↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

主人公と原作者が入れ替わった結果

作者: 剣崎月
掲載日:2026/10/12

???「プレミアムロールケーキ美味しい!」

 前世のわたしは、一般的な社会人。

 疲れて帰宅したわたしの楽しみは、ネットのざまぁ小説を読むこと。ルーティンといってもいい――疲れた脳と精神が解されるんだ。


 夕食もそこそこに読みあさる。


 もうちょっと”どうにかしたほうがいい”ルーティンであることは自覚しているが、止められなかったし、止める必要もない。こんな時代だ、俺たちは止められねえ!

 ……じゃなくて、ざまぁ小説を書いてくださる作者さんたちには、いつも圧倒的感謝の☆を付けて応援していた。


 そんなわたしだが、たまに☆を付けなないこともある。わたしも人なので、好みがある。転生する直前、☆を付けずにタブを閉じた小説があった。

 

 その小説は出だしから不穏だった――仕事と体調不良が重なって、ルーティンを崩していたわたしは、落ち着いたので久しぶりに、ざまぁ小説を読むため、検索欄に「ざま」と入力して検索した。

 ちなみに「ざま」と入力することで「ざまぁ」と「ざまあ」という表記揺れどちらも回収するというライフハック――何のライフにもハックにもなってないけど。


 とにかく久しぶりに小説の検索ページを開き、感謝しながらざまぁ小説を上から読んでいった。

 そして幾つ目だったかは忘れたが……投稿日時は、一週間前くらいだった筈なので、かなり読んだ後だった筈だけど「その小説」にたどり着いた。


 タイトルは覚えていないのだが、ゲームの脳死周回よろしくタップすると、あらすじの所に「コメント欄で補足しています!」「後書きに補足を追加しました」という注意書き? らしきもの。


 この時点で小説を読みあさっているわたしは「察した」


 本編内で主人公かヒーローが、あまり共感されない行動を取って、コメント欄で突っ込まれ過ぎて、作者が本編ではないところで、設定を大公開したことを。


 これ(・・)をやると「本編に入れろ」と大合唱が起こることも――

 

 ここ引き返せば良かった……などと思うわけもなく、まずはコメント欄を覗いた。

 そこには「ミュンヒハウゼン症候群」の文字がずらりと――あまりにミュンヒハウゼン症候群の文字だらけで、思わず検索をかけて総数を数えたことは、はっきりと覚えている。端数までは覚えていないが、1ページだけで五十件は超えてた。


「ミュンヒハウゼン症候群がゲシュタルト崩壊する……」


 ミュンヒハウゼン症候群を提唱したリチャード・アッシャーも、ゲシュタルト崩壊提唱者のクラレンス・ファウストも、まさかネット小説のコメント欄眺めながら呟かれるとは思ってもいなかっただろう。


 話は逸れたが、ミュンヒハウゼン症候群の書き込みから分かるように、主人公は婚約者の男に、とことん虐めぬかれていた。もちろんその虐めは愛情の裏返しで、婚約者の男は好きで虐めてしまうという、令和小学生の精神レベルに到底及ばないゲテモノ青年――らしい。


 この時点で、わたしはまだ本編は読んでいない。


 他にコメント欄で指摘されていたのは、「タグに元サヤを付けてください」というもの。

 「?」と思い、作品情報をタップして確認したところ、元サヤ表記はなかった。これで「好きな子を虐めた男と結局くっついた主人公」の物語だと察した。

 元サヤが嫌いな人も居るので、元サヤタグは付けたほうがいいのでは? と思ったが、作者が元サヤだと感じていないのか、それともネタバレを避けたかったのか――あらすじの欄に、あのような文章を足した時点で、ネタバレ回避もなにもないような……。この辺りは作者の裁量だし、なにより考えたところで仕方ない。


 わたしはこの小説を読もうかどうか――などと迷うことなく、万全の心構えで本編を開いて読んだ。わたしは読者なので、コメント欄に書き込んだ人たちと同じ感想。


 コレ(・・)とくっつくんかい! 


