第71話 選ばれる場所
西の都市レヴァルトの事件は、一日で王都へ届いた。
空の裂け目。
共鳴暴走。
適性者の確保。
報告書は厚かった。
だが内容は単純だ。
世界が収束を試みた。
そして失敗した。
聖堂の会議室では、誰も口を開かなかった。
机の中央に置かれた羊皮紙には、
裂け目の図が描かれている。
老神官が低く言う。
「……始まったな」
誰も否定しない。
クラウスは静かに言う。
「試行です」
「何の」
「中心化の」
沈黙。
世界はまだ決めていない。
だが探している。
最も安定する点を。
一方、炭鉱町の丘。
レオンは草の上に座り込んでいた。
西の都市の話はもう伝わっている。
「……捕まったんだって」
小さく言う。
カイルという少年。
知らない顔。
だが同じ光。
セレナが静かに答える。
「聖堂が管理します」
「管理」
その言葉をレオンは噛みしめる。
あの夜の兵たちを思い出す。
もしセレナが来なければ。
自分も同じだった。
エルナが空を見る。
「でもさ」
「?」
「裂け目、閉じたんでしょ」
「はい」
リリアが答える。
「収束が失敗したためです」
レオンは眉をひそめる。
「失敗?」
「中心が不安定だった」
つまり。
世界が試した。
だが選ばなかった。
まだ。
丘の上に沈黙が落ちる。
レオンは空を見上げる。
歪みは見えない。
だが胸の奥は知っている。
引力。
呼ばれる感覚。
「……俺たち」
ぽつりと言う。
「候補ってこと?」
リリアはすぐには答えない。
しばらく空を見てから言う。
「可能性はあります」
嘘はつかない。
セレナも頷く。
「世界は最も安定する点を探しています」
レオンは草を握る。
「それって」
「強さだけではありません」
リリアが続ける。
「共鳴の質」
「質?」
「均衡を保てるかどうか」
エルナが笑う。
「試験みたいなもんね」
レオンはため息をつく。
「笑えない」
そのとき。
丘の下から子どもの声が聞こえた。
「ねえ!」
振り向く。
小さな少女が走ってくる。
町の子だ。
息を切らしている。
「また来てる!」
「誰が?」
「光の人!」
丘の全員が顔を見合わせる。
エルナが呟く。
「……早いわね」
少女の後ろに、影が見える。
三人。
見知らぬ顔。
そのうち一人の手が、わずかに光っていた。
共鳴。
また増えた。
レオンは立ち上がる。
丘の上に、また人が来る。
恐怖か。
希望か。
それとも。
世界が作ろうとしている
中心の、
材料かもしれなかった。
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