こっちの生活もいいかもしれん
ちょーーーーーーー久しぶりでごさいます
きっと初めましてでしょう、valです
興味をもっていただけると、幸いです
「強くなれない」
メモリは心から同情する、といった表情で言った
そんな………こんなことってあるかよ
記憶が飛んだままここまで来て、破壊具がいきなりSランクで、それならまだ死なずにすむかなって……よかったって
なのに……
「まぁ、普通ならね☆」
「へ……?」
メモリはきゃぴっと言い放ち、ラストにウインクを決めた
さっきのシリアスはどこいった
「だから普通なら、奨真君はここで詰みだったよ」
え……?まだ、理解、できないな、普通なら、詰み?
しかもだったよって
「理解できないって顔だね、でも私は奨真君が普通じゃないって思ってる、否、確信してるよ」
俺は異常だってことか?
普通じゃない……異常
「でも、今は普通かもね」
━━だから
「異常になろう この世界では異常こそが普通」
なるほど……異常こそ普通
「なれるかな、 いや、今すぐなる 異常に、それが普通なのなら」
「いいねぇ、期待してるよ 奨真君、新たなる境地へ、Sのさきへ」
ははは、どんなことでも心の持ちようしだいってことか
なら、がぜんやる気が出てくる
越えてやる、越えてやるぞ!
「じゃあ、奨真君の破壊具に名前をつけてあげよ」
おっと、忘れてた 破壊の龍腕……破壊の龍
「リンドブルム……今日からこいつはリンドブルムだ!」
破壊的な龍で最初に思いついた龍の名前だった
よろしくな、相棒!
「ふふふっ、いい名前だと思うよ」
っと、メモリはこちらを見て微笑んでいた
ちょっと待ってめっちゃかわええやん
「それじゃあ、今から登録しに行こうか」
「ん?なにを」
ていうか、そんなシステムがこの世界にあったのか
「個人情報をだよ、正式なブレイカーになるにはちゃんとした手順があるんだよ」
「正式?それじゃあ俺はまだブレイカーじゃないのか?」
「そうだねぇ、訓練生ってとこかな そして手順っていうのは」
正式なブレイカーになるためには、きちんとした過程が必要になる
まず名前、年齢、性別などの基本情報、そして破生界に来た理由、破壊具の真名、ランク、これらの個人情報をプロフィールとしてブレイフットの闘技城に提出する
もう一つは師の許可 ブレイフットでは新人ブレイカーが集まるため、師弟制が規則になっている、師の免許を持った人間がプロフィールを確認し、師匠の方から弟子を選ぶ
選ばれた弟子は、師匠からさまざまなことを学び、許可を貰うことにより初めて正式なブレイカーになることが出来る
はぁ、以上、とても簡潔
「で、これどうやって戻すの?」
腕を指しながら言う
「ああ、えっとね ちょっと深呼吸してみて」
「すぅ………はぁぁ………」
すると鉄色の装甲は黒い霧となって消え、もとの右腕に戻った
あ……消えた
「と、いうことで……闘技城にやってきましたぁ!」
・・・。
「………い、いきなりどした」
「い、いやぁ……なんでもない」
今俺達は、このブレイフット最大建築物の闘技城前まで来ている、目の前には橋桁がかかっており、その下では堀に水が溜めてある
門のたぐいは無く、誰でも入れるようだ
そんなことより………うん、立派だ
遠目で見た時はうっすらとしか分からなかったが、やっぱり城と闘技場……いわゆるコロッセオが隣り合って合体している
しかも、城と言うよりも砦と言った方がいいかな
あきらかに頑丈そうな石造り、いろんな所から連なって顔を出している砲管、そして異様なまでの威圧感
やっぱり砦じゃなくて要塞だな
ここで疑問が一つ……
「静かだな」
商店街の時に比べ、あきらかに人が少ない
ここから見えるだけだと、十数人ほどしかいない
これじゃあ静かで当たりまえだ
「まぁ、今日はイベントとか何にもしてないからね」
闘技城では、不定期で催し物がされていて、その時くらいしか沢山の人は集まらないらしい
催し物と言ってもいろいろあって、特にブレイカーどうしが破壊具で戦う『破壊決闘』が最も人気だそうだ
キリング・ブレイクは、ブレイフットだけではなく他の街からも参加者が集う大きな大会で、ブレイカー達にはファイトマネーも普及される
なので、それを職にするブレイカーも少なくないそうだ
「へぇ、そんなんがあるんだな」
「ちなみに参加条件は、破壊具が戦闘用であることと、死ぬ覚悟を決めることだね」
ははは……しれっとエグいこと言いやがったな
こんな話しをしている間に橋をこえ、中庭をこえ、城の入り口であろう扉の所まで来ていた
ギギギギ━━と音を響かせながらメモリによって扉が開かれる
「ここが闘技城の1階部分だよ」
「おぉ!」
広い、建物にしてはとんでもなく広い空間がそこにあった
いくつも置かれた大きな円卓、そして周りの壁のあちこちに作られたカウンターのような場所、これはまさに
「酒場だ!クエストカウンターみたいだ」
「残念ながらどこぞの狩りゲーじゃないけどね」
いや、それは分かるけど……………って!知ってるのかい!?