 前もって分かっていんながらそんな感想を懐きつつ、本編から流れるように後書きへ――どうも作者は、婚約者の男のゲス行為を「好きな子に意地悪ちしゃう男の子」レベルのものだと思っているらしい。


 ちなみに婚約者の男が主人公にした「好きな子に意地悪しちゃう思春期未満の男の子」な行動は、抜粋で順不同だが以下の通り。


1.髪の毛を引っ張って抜く――むしり取った髪の毛を大事に保管(キメェ)。そんなことをした理由は、苦痛で歪む主人公の顔が好きだから(キメェ・二回目)


2.男友達に主人公の身体的悪口を言う――主人公が羞恥で顔を赤らめ苦しそうな表情をするのが見たいから(キメェ・三回目)


3.嫉妬して欲しくて、他の女を優先したり、他の女と一緒に主人公を貶める(ダセェ)


4.一緒に出席した夜会の帰り、無理矢理馬車から引きずり降ろして置き去りにする。そして主人公が同じ夜会の帰りの、貴族の馬車に連れ込まれる。そこにマッチポンプよろしく引き返してきて、主人公を馬車に引きずり込んで、ドレスを引き裂いた男をボコボコにして――からの「男なら誰でもいいのか、この淫乱売女」


5.残飯を食わす。何度も――


 等々――無数の「これ」をされた主人公だが、婚約破棄もしなければ「おまえが本当に大事なんだ」というニュアンスの言葉で、そのまま結婚。


 コメント欄がミュンヒハウゼン症候群でゲシュタルト崩壊すんのも分かる


 この酷い目にあっている主人公の実家はどうなのかだが「ミューレ君(婚約者の名前)は、ティリア(主人公)のことが好きで素直になれないんだ」という、婚約者くんの後方親顔してた。将来の義理の親だけど。

 婚約者の親も「息子はティリア嬢のことを愛していて」と、不器用な息子の恋心から発生する行動を、微笑ましく見守っていた。

 更に――まだあるのかよ! と言われそうだが、あるんだ――物語はごく一般的な貴族学園もので、優秀な婚約者は生徒会に所属していて(役職は忘れた。そこまで細かいことは覚えてない)生徒会長を務めている王子も「ミューレはちょっと素直になれないだけだ」と、学園の中庭で、主人公に残飯ランチを強制的に食わせている婚約者を応援する。


 コメント欄がミュンヒハウゼン症候群でゲシュタルト崩壊すんのも分かる(二回目)


 ただ一読者としては、婚約者がメンタルゲテモノ男だろうがなんだろうが、規定水準の「ざまぁ」がクリアされていたら、ざまぁ小説読んだと納得できたのだが、タグにあったざまぁは上記の「3」の他の女たちのみ。

 彼女たちは確かに悪いことしたよ。主人公のこと虐めたけど、主犯は婚約者だからね。婚約者がやれと言ってやった……まあ言われたからといってやったのは悪いけど、ざまぁされるのは仕方ないけど、ざまぁされた彼女たちの、数百倍はえげつないことしていた婚約者はざまぁされることなく、無傷で本編完結。

 番外編は主人公と婚約者の甘々生活……と思いきや、結婚しても普通に意地悪という名の虐待しとる。

 それを微笑ましいものとして優しい目で見守る、使用人たちと友人の王子。

 更なる番外編で、子供ができた。そして子供たちの前で繰り広げられる「好きな子にいたずらしちゃう男の子」――それを見て育った息子が、婚約者として現れた女の子に同じような意地悪をするシーンで終わる。

 多少齟齬はあるかもしれないけど、そういうお話だった。


 で、そういうお話に前世の記憶を持って転生したのがわたし、ミィデニア・シャーゼ侯爵令嬢。


 モブ転生なら良かったのだが、残念ながら違う。わたしは主人公を虐めてざまぁされる「彼女」の一人。

 ミィデニアは本当に婚約者が好きだった。

 読んでいて「やめとけ」としか思わなかったが――いまは、わたしが「彼女」ことミィデニアになったので、主人公の婚約者ことミューレ・エメト伯爵子息に近づかなければいいだけ。


 ちなみにミューレが伯爵子息なのに、侯爵令嬢のわたしことミィデニアが処分されたのは、残飯ランチを微笑ましく見守っていた王子の権力によるもの。


 とにかく当事者に近づかなければよし――この時点では。


 ミュンヒハウゼン症候群をゲシュタルト崩壊させてくれた主人公ティリアを救わないのか?

