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癒ししかできない無能聖女として追放されましたが、私がいなくなった国はもう保ちません  作者: 蒼井 玲


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第66話 集まる理由

 丘に人が集まるようになって、三日が経った。


 最初は六人。


 次の日は九人。


 そして今朝、十二人になっていた。


 炭鉱町の人々は遠巻きに見ている。


 怖いのだ。


 奇跡は希望だが、同時に不安でもある。


 丘の上では、静かな訓練が続いていた。


「……呼吸を整えてください」


 リリアの声は落ち着いている。


 集まった者たちは目を閉じる。


 胸の奥。


 そこにある、微かな震え。


 それを押さえ込むのではなく、


 感じる。


 しばらくすると、若い男が驚いた声を出した。


「……消えた」


「消えていません」


 リリアが言う。


「落ち着いただけです」


 光はまだある。


 だが暴れていない。


 それだけで十分だった。


 少し離れた場所で、エルナが草に寝転がっている。


「思ったより順調ね」


「まだ初歩です」


 リリアは視線を空へ向ける。


 遠く南。


 あの歪みは、まだ完全には消えていない。


 セレナが丘の縁に立っている。


「聖堂では、こんなことは教えていません」


「必要なかったからです」


「独占していたから?」


「はい」


 セレナは苦く笑う。


「制度は、知識も閉じます」


 その時。


 レオンが立ち上がった。


 丘の上に集まっている者たちを見る。


 不安な顔。


 戸惑い。


 それでも来た。


「……俺、思ったんだけど」


 全員の視線が集まる。


「隠れるの、やめない?」


 ざわめき。


 女性が戸惑う。


「でも……怖い」


「わかる」


 レオンは頷く。


「でもさ」


 拳を握る。


「隠れてても増えるんだろ」


 リリアは黙って聞いている。


「なら」


 レオンは続ける。


「ちゃんと集まって、覚えた方がいい」


 誰もすぐには答えない。


 だが沈黙は、否定ではない。


 エルナが半身を起こす。


「……リーダー気取り?」


「違う」


 レオンは首を振る。


「俺もわかってない」


 正直な言葉。


「でも」


 丘を見渡す。


「一人でやるより、マシだと思う」


 リリアは少しだけ考えた。


 その発想は危険でもある。


 だが。


 すでに拡散は始まっている。


 ならば。


「……集まること自体は問題ではありません」


 全員の視線が向く。


「問題は、理解しないまま集まることです」


 レオンが頷く。


「じゃあ理解する」


 その言葉は、まだ未熟だった。


 だが意志はある。


 セレナが小さく微笑む。


「聖堂が閉じた知識を」


「ここで開く」


 レオンはうなずく。


 丘の上に、小さな空気の変化が生まれる。


 恐怖だけではない。


 希望でもない。


 まだ名前のない何か。


 その時。


 リリアの表情が変わった。


「……来ます」


 エルナがすぐに起き上がる。


「また?」


「いいえ」


 彼女は遠くを見る。


「これは……」


 言葉を選ぶ。


「人ではありません」


 丘の上の全員が空を見上げる。


 青空は変わらない。


 だが。


 空の奥で、ほんのわずかに


 光がねじれていた。


 まるで


 世界そのものが


 均衡を取り戻そうとするように。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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