「まぁ、酒場っていうのは間違いないよ 闘技城でなにかイベントとかがあるとき、ここに沢山の人が集まってわいわいするの」
なるほど、それでこの広さか……
「イベントに参加するときも、ここでエントリーして、奥の控室にいくんだよ」
っと、メモリの指さす方を見るとひときわ大きなカウンターがあり、その隣には奥に続く入り口があった
「じゃあ、さっさと登録しちゃおうか」
っと、メモリは数ある内の一つのカウンターに向かって歩みを進める
そこはイベントの受付カウンターよりは、こじんまりとしたもので、向かって右端に大きな掲示板が立っていた
見てみるとたくさんの人のプロフィールが貼ってある
まるで履歴書だ
俺もこれ書くのか……
「はい、紙もらってきたよ」
「おう、ありがとう」
メモリから、プロフィール用紙を受け取る
見ればみるほど履歴書だな
えぇと、まず
名前………辻桐奨真
年齢………17才
性別………男
ここまでは普通だ
破壊具━真名………破壊の龍腕
ランク…S
名前………リンドブルム
ひととおり書き終え、ある欄に目がとまる
破生界に来た動機………記憶なし
ってところでいいだろう
だってしょうがないじゃん、覚えてないんだもん
「よし、じゃあこれを……」
「そこに入れておいてね」
メモリが指したのはひと抱えほどの木箱、その上には一文字に切り込みが入っていた
そこにプロフィール用紙を落としメモリに向きなおる
「これで、いいのか?」
「うん、あとはここの人がやっといてくれるから」
うん、なにも分からない新人にやさしいシステムだ
「どんな人が師匠になるんだろうな」
「うぅん、そうだねぇ……いきなりSランクのブレイカーを取る人なんて、よっぽどの物好きだと思うけどなぁ」
そうですか………
プロフィールの提出も終え、事務所に帰ろうかと話し始めたころ
「ちょっとよりたい所があるんだけど、いいかな?まだ歩けそう?」
「あぁ、全然問題ない」
くっそぉ、今思えばあれ完全なフラグだったな
「重てぃ……」
俺達は今、闘技城から商店街の大通りまで戻り買い物をしていた
俺が抱えているのは発泡スチロールのような箱、中身は魚だ、それもなかなかな重量のある大きな箱、氷がパンパンに入っている
メモリも同様に木箱を抱えている、中身は野菜、木箱からあふれんばかりに積まれているが、軽々と抱えている
「だから大丈夫?って聞いたじゃん」
「いやだって、まさか買い物で、それにこんな大荷物になるとは思ってなかったから」
そう、買い物の時点ではまだ良い、問題はその量
店の人たちが次々とメモリにサービスサービスといって野菜やら魚やらをわたしていった
メモリの人気度はんぱねぇ、赤字になっちゃうぞおじさん達
「がんばって、もう事務所に戻るがら、ほらあとちょっと」
「おぉぉ……」
よく、あんな重そうなもん楽そうに持ってられるよな、単に筋力持久値が高いのか、それともこれが破壊具によって付与される力なのか
でもメモリの破壊具ってあの虫眼鏡みたいなやつなんだよな、そこから力が来てるとは思いにくい、なら単純に自分を鍛え上げた成果なのか、あの巨大な門を片手で開けて見せたメモリの実力がどれほどのものなのか
子供のような好奇心が押しよせてくる
いったいどれほどの経験を積み、過ごしてきたのだろう、俺もあんなふうになれるだろうか
破壊具は既にランクSで詰み状態、限界を軽く越えないとたどり着けないような境地へ、俺は行けるだろうか
まずリンドブルムが今どれくらいの能力値を持ってるのか知りたいな
ていうか腕じゃん