 最初は救おうかなと思ったけど、今は放置している。



 その理由はティリアの中身が原作者だから



 七歳のとき、高位貴族――伯爵以上の子女が王宮に招かれ、デビュタントの前祝いのような、お祝いが行われた。

 このプレデビュタントに出席することで、正式デビュタント前でも「夜の九時前までに帰宅する・婚約者がいる」という条件付きで夜会に参加できるようになる。子爵と男爵は? その階級は正式デビュタントしないことには、夜会に参加できないよ。


 貴族は社交が大事なので、このプレデビュタントを欠席することはない。わたしも当然出席し、


「わたしの設定通り! あの青い壁も、絵画も」


 隣にいた可愛らしい令嬢が、感極まったように言葉を漏らした。その後も彼女はあたりをキョロキョロと見回しては「あれも、設定通りだ」と。


 帰宅後、プレデビュタントに出席した子女の名簿を見せてもらったら、エメト伯爵子息ミューレと、マクシレイ伯爵令嬢ティリアの名が載っていた。


 前世の記憶はあったがミィデニアのことは「駄目な男に惚れて破滅した令嬢」としか覚えていなかったので、自分の名前を聞いても容姿を見ても「あれだ!」とは思わなかった。

 メインキャラではないので容姿描写が十把一絡げだったこともある。だからこの二人の名前を見て、当たり前ながら詳細に書かれていた二人の容姿を反芻して――確信した。


 正直にいえば「あの物語、あの……ミュンヒハウゼン症候群がゲシュタルト崩壊した話!」だけれど。もっと言うと、別に本編も番外編もミュンヒハウゼン症候群がゲシュタルト崩壊などしていないのだが。


 とにかく、王宮でティリアが「設定通り」と呟いた。


 わたしも設定には少し触れたが、それはミューレがどうして意地悪するのかなど「人について」であって、王宮の建物には一切触れていなかった。


 舞台が学園か街中――デートの約束をして、何時間も待たせるのがミューレの流儀で、その間ミューレは「彼女たち」や「お友達」とティリアが惨めに待っているのを嘲笑う――そして当人たちの実家だけなので、王宮については原作者以外は知らない。


 そして思い出す、あのミュンヒハウゼン症候群がゲシュタルト崩壊したコメント欄で「ティリアもミューレのことを愛しているので~」と返信していたことを。


 原作者にとっては、ミューレの度重なる下品を通り超した行動は、愛情の裏返しだと知っているのだから――助ける必要はないと判断した。


 だってコメント欄で、あんなに強くミューレを擁護していたのだから。原作者にとってはあれら全ては”些細な行き違い”とのことらしいし。


 原作者なら放置しておいても大丈夫だろう。


 そうして十三歳で学園に入学すると、原作と同じ光景が――中庭残飯ランチタイム。

 中身が原作者なのだから上手く立ち回れた筈だが、いまこうして残飯ランチを食べているということは、あの原作者はそれで”良し”ということだ。


 わたしは御免だが――


 残飯に見せかけたおいしい料理なのでは? それに関しては虹色のエフェクト付けなくちゃならないものが、わりと頻繁に口から飛び出している時点で、残飯ランチで間違いないと思う。


 わたしが愛を育む昼休み(残飯ランチ)を見たのは、五回くらい。わざわざ見るものではないし、わたしはわたしの昼食が大事なので。

 ちなみに学園の食堂のランチは、とても美味。

 残飯食わせて愛を感じる男と、残飯食って愛を感じる女がいる空間なんて、見たら目が腐ると思うの。


 よくアレをみて、王子は微笑ましいと思うな。


 もしかして、王子ってエメトフィリア(嘔吐性愛)か!

 それなら仕方ない。

 わたしは婚約者でもなんでもないので、王子がエメトフィリアでも関係ないけれど。


 王子やミューレに、近づかなければ破滅を回避できる――で通したいのだが、悲しいかなわたし(ミィデニア)は、原作ではざまぁされる「彼女」の一人。

 俗に言う原作の強制力とかいう、クソシステムが発現する可能性もある。



 フロ○ソフトウェアの世界に転生したのなら即死しても”仕方ない”と諦めるけど――即死なので諦めている時間もないが――この世界で死ぬのは諦めがつかない!



