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癒ししかできない無能聖女として追放されましたが、私がいなくなった国はもう保ちません  作者: 蒼井 玲


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第67話 均衡の兆し

 空の歪みは、最初は誰にも見えなかった。


 丘の上で最初に気づいたのは、リリアだった。


「……位相が揺れています」


 静かな声。


 集まっていた者たちは顔を見合わせる。


「位相?」


 若い男が聞く。


 リリアは空を見上げたまま答える。


「世界の均衡です」


 難しい言葉だ。


 だが体感はある。


 胸の奥の震えが、少しずつ強くなっている。


 レオンも感じていた。


「……重い」


 空気が、どこか重い。


 呼吸はできる。

 だが胸の奥に、引かれるような感覚。


 セレナがゆっくり言う。


「共鳴が……引き寄せられている」


 丘に集まっている小さな光たち。


 それが、ほんの少しだけ


 同じ方向へ傾く。


 エルナが眉をひそめる。


「これ、まずい?」


「まだ前兆です」


 リリアは言う。


「ですが」


 視線がレオンへ向く。


「数が増えれば、強くなります」


 レオンは空を見上げた。


 目には何も見えない。


 だが確かに感じる。


 胸の奥の光が


 少しだけ引かれる。


「……中心」


 ぽつりと呟く。


 リリアが頷く。


「世界は均衡を求めます」


「だから中心を作る?」


「はい」


 丘の上の空気が重くなる。


 集まっている者たちは不安そうだ。


「じゃあ……」


 女性が震える声で言う。


「私たち、危ないんですか?」


 リリアはすぐには答えない。


 嘘は言えない。


 やがて静かに言う。


「可能性はあります」


 沈黙。


 恐怖が広がる。


 レオンは拳を握る。


「……じゃあ」


 顔を上げる。


「逃げればいい?」


 エルナが肩をすくめる。


「散れば、濃度は下がる」


 確かに理屈ではそうだ。


 だがリリアは首を振る。


「一時的です」


「え?」


「拡散は続いています」


 つまり。


 逃げても、また起きる。


 セレナが丘の下を見る。


 町はいつもの朝だ。


 人々は何も知らない。


 だが空の奥では、


 世界の均衡が


 ゆっくり動き始めている。


 レオンは丘を見渡す。


 集まった人たち。


 不安そうな顔。


 怖がっている。


 その光景を見て、


 彼の中で何かが決まる。


「……解散しよう」


 全員が彼を見る。


「今は散ろう」


 女性が聞く。


「でも……」


「また集まればいい」


 レオンは言う。


「でも今は危ない」


 未熟だが、


 判断は間違っていない。


 エルナが小さく笑う。


「リーダーっぽくなってきたじゃない」


 リリアは何も言わない。


 ただ空を見ている。


 歪みはまだ弱い。


 だが確実に


 世界は反応している。


 丘の上の小さな集まり。


 それはまだ、


 世界を揺らすほどではない。


 だが。


 もし増え続ければ。


 その時、


 世界は


 誰か一人を


 中心に選ぶ。


 レオンは最後に空を見上げた。


 見えない裂け目。


 感じる重さ。


 そして胸の奥の光。


 それが、


 ほんの少しだけ


 強く脈打っていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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