うぅぅん、武器なの?防具なの?特殊能力でもあるのかな
新しいおもちゃをもらった子供のようなうきうきとした気持ちがどんどん湧いてくる
俺もまだまだ子供だな、
自分の率直な感情にすこし情けなさを感じる
こんな思いにふけっている内、いつの間にか事務所には着いていた
店の入り口をくぐり中へ、こんどは先のカウンターではなく二階に案内される
階段を上った先は右に折れリビングのような空間がひろがっていた
そして衝撃をうける
「げ、現代感はんぱねぇ……」
中は木をふんだんに使用し、落ち着いたモダンな感じ、キッチンは木目が特徴的なダイニングキッチン、部屋の中心あたりに木製のしゃれた円卓
ここまではシンプルな木の部屋という印象が強い
そして俺が衝撃をうけた部分……
「テレビ? エアコン? 冷蔵庫?」
部屋の各所に前いた世界の便利家電が設置され、異彩を放っている
「いやいや、それくらいあるから普通に」
「だ、だって世界観が……」
「世界観なんて気にしてたら不便しかないよ とりあえず荷物そこに置いといてね」
言われたとおり円卓に抱えていた荷物を置いておく
するとメモリはここの生活について教えてくれた
ここの生活は基本的には前いた世界とほとんど変わらず、水道も通ってるし、テレビ中継もされる
電気や火は魔方陣でおぎなっているため不便はない、世界観なんて気にしてたら生活しずらいということできちんと割り切っているようだ
しかもテレビチャンネルは前の世界のもあって、電波を合わせればつなぐことができるそうだ
やった、これで見かけてたアニメの続きが見られる
いやぁ、もう二度と見れないかと思った
「へえ、奨真君アニメ系の好きなんだ」
「ああ、好きは好きだな。やっぱあれは文化だろ」
確かに好きだしな、熱さとか感動とかいろいろ
「それ人前で言う人初めて見たよ まあ、私も人のことは言えないけど」
「ほぉ、メモリもいける口か」
「ふふん、もちろん 本屋さんにはライトノベルとかもあるから今度行ってみるといいよ、しかも最新巻までそろってる」
メモリはドャァと言わんばかりに自慢げだ
だけど考えてみれば不思議だ、いったいどうやって前の世界から電波をつないだり本を取りよせたりしてるのだろう
もちろんメモリに聞いてみたが、メモリもそこまでは分からないようだった
「さて、それじゃあ食事にしようか、お腹すいたでしょ?」
メモリに聞かれ意識してしまったせいか、腹の虫がぐぅぅぅと鳴いた
そういえば、こっちに来てからまだ何も食べていなかった
急激な空腹を感じ少し気持ち悪くなる
「あぁ、やっぱり ごめんねあんなに歩かせちゃって」
「いや、全然 俺も今気づいたし」
とは言ったが………けっこうキツいな、ちょっと気持ち悪いし
っと、内心でつぶやいていると
「とりあえずこれ食べてて、このまま食事ができるの待ってたらキツいでしょ」
と言って、リンゴを一つ放ってきた
商店街で買っていたやつだ
受けとると、水々しく水滴がついており、もう洗ってある
なんて気が利く!一緒にいたらダメ人間になってしまいそう!
なんてアホなことを思いながら机に座る
大きくて、つややかなその実を皮のままひとかじり
シャクっといい音とともに口の中にほどよい甘さが広がる
実がしまっているのに水分量が多く、するすると喉を通ってゆく
「おいしいな……!」
「でしょ!果物屋のおばちゃんのお勧めだよ」
野菜達をダイニングのシンクで洗いながらメモリが言ってきた、その姿は装甲を外しエプロン姿になっている
い、いつ着替えたん?
