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癒ししかできない無能聖女として追放されましたが、私がいなくなった国はもう保ちません  作者: 蒼井 玲


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第74話 均衡の引力

 丘の上の光は、十六になっていた。


 昨日までは十五。


 今朝、また一人来た。


 年配の男だった。


「……勝手に光るんだ」


 戸惑った声。


 指先に、小さな輝き。


 弱いが、確かに共鳴。


 丘の空気が少し変わる。


 数が増えるたびに、


 胸の奥の引力が強くなる。


 レオンはそれをはっきり感じていた。


「……また重い」


 胸に手を当てる。


 脈打つような感覚。


 リリアが静かに言う。


「位相密度が上がっています」


「つまり?」


 エルナが聞く。


「世界が意識し始めています」


 中心を。


 丘の上にいる十六の光。


 まだ小さい。


 だが確実に一つの“塊”になりつつある。


 セレナが周囲を見る。


 集まった人々。


 年齢も職業も違う。


 共通しているのは、


 胸の奥の震え。


「……もし」


 彼女は言う。


「ここが中心候補なら」


 丘に沈黙が落ちる。


 誰もその言葉を望んでいない。


 だが、あり得る。


 レオンが空を見上げる。


 歪みはまだ見えない。


 だが引かれる。


 胸の光が、空へ引かれている。


「……くそ」


 小さく呟く。


 エルナが笑う。


「嫌?」


「当たり前だろ」


 レオンは草を蹴る。


「俺は中心とかやりたくない」


 正直な言葉。


 それはリリアも同じだった。


 彼女は空を見ている。


 遠く南。


 西。


 北。


 三方向に、弱い歪み。


 世界が試している。


 どこが最も安定するか。


 その時だった。


 丘の空気が一瞬、凍る。


 全員が同時に胸を押さえた。


「……っ!」


 強い。


 今までで一番。


 共鳴の波が走る。


 北。


 今度ははっきり感じる。


 エルナが顔をしかめる。


「強いわね」


 セレナが息を整える。


「……誰かいる」


 リリアが静かに言う。


「はい」


 その共鳴は、明らかに違った。


 強い。


 そして安定している。


 世界が試す候補。


 その一つ。


 レオンが空を睨む。


「……北のやつ」


 北方連邦。


 あの商人。


 観測者。


 その背後にいる誰か。


 丘の上の光たちがざわつく。


 不安。


 恐怖。


 そして、少しの対抗心。


 レオンは拳を握る。


「……負けるかよ」


 誰に言うでもない。


 ただの呟き。


 だがその瞬間、


 丘の上の共鳴がほんの少し強くなる。


 リリアがレオンを見る。


 少年の胸の光。


 揺れている。


 そして。


 ほんのわずかだが、


 周囲の光が、


 彼へ傾いた。


 世界はまだ決めていない。


 だが試している。


 北の候補。


 丘の候補。


 そして、


 もう一つ。


 静かに立つリリア自身。


 均衡の引力は、


 ゆっくりと、


 だが確実に、


 中心を形作り始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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