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癒ししかできない無能聖女として追放されましたが、私がいなくなった国はもう保ちません  作者: 蒼井 玲


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第80話 世界が選ぶ瞬間

 裂け目が、音もなく広がった。


 空が、剥がれる。


 青が、奥へ引き剥がされるように、


 白い層が現れる。


「……っ!」


 丘の全員が、同時に膝をついた。


 重い。


 さっきまでの引力とは違う。


 これは、


 “押し潰す圧”だった。


 レオンは歯を食いしばる。


「くそ……!」


 立っていられない。


 胸の奥の光が、暴れ出す。


 押さえようとしても、


 逆に膨らむ。


 イリスは、動かない。


 ただ空を見ている。


「……開始」


 静かな声。


 まるで予測通りだと言うように。


 アルデリックが低く呟く。


「位相収束……本格化か」


 丘の空気が歪む。


 人の輪郭が、わずかに揺れる。


 時間が、ほんの少しずれる。


 セレナが息を荒げる。


「これ……まずい」


 言葉にならない。


 理解が追いつかない。


 だが本能がわかっている。


 これは――


 止めなければならない。


 その時。


 光が、動いた。


 一点ではない。


 三つ。


 レオン。


 イリス。


 リリア。


 三方向へ、


 同時に引かれる。


「……え?」


 レオンが目を見開く。


 自分だけじゃない。


 全員の光が、


 三つに分かれて流れる。


 均等ではない。


 揺れている。


 選びきれていない。


 世界が迷っている。


 イリスが一歩踏み出す。


 その瞬間、


 彼女の周囲の光が強くなる。


 整っている。


 吸収ではない。


 統制。


「……効率的」


 低く言う。


 さらに引力が強まる。


 レオンの体が引かれる。


「……っ、やめろ!」


 踏みとどまる。


 だが足が滑る。


 持っていかれる。


 その時。


 別の流れが生まれた。


 リリア。


 彼女の周囲で、


 光が拡がる。


 引かない。


 押さない。


 ただ、


 “そこにある”。


 安定。


 流れが揺れる。


 イリスの引力と、


 リリアの均衡。


 その間で、


 光が迷う。


 レオンが息を荒げる。


「……どっちだよ」


 答えはない。


 世界が決める。


 そのはずだった。


 だが。


「……違う」


 小さく呟く。


 自分の声だった。


 誰かに言われたわけじゃない。


 頭の中で、何かが繋がる。


 分散。


 共有。


 均衡。


 そして。


 選択。


「……俺は」


 歯を食いしばる。


 足を踏みしめる。


 引かれる力に逆らう。


「俺は、選ぶ」


 その瞬間。


 流れが変わった。


 ほんの一部。


 だが確実に。


 レオンの周囲の光が、


 自分の意思で動く。


 イリスの方向でもない。


 リリアの方向でもない。


 “その場に留まる”。


 エルナが目を見開く。


「……今の」


 セレナも気づく。


「自律……?」


 リリアが静かに言う。


「はい」


 イリスの目が細くなる。


 初めて、


 明確な変化。


「……例外」


 低く呟く。


 計算が狂う。


 世界の流れが、


 完全ではなくなる。


 空の裂け目が、わずかに揺れる。


 決めきれない。


 中心が定まらない。


 レオンは息を荒げながら立っている。


 震えている。


 だが立っている。


「……勝手に決めるなよ」


 空を睨む。


 誰に向けた言葉でもない。


 それでも。


 確かに届いた。


 裂け目が、


 ほんの少しだけ、


 閉じ始める。


 圧が弱まる。


 丘の人々が息をつく。


「……止まった?」


 マナが震える声で言う。


 完全ではない。


 だが。


 暴走はしていない。


 アルデリックが低く言う。


「……干渉が成立した」


 世界の収束に、


 人が影響を与えた。


 それは、


 今までなかったこと。


 イリスがレオンを見る。


 感情はない。


 だが明らかに、


 興味がある。


「……不安定要因」


 評価。


 だがそれは同時に、


 可能性でもある。


 リリアは静かに言う。


「均衡は、強制では作れません」


 イリスは答えない。


 ただ空を見る。


 裂け目は、完全には閉じていない。


 まだ残っている。


 まだ終わっていない。


 そして。


 その奥で、


 何かが、動いた。


 レオンの背筋が凍る。


「……まだあるのかよ」


 誰も答えない。


 だが全員が感じている。


 今のは、


 “試し”だった。


 本番は、


 これからだ。

ここで「世界 vs 人間」の構図が成立しました。


レオンが“選ぶ側”に入ったことで、

物語は一段深いフェーズに入ります。


次は「本当の収束」が来ます。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

続きが気になる方は、ぜひブックマークと評価で応援いただけると嬉しいです。


次回、「本収束」。

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