「ここには果樹園もあるんだな」
「街の北の方は農園や果樹園になってるんだよ 魔力とか魔方陣で環境をかえたりするからいつでも育てれるの 季節なんて完全に無視」
無茶苦茶な………環境の循環はどうなってんだよ
こんな話しをしてる間に作業は進んでいき、包丁の音が聞こえ出す
俺もリンゴを食べ進める
シャクシャクシャク……… トントントントン………
シャクシャクシャク……… トントントントン………
シャクシャ……あ、なくなった トントントン………
トントントントン、トントントントン…………
しんとした空間に包丁の音だけが続く
俺はほおづえをつき、リンゴの芯を限界まで細くなるまでかじっていたが
暇だ……
何かを待っているのが苦手な俺はメモリに一つ提案を
「俺も手伝っていい?」
「ん? 別にいいけど、奨真君料理とかするの?」
振り向いたメモリはキョトンとした様子だ
「あぁ、前は俺が料理担当だったからな」
「ほぉ、それはたのもしいね、じゃあ魚をさばいてもらおうかな」
「了解 これ全部?」
と、発泡スチロールのような箱を開ける
「ううん、適当に2匹くらい出して 残りはあとで冷凍庫に入れとくから」
2匹くらいねえ、どれにしようか
とりあえず目についた魚を2匹取り上げみる
氷に浸かっていたそれらはひんやりと冷たく、どちらも40㎝ほどあるだろうか、ずしりと重い
こいつらにするか、なかなかなサイズでさばきがいがありそうだ
2匹を持ってダイニングに向かうと、シンクの縦半分を遮るように木製のまな板が用意されていた
「1匹は刺身サイズの切り身にして、もう1匹は3枚におろすだけでいいよ」
っと、メモリからの指示
「了解」
一匹をまな板に置き、もう一匹は隣のトレーへ
ここからは!
この俺、辻桐奨真の魚のさばき方のコーナー
今回は3枚におろすから、まず頭をおとそう
バスン━━━
さあ、さっそく断面から内蔵がはみ出してきたぞ
次は腹を裂こう
頭をおとした断面からお尻の穴にかけて
一刀両断!
さらに内蔵がはみ出てきたぜ
次はそのはみ出した内蔵をかき出そう
はい、お腹に手をいれてぇ………ズルズルっと!
引きずり出した内蔵はシンクに用意してあったザルに入れておきましょう
あとは、腹の中を水道で綺麗にあらって
ついに3枚におろします
頭があった方から背骨にそって尾ビレの方へ切っていこう、反対側も同じようにね
これで2枚の切り身ができたね
次は刺身サイズに切っていこう
切り身を縦に半分に切って、尾ビレ側からスッと斜めに包丁を入れていくよ、厚さは好みで決めよう
この作業を2枚ともやったら刺身の完成だ
もう一匹は、3枚におろした段階で作業終了
切った魚をトレーに入れ、メモリの隣へ置く
メモリが切っていた野菜たちは全ての作業を終え、器に盛り付けられていた
メモリは手のひらから赤く光る魔方陣を出現させ、コンロであろう場所に置き、その上からフライパンをのせた
のせられたフライパンに熱が通り始めたのだろう、中心部分がほんのりと赤くなっていく
フライパンに油をしいて準備完了
そのあとは、あれよあれよとだ
魚は香草のこうばしい香りとともに焼かれ、皿にのる
刺身は薄い厚さの角皿に盛り付けられ食卓にならんだ
ある程度のつけ合わせも作れば
今夜の夕食の完成
魚の香草焼きに、刺身、サラダと、そのほかつけ合わせ
そして白ご飯
どれも食欲をそそる良い匂いだ
「おいしい!」
「でしょぉ、私が腕によりをかけて作ったからね」
まあ、俺もだけどな
それにしても良い味だ
焼き魚のこうばしい香りは鼻をスッと抜けてしつこくない
刺身も口に入れた途端にトロッとほどける
サラダもシャキシャキと口当たりの良い食感をくれた
そのほかのつけ合わせも白ご飯といいコンビだ
前の世界では多分味わえなかったであろう食事に、感動を超え感嘆する
自分ではどうあがいてもこの味はだせそうにない
それほどの経験だった
それに加え、誰かと食事をするのは久しぶりな気がした
ついこの前の記憶では親父に母さん、妹と楽しく食卓を囲んだ記憶があるというのに
メモリとの会話は楽しかった
自分の経験談に、前の世界の話、好きな食べ物に、趣味であるアニメの話はつい熱く語ってしまった
そんな他愛ない話をしている間に食事はなくなり
空になった皿達は、自分の任務をまっとうして誇らしげに並んでいるようにも見えた
「よし、食事もすんだし、お風呂はいろっか 汗とかいっぱいかいてるでしょ、もうわかしてあるから」
な、なに!