 十五才になったわたしは、それに抗う必要があると考えて、父親ある侯爵に残飯ランチと、微笑ましい嘔吐を全力で応援する王子について説明した。十五才まで待ったのには理由がある。一つは二年も続いているという事実。一週間とか一ヶ月程度では、学園内に行き渡るには足りない。

 だが二年も続けば、長らく続いている奇行と言い切ることができ、派閥など全く関係のない貴族であっても、父に相談するくらいには深刻だと言える。


 話を聞いた父は驚いたが、娘が嘘をついていないことは分かったらしく、独自に調べるといい――一ヶ月後に、


「おまえの言った通りだった、ミィデニア」


 これ以上ないほど険しい表情で、信じがたい事実確認を終えたことを教えてくれた。


「お父さまにお伝えしなくてはならないことが」

「なんだ」

「実はエメト伯爵令息が――」


 ミューレがティリアに対して「かわいい意地悪」の一環として、一緒に嘲笑おうと女性たちに声を掛けてきた。そのうちの一人が、原作でざまぁされた”わたし”――第二の理由はこれ。家同士の交流もない格下の男の、当て馬にされたから。要するに実害を被ったからだ。


「何を考えて……」


 伯爵令息が侯爵令嬢である自分の娘に、そんなことを持ちかけてきたことに、父は言葉を失う。


「彼だけを見ても分からないと思います。ご家族が歪んだ考えを持っている可能性が高いと」

「家族か」

「エメト家だけではなく、マクシレイ家も何を考えているのか。きっとティリア嬢が現状を訴えているでしょうに、それでも何の対策も……ああ、でも、王子殿下が認めておりますので、両家共々なにも言えないのかもしれません」

「…………」


 父は”考えたくもない”といった表情で――といっても、考えなくてはならないんだけどね。

 そして最後に、これだけは言っておかないと。


「ただ……ティリア嬢が嫌がっていない可能性も」


 あるんだな、これが。


「こんな目に遭っていてか?」


 信じられない! と。そりゃそうだけど、原作では「おまえが大事なんだ(意訳)」でころっと落ちる主人公と、それを書いた原作者だから然もありなん。



 この話の原作者だから、このシチュエーションが嫌なら回避してるだろ。わたし程度でも、原作に抗えるんだから。



「男女の仲については、表面から見ているだけでは分かりませんから。わたしなら、同格の婚約者にこのようなことをされて、唯々諾々と従っているのが……長年の恐怖なのか、それとも愛情なのか」


 父は先ほどよりも更に”考えたくない”という表情に――原作では登場した貴族が軒並み終わってたので、自分の父親も疑っていた。

 更に言うとざまぁされるミィデニアの親なので、常識知らずなのかと当初は猜疑心ありまくりで見ていたが、かなりの常識人なので「かわいい意地悪」というオブラートに包んだ非常識な行動に、嫌悪感を覚えている。


 普通はおかしいよな


 わたしはミューレには近づかず過ごし――ある日を境に、ミューレもティリアも王子も姿が見えなくなった。

 見たくもない公開処刑が行われなくなったことに、わたしを含むほぼ全ての生徒が喜んだ。

 みんな嫌いだったもんな。わたしと一緒にざまぁされる筈だった「彼女たち」も、ミューレの誘いには乗らなかった。


 中庭で婚約者相手に残飯ランチを強いる男に、近づきたいという女はいないのよ。


 わたしは危険には近づかずやり過ごしたので、詳細については知らなかったのだが――正式なデビュタントを済ませ、学園も無事に卒業して、結婚も本決まりになった頃に、父がかいつまんで教えてくれた。


 聞くと家族を含む当事者と王子――元々次期王になる予定は一切なかった――は生きているそうだ。


「陛下の御慈愛によってな」

「御慈愛?」

「最大限の愛情表現を持って遇しておられる」

「遇す……中庭での愛を育む昼食のような」

「そうだ。陛下の御恩情厚いことで嫉妬されぬよう、王宮の人目のつかぬ場で、特製のお食事を賜っている。ありがたいことだ」


 王宮の幽閉宮かどこかで、王子共々残飯食わされてるってことね……まあ、王宮の残飯ならマシなのでは?

