表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
癒ししかできない無能聖女として追放されましたが、私がいなくなった国はもう保ちません  作者: 蒼井 玲


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/83

第64話 集まり始める光

 兵が去った後の丘は、妙に静かだった。


 夜明けが近い。


 東の空がわずかに青くなり始めている。


 レオンは草の上に座り込んだまま、空を見ていた。


「……終わった?」


 エルナが肩をすくめる。


「一晩はね」


 それは慰めではない。


 現実だ。


 秩序は一度引いても、必ず戻る。


 セレナは兵の消えた道を見ていた。


「保守派は止まりません」


「ええ」


 リリアも同意する。


「南の惨事がある限り」


 恐怖は政治を動かす。


 それは止められない。


 丘に風が吹く。


 その時、リリアが目を細めた。


「……増えています」


 レオンが顔を上げる。


「何が」


「共鳴です」


 彼女は遠くを見る。


 町の中。

 周囲の村。

 さらに遠く。


「弱い光が、増えている」


 セレナも目を閉じる。


 彼女にもわかる。


「確かに……」


 点のような感覚。


 小さな祈り。


 小さな発動。


 それが、あちこちに。


 レオンの胸がざわつく。


「……俺みたいなの?」


「似ています」


 リリアは答える。


「強さは違いますが」


 それはつまり、


 増えているということ。


 レオンは立ち上がる。


「……じゃあ」


 拳を握る。


「もっと増える」


「はい」


 短い答え。


 レオンの中で、何かが繋がる。


 南の惨事。

 閾値。

 世界の収束。


 だが同時に、


 別の可能性も見える。


「……もし」


 彼は言う。


「みんなで学んだら?」


 エルナが眉を上げる。


「何を」


「制御」


 単純な言葉。


 だが重い。


「誰も教えてないんだろ」


 リリアは黙る。


 それは事実だ。


 聖堂は独占してきた。


 だから知識は閉じている。


「なら」


 レオンは続ける。


「みんなで覚えればいい」


 その発想は、まっすぐだ。


 だが危険でもある。


 エルナが笑う。


「簡単に言うわね」


「難しい?」


「めちゃくちゃ」


 セレナが静かに言う。


「でも、間違いではありません」


 リリアの視線が彼女へ向く。


 セレナは続ける。


「知識を開けば、暴走は減るかもしれない」


「かもしれない」


 リリアが繰り返す。


「確実ではありません」


「はい」


 それでも。


 セレナは丘の下を見る。


 町が目覚め始めている。


「恐怖だけでは、止まりません」


 その言葉は、決意だった。


 レオンは少し驚いた顔をする。


「……手伝う?」


 セレナは微笑む。


「学ぶ側です」


 エルナが吹き出す。


「聖女が弟子入り?」


「立場は関係ありません」


 リリアは少しだけ考えた。


 分散は危険。


 だが独占も危険。


 その中間は、


 まだ誰も試していない。


「……試す価値はあります」


 静かな答え。


 その時。


 丘の下から、誰かが駆け上がってきた。


 若い女性。


 息を切らしている。


「……あの」


 レオンを見る。


「あなた……光を使った人ですよね」


 レオンが戸惑う。


「え?」


 女性の手が、微かに光る。


 弱い。


 だが確かに。


「私も……」


 声が震える。


「最近、出るんです」


 沈黙。


 リリアが女性を見る。


 また一人。


 弱い共鳴。


 だが確実に。


 エルナが空を見上げる。


「……始まったわね」


 噂は広がる。


 希望も、恐怖も。


 そして人は集まる。


 光を持つ者たちが、


 まだ小さな丘へ、


 少しずつ、


 集まり始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