風呂だと、いつだ、いつ沸かした
この女………できる
なんてことをちょろっと考えながらも、素直にうれしかった
「そうだな、汗汚いし、服も汚れてるし、ありがたくいただくよ」
「服は洗濯機があるから、そこに入れておいてね」
お、おぉ……どこまでも世界観ズレてやがる
「ふぅぅぅぃぃぃ」
いや~、あったけえ~
体も心もリラックスできる風呂
温かいお湯で緊張していた筋肉がほどけて溶けてしまいそうな感覚、細胞レベルでリラックスしている気さえした
やっぱり風呂はいい
しかも結構広めで、体をしっかり伸ばせるしな
だか、
「ううん、この光景がな………」
そこにはあきらかな現代観が漂っている
外で見てきた景色とのギャップがエグすぎる
接点が何一つないのだ
洗濯機もドラム式のいいやつだったしな
「湯かげんはどお~」
っと、メモリの声がして風呂の入口を見ると
「って、言いながらなぜ入ってくる」
「え?さっき入ろっか、って言ったじゃん」
そういう意味かよ……
「それに疲れてるでしょ、背中ながしてあげようと思って」
「いや、それは初対面の男に対してすることじゃないだろ」
「もう、奨真君ったらぁ もう私達は初対面って仲じゃないでしょ」
「だからと言って一緒に風呂という空間にいる仲でもないだろ」
それに
「なんでティーシャツに短パンなんだよ」
そう、そこである
ここは水着、もしくはタオル一枚で入ってくるのがヒロインのセオリー
それをティーシャツて
短パンて
なんでやねん!
「ええ……そこぉ?」
「そこ」
「もう女の子がタオル一枚とかでお風呂に入ってくる時代は終わったんだよ」
夢がねえ……
「知ってる?人の夢と書いて儚いって読むんだよ それにさ、奨真君はなんで動揺とかしないの? ここは、なななな、なんで入ってくんだよ!! とか、なるとこでしょ」
「は! 女の子が急に風呂に入ってきて動揺するような時代は終わったんだよ」
もう、これは切実な願いだね
アニメ見てたらいっつもだ、わたわたしやがって
このヘタレめ、しっかりしやがれ
って、言う
嫌いな展開ではないけどな
「いいじゃん、かわいくて」
「ヘタレは嫌いだ、あと出し惜しみする奴も好きじゃない」
「はいはい とりあえず湯船からあがってよ、背中ながしてあげるから」
「でも、俺 下なんにもつけてないぞ」
「・・・もう、はい」
っと、メモリが渡してきたのは茶色いバスタオルだった
「かゆい所はないですかあ」
「おう、いい感じ、気持ちいいぞ~」
なんだかんだ言ったが、結局茶色いタオルを腰にまいてメモリに背中を流してもらっている
実は結構うれしかったりする
家族以外の女の子に背中を流してもらうなんて今までなかったので、とても新鮮な気分だ
メモリは背中を洗ってくれながら、たまに「うわ」とか「おぉ」とか呟いているが、特に気にならなかったのでほうっておいた
そして洗う場所が、背中から腕に入ろうとした時、ふいにメモリの顔が目に入った
髪は蒸気でしっとりしていて、顔は朱にほてった様、目は物欲しげな光が漂いなんとも、そうなんとも……エ、エロい
(え、えぇ……なんなの……?)