 王宮の食事の残飯ならね。どこかから拾ってきた残飯って可能性もある。詳しく聞かないのは、言うまでもない。


「ティリア嬢も?」

「彼女は亡くなった」

「え」

「度重なる異常な食事の強制により、食事が取れなくなって衰弱死した。それを知った陛下が、由々しき事態と判断なさった」


 摂食障害から栄養失調で死んだのか。

 残飯ランチが見たくなくて、中庭には近づかなかったし、クラスも違うから、そんなことになっているとは知らなかった。なによりわたしはミューレを避ける必要があったので、必然的にティリアも避けることになる。

 最大の理由は残飯ランチだけど、あれ視界に入れたい奴おらんだろ? あ、いたわ! 王子だ、王子。


 激やせしてるのに、気づかなかったのかな王子……なんか主人公たちよりもヤバイ種族だったのかも。


 その王子も一枚噛んでいる状態だったため、国王が介入したと。死んでからだけど。……まあ、貴族同士のもめ事ですらない出来事なので、取り返しがつかない事態になるまで放置なのは、仕方ないといえば仕方ないのかもしれないが。


 死者が出ているとはいえ、直接手を下したのは婚約者で、周囲は特に止めていなかった。なによりティリア(原作者)自身が、周囲に助けを求めたことはかったとのこと。


 うん、やはり原作者は納得の上だったんだな。


 ちなみに王子は、学園卒業後には外交を任せられる予定だったらしいが、嘔吐を愛情表現と感じるような感性の人間には任せられないと言うことで、幽閉になったそうな。


 性愛は治らないから、婿にも出せないだろうから仕方ない。そして王子が幽閉される理由になった貴族を罰しないわけにはいかない。理不尽ではあるけれど、そこは王政だから飲み込むしかないね。


 それにしても原作者さん、頑張れなかったんね。でも原作のティリアはこの先ずっと、数十年先まで残飯で愛を育んでたじゃないか! ……原作者さん耐えろよ!


 やっぱり、生まれついての貴族令嬢のほうが、メンタル強かったか。あとは前世が日本人なら、食事は大事だからな。

 不味い飯を食って生きていけるような人種じゃないもんね。食に興味がない人もいるにはいるけど、口に入るものは全部衛生的で、味が整っている前提のうえでの「食に興味ない」だからなあ。


 毎日残飯は食に興味がない人でも駄目だろ。


 原作者が原作半ばで、原作内で力尽きるという終わりを迎えたこの世界だが、特に問題なく続いている。

 尊い犠牲でもなんでもない原作者さんに哀悼の意を表して、わたしは父が見極めた隣国の男性に嫁ぎ、多少の不満はあれど幸せに暮らしていた……いたんだが……


「あ、これ……」


 ☆を付けずにタブを閉じたざまぁ小説の一つだということに気づいた。一難去ってまた一難か! と思うも、これを乗り切らなくては、悠々自適な老後は迎えられない。


 家が没落するのを回避するために、夫人として頑張らなくては。


 この作品になぜ☆を付けなかったのかって? それは規定のざまぁがクリアされなかったから――――あれ? もしかして、あの酷い目に遭うヒロインの中身、また原作者?! あ、原作者だ! 前の原作者と区別するために”さん付”けにでもしとくか。

 作者名覚えてないからね。

 原作者さんならならほっといていいか! 別に残飯ランチさせられないから。

 君を愛することはない極寒地方の当主と、その邸の使用人たちに冷遇されて、冬場に燃料皆無で過ごすくらいだから、原作者さんならなんとかできるだろ。

 それを乗り越え短い夏がきたら、当主(ざまぁなどされない)と分かり合い、幸せになれるから、頑張って冬を越えてね。応援してる!


 わたしは当主にまとわりつき、ヒロインをいたぶって最終的に当主にざまぁされる娘を、正しく育てるのに忙しいので――娘は国外に嫁がせようかな。物理的に離すのが最適だよね。

 そうだ、久しぶりに実家に帰ろう。越冬という名目で冬の間、実家に帰ろ。なんなら故郷で娘の嫁ぎ先を探すのもいいな。


 ともかく、主役二人が結ばれてから帰国しよう! 


【完】

???「ミラノ風ドリア美味しい!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。