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癒ししかできない無能聖女として追放されましたが、私がいなくなった国はもう保ちません  作者: 蒼井 玲


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第57話 甘い提案

 炭鉱町に入った一団は、商人を名乗った。


 布や香辛料を広げ、穏やかな笑みを浮かべる。


 だが目が違う。


 値踏みする視線。

 人ではなく、“可能性”を見ている目。


 レオンは、その視線に気づいていなかった。


 丘の上で、まだ考えている。


 壊すか、広げるか。


 怒りは消えていない。


 その背後に、柔らかな声がかかった。


「君が、あの奇跡の少年かな」


 振り向く。


 整った服装の男。

 穏やかな笑み。


「……違う」


「謙遜は美徳だが、事実は変わらない」


 男はゆっくり近づく。


「私はただの商人だ。

 だが、北の方とも取引がある」


 北。


 レオンは詳しく知らない。

 だが王都とは違う響き。


「王都は君を管理するだろう」


 男は続ける。


「だが我々は、違う」


「……何が」


「自由だ」


 その言葉に、レオンの胸が反応する。


「君の力を、独占しない」


 甘い。


 あまりに都合がいい。


「研究はするが、拘束はしない」


「研究?」


 わずかな違和感。


 男は笑う。


「世界を知るためだ」


 丘の下で、エルナが目を細める。


「接触したわね」


 リリアは、静かに息を吐く。


「ええ」


「止める?」


「まだ」


 男は続ける。


「聖性を分け合う世界を作りたいのだろう?」


 レオンの瞳が揺れる。


「……知ってるのか」


「噂は早い」


 北方連邦は、情報に敏い。


 聖性を兵器と見る国。


 だが今は、その顔を見せない。


「君の理想を、実現できる」


 レオンの喉が乾く。


 王都は管理。

 この男は自由。


 単純な対比。


 だが単純な構図ほど危険だ。


「俺は……」


 迷いが生まれる。


 その瞬間、空気がわずかに震えた。


 リリアが丘を登ってくる。


「商談中ですか」


 穏やかな声。


 男の目が、初めて鋭くなる。


「あなたは」


「通りすがりです」


 エルナが肩をすくめる。


「便利な言葉よね、それ」


 男は一瞬で状況を把握する。


 目の前の外套の女。

 共鳴の質が違う。


「なるほど」


 軽く一礼する。


「王都の方ではなさそうだ」


「どこでもありません」


 リリアの答えは曖昧だが、揺るがない。


 男は微笑む。


「我々は、独占に反対する」


 レオンを見る。


「君の力は、解放されるべきだ」


 リリアは、少年に向き直る。


「解放とは、誰のための言葉ですか」


 レオンは、答えられない。


 男が口を挟む。


「もちろん、彼のためだ」


「研究のためでは?」


 静かな指摘。


 一瞬の沈黙。


 男の笑みが、わずかに硬くなる。


「研究は発展だ」


「兵器化も?」


 空気が変わる。


 レオンの背筋が冷える。


「兵器?」


 男はすぐに笑顔を戻す。


「極端だ」


 だが否定は、弱い。


 エルナが低く呟く。


「図星ね」


 丘の上で、三者が対峙する。


 少年。

 解放を謳う他国。

 壊さず広げる女。


 レオンは、拳を握る。


 自由が欲しい。

 だが利用はされたくない。


 共鳴が、ざわつく。


 未熟な光は、選択に敏感だ。


 リリアは言う。


「選ぶのは、あなたです」


 男が目を細める。


 この女は、強制しない。


 だからこそ厄介だ。


 レオンの中で、二つの言葉がぶつかる。


 自由。

 均衡。


 夜風が吹く。


 拡散は、国境を越えた。


 だが今はまだ、


 選択は、少年の手の中にある。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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