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癒ししかできない無能聖女として追放されましたが、私がいなくなった国はもう保ちません  作者: 蒼井 玲


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第65話 小さな集まり

 丘の上に、朝日が差し込んだ。


 夜の緊張は去り、炭鉱町はいつもの朝を迎えている。


 だが丘の空気だけは違った。


 最初に来た女性は、まだ不安そうに手を見ている。


「……時々、勝手に光るんです」


 弱い光。


 だが確かに共鳴。


 レオンは少し戸惑いながら言う。


「俺も最初はそうだった」


「……怖くないんですか」


「怖いよ」


 正直な答えだった。


 女性の表情が、少し緩む。


 そのやり取りを、リリアは静かに見ていた。


 数分後。


 丘の道を、また誰かが登ってくる。


 今度は若い男。


「ここで……光の話をしてるって」


 レオンが頭を掻く。


「いや、まだそんな」


 男は手を差し出す。


 指先に、微かな火花。


「俺も出る」


 沈黙。


 エルナが小さく笑う。


「口コミって怖いわね」


 それから一時間。


 丘の上には、六人が集まっていた。


 光の強さは様々。


 ほんの微弱なものから、少し強いものまで。


 共通しているのは、誰も制御を知らないこと。


 レオンは草の上に座り込む。


「……で、どうする」


 全員がリリアを見る。


 彼女は少し考えた。


「まず」


 ゆっくり言う。


「光を出そうとしないでください」


「え?」


「出そうとするほど、暴れます」


 全員が顔を見合わせる。


 レオンが聞く。


「じゃあどうする」


「感じます」


 リリアは目を閉じる。


「今、胸の奥に何かありますね」


 女性が頷く。


「……あります」


「それが動く前に、呼吸を整える」


 丘に静かな空気が流れる。


 風の音。


 鳥の声。


 人の呼吸。


 しばらくして、女性が驚いた顔をする。


「……光が」


「落ち着きましたね」


 リリアは微笑む。


 それは奇跡ではない。


 ただの理解。


 だがその理解は、初めて共有された。


 セレナはその光景を見つめている。


 聖堂では、知識は閉じていた。


 ここでは、開いている。


「……これが」


 小さく呟く。


「分散」


 リリアは首を振る。


「違います」


「え?」


「これは共有です」


 分散とは違う。


 それは無秩序。


 これは理解の共有。


 エルナが空を見上げる。


「でもさ」


「?」


「増えたらどうするの」


 全員が黙る。


 リリアは空を見る。


 遠い南。


 まだ歪みが残っている。


「……その時は」


 少しだけ間を置いて言う。


「また考えます」


 完璧な答えではない。


 だが嘘でもない。


 丘の上で、小さな光が揺れる。


 恐怖ではなく。


 理解でもなく。


 まだその途中の光。


 そして町の外れでは、


 それを見つめる影があった。


 旅装の男。


 北方の紋章を隠している。


「……集まり始めたか」


 低く呟く。


 北方連邦の観測者。


 彼は静かに記録帳を閉じる。


 拡散は止まらない。


 そして今、


 初めて“群れ”が生まれた。


 小さな丘の上で。


 まだ弱い光たちが、


 世界の均衡に触れ始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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