(ふぁぁ見とれちゃうなぁ、すごいよ奨真君の体、特に筋肉! 服着てる時は全然きにならなかったのにぃ、素肌を見るとどうしても魅入っちゃうよ)
体の線は細く見えるのに、体を動かすための筋肉がしっかりきちんとついている、ボディービルダーのようにウエイトやダンベルをつかって鍛えたのではない、闘いの中で自然についていったような、まさに闘うために作りあげられた洗練された体だ
全体的に見たところ、四肢の筋肉のつき方がきわめて良い、バランスよくついた筋肉は、何の違和感なく動かすことができ、確かな攻撃力があるだろう
そして胴部分、少しばかり薄く見えるが、胸筋は腕を行使するためか伸縮性が高そうで、腹筋はそこまで隆起している訳ではなく、防御力にすこし不安があるといった感じだ
その分、普通に鍛えるだけではつかないインナーマッスルが良く鍛えられていて、スピードの高い動きができるだろう
筋肉を観れば、その人のだいたいの戦闘スタイルが見えてくる、奨真の場合はスピード攻撃特化といったところだろう、この体があれば十分にブレイフットでは生きていけるはずである
それにしても
(ぅぅぅ、ホントに綺麗な筋肉だなぁ、もっと触ってたいよ あぁ、腕が終わっちゃった……あとは下と前だけど……さすがにダメだよね!無理に決まってるよね! ……でもなぁ、どうしよう!!)
「………リ、……メモリ、おーいメモリー」
「ふぁい?」
意識が現実に急浮上し、すっとんきょうな返事を返してしまう、そしていったいどうしたんだと言うような奨真の顔があった
「どうしたよ?そんなエロい顔して」
一瞬なにを言われたのか分からなかったが、夢見心地な脳の覚醒によって……
「ち、ちがうもん!!そんなことないもん!!」
いやぁぁ、私そんな顔してたのぉ……恥ずかしいよ
「いやいや、まさかメモリがそんなに筋肉フェチだったとは」
え??まさか……
「口に出てた……?」
「お褒めにあずかり光栄です……ニヤリ」
「わぁぁぁぁぁぁぁ、忘れてぇぇ、見ないでぇぇ!」
話のネタ掴まれちゃったよぉ、きっと人に話して爆笑するんだあ
「大丈夫、そんなことしねえさ」
「………また出てた?」
奨真はそうだと言わんばかりにニヤリと左頬を上げる
自分でもはっきり分かるくらい体温が上がり、顔が赤くなる、口をパクパクとさせ何も言えないでいると
「でも、実際うれしいよ、体のことをほめられたのなんて家族以外にはいなかったからな、親しい友人もいたけど、そいつはライバル視して悔しがるだけだったし メモリが初めてだよ、身内以外で素直に褒めてくれたのは」
そう言って奨真はまぶしい笑みを浮かべる、どうやら本当に嬉しいようだ
「それに好きなことは人それぞれ、別に恥ずかしがることじゃあねえと思う、好きなことってのは尊重すべき大事なことだからな まあ、内容によるけど」
そう頬をかきながら言った、顔はすこし赤い、くさいことを言って照れているのだろう
「とにかく、好きなことは包み隠さず大っぴらに出すのが、自分にも他人にもいい事につながるんだ、こうしてまたメモリの新しい一面を見つけることができたしな」
そうか、奨真君はこういう人なんだ、他人の心のスキを見つけてスルッと入ってくるような 普通に考えてみれば弱みにつけ込む詐欺師みたいな才能だけど、この男の子はそんな黒い感じはしない、そしていつの間にか受け入れてしまう、そんな暖かさを感じた
「それとなメモリ」
奨真はいっそう優しい顔になる
「服……透けてるぞ、まあお兄さん的には嬉しいが、ブラくらいは付けような」
いまさっきのことで思いのほか、たくさん汗をかいていたようだ、着ているティーシャツはぴったりと体に貼りつき、控えめな双丘のてっぺんには2つのポッチが………
「わぁぁ、もう!あっち向いて!ほら泡流すよ!」
シャワーヘッドを手に取り蛇口をひねる
「冷た!!」
「これで頭を冷やしなさい!」
「冷やすべきなのはメモリの方だ、やめろ冷たい!風邪引いちゃうだろ!」
