうかね」

 アデラは会話をしながら、次々とゴブリンを射ていく。そして、その矢は正確にゴブリンの頭に直撃し、一匹また一匹と地面を緑色の屍で埋めていった。

 すごいな。鬼神のようなその光景を横目で見ながら、集団から飛びだしてきたゴブリンを航も一匹ずつ打倒していく。

 武者震い(?)は徐々に静まっていき、今では、脳みそが沸騰した感覚を航は楽しんでいる。それと同時に時間の感覚を失っていく。

 一匹、また一匹。一匹、また一匹。一匹、また一匹。ただ、目の前の敵に集中する。

 

 どれほどの時間が経過したかは分からない。

 「航」

 「・・・・・・」

 「おい、航」

 「・・・・・・」

 ガン

 「いてっ」

 急に航はぶん殴られたような衝撃を感じ我に返った。

 後ろを振り向くとそこには鬼面を付けたような形相をした鬼神がいた。どうやら、ぶん殴られたようだ。

 「なにすんだよ。アデラ」

 「無視するんじゃないよ」

 「なんだよ」

 「周りをお見よ。もうすぐ、終結するよ」

 アデラに促され航が周辺を見渡すと、100匹はいたであろうゴブリンの集団は10数匹あまりにまで減っていた。

 「もう、ゴブリンシャーマンを狩れるよ」

 アデラは弓を構えながらそう言う。そして、弦を引き絞り射ようとした。

 そのとき。

 「キシャ―」

 猛烈な叫び声が聞こえたかと思うと、その刹那、アデラと航の前に一匹のモンスターが飛び込んできた。

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