「うるさぁぁぁぁい!」
叫びながらも水で泡を流していく、さっきの恥ずかしさも一緒に流すように
「はい、流れた あと湯船にしっかり浸かって上がること」
「おう、ありがとな」
奨真ははじける笑顔を向けてくる
それなら応えないわけにはいくまい
「どういたしまして☆」
風呂からあがって十数分、湯船にしっかり浸かってからあがったために上昇していた体温が、もとに戻って暑苦しさから解放されるころ
服は今日着ていた物を着ている、もちろん洗濯済みだ、魔法というのは面白い、さっき洗濯中だった服がもう乾いているのだ
俺はメモリが用意してくれていた自室、その左隅に設置されたベッドにころがり、もう一度召喚したリンドブルムを眺めていた
いったいどういう風にくっついているのだろう
フィット感なんてものは存在せず、まるで腕そのものが硬質な鎧に変化してしまったような
そんな気がした
触ったとき、触られてる? みたいな感覚もあるんだよな、腕自体が変質したと考えていいのかな
それは、それで…………むふふ、ロマンしかないじゃないか
このままずっと眺めていても飽きなさそうだったが、それではきりが無いと思い、思考をいったん中断
深呼吸をしてリンドヴルムをおさめる
今日はもう眠みーや、早いとこ寝ちゃおう
そこで突然入り口のドアが開いた
「奨真くーん、おじゃまします」
そう言って入ってきたのは、ほかでもないメモリだ
「さあ私にその腕筋マクラを貸しなさーい!」
ハテナマークが浮くような言動に一瞬思考が停止、その隙にベッドに上がり込まれてしまった、そして左腕を取られる
「うぅん、この絶妙なつき具合、絶妙なこの弾力、やっぱたまんないね!」
俺の腕にオッサンがくっついてるぞ!!
ていうか、
「なんで?」
「なんで?って、好きなことは尊重すべきなんでしょ? だから腕一本ちょうだいしに来ました」
と言いながらじわじわ腕を引っ張っていく
「たのむから、もいでいくのだけは勘弁してください」
「じゃあ、いいよね」
むぅぅぅ、
「いいよ」
我ながら随分と腑に落ちない感じで言ってしまった
それでもメモリは
「えへへ、やった」
と、嬉しそうに顔をほころばせ、腕に頬ずりをしてくる
あぁ、かわいい、役得役得
腕枕なんて久しぶりだ、前に妹にしていたことはあるが、それ以外ではあり得なかったから
間近に身内以外の女の子がいるという感覚はとても新鮮だった
「やっぱり落ち着いてるね奨真君」
「まあな、俺の自慢だ」
「そうでもないけどね、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
疲れていたせいだろう、腕に人一人のせた状態でも眠気におそわれ、意識はすぐにまどろみ、沈んでいった
日は完全におちこみ、空は煌めく星で染まる
風通しがよく、低くなった気温が心地よい
闘技城新人ブレイカープロフィール掲示板前
長い黒髪をなびかせながら歩いてきた彼女は、カウンターに一人のブレイカーのプロフィールを置いた
「久しぶりにこっちに出てきたが、来てみてよかったぞ 今回はいい掘り出し物が居たものだ」
「かしこまりました、手続きはこちらでして…」
「いや、いいんだ、こいつは私自ら迎えにゆく」
そう言った彼女は、ハンコを押したプロフィールを受け取りこの場をあとにする
「ふふ、会いにいくのが楽しみだ」
最後まで見送ろうと彼女の背中を目で追っていたが、出口を出る瞬間、室内の明かりから切り離される時、彼女は夜の月明かりに溶けるように視覚することができなくなった
前回、ついに破壊具を手に入れた奨真君
しかしその破壊具であるリンドヴルムはSランクですでに詰み状態という崖っぷちスタートでした
このなかで奨真君はどのように強くなっていくのかと言うのが一番の見所になってくると思います
最後に出てきた女性の方はいったい奨真君とどんな関係になっていくのか
次回、またしばらく先になります