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癒ししかできない無能聖女として追放されましたが、私がいなくなった国はもう保ちません  作者: 蒼井 玲


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第55話 強制と宣言

 炭鉱町の広場は、まだざわめいていた。


 暴走は止まった。

 だが、恐怖は消えていない。


 神官は顔を強張らせたまま、リリアを見据える。


「あなたは何者だ」


「通りすがりです」


 同じ答え。


 だが今は、誰もそれを額面通りには受け取らない。


 神官は、護衛に目配せする。


「未登録適性者は、王都へ移送する。

 これは王命だ」


 再び告げられる強制。


 レオンの肩が震える。


 先ほど静められた光が、胸の奥でざらつく。


 リリアは、神官に向き直る。


「今の状態で移送すれば、再発します」


「管理下に置けば制御可能だ」


「制御を教えないまま、管理だけをするのですか」


 神官の目が細くなる。


「聖性は国家の安定に関わる」


「安定は、恐怖で保てません」


 広場が静まり返る。


 町人たちは、二人のやり取りを固唾をのんで見守る。


 その時、馬の蹄の音が響いた。


 王都の紋章。


 だが神官のものとは違う、より上位の印。


 馬から降りたのは、白い法衣の少女。


 セレナ。


 広場がどよめく。


「聖女様……」


 神官が慌てて膝をつく。


 セレナは、ゆっくりと周囲を見渡した。


 崩れかけた坑道。

 震える少年。

 外套の女性。


 視線が、リリアと交わる。


「報告は受けています」


 落ち着いた声。


「未熟な適性者への強制移送は、延期します」


 神官が顔を上げる。


「しかし――」


「延期です」


 穏やかだが、揺るがない。


 広場の空気が、変わる。


 レオンは、呆然とセレナを見る。


「……なんで」


 自分を連れて行く側のはずの存在が、

 止めた。


 セレナは、少年に歩み寄る。


「あなたは、恐れていますか」


 レオンは、うなずく。


「怒っていますか」


 うなずく。


「それは、正常です」


 意外な言葉。


 神官たちがざわめく。


「聖性は、呪いではありません」


 セレナは続ける。


「ですが、武器でもありません」


 リリアが、わずかに目を細める。


 それは、2巻での彼女の言葉の延長。


「あなたが望まぬ形で、役割を押しつけられることはありません」


 宣言。


 広場に、静かな波が広がる。


 神官が焦る。


「前例が――」


「前例は、今作ります」


 セレナは振り返る。


「未登録適性者への強制管理を、一時停止します」


 それは、制度への一石。


 広場の人々は理解していない。

 だが、空気が緩む。


 レオンの胸のざらつきが、少し薄れる。


 リリアは、静かに言う。


「あなたは、立ちましたね」


 セレナは小さく息を吐く。


「少しだけ」


 まだ制度は変わっていない。

 だが、ひびは入った。


 エルナが、肩をすくめる。


「面白くなってきたわね」


 炭鉱町の空に、朝日が差し込む。


 拡散は止まらない。


 だが今、


 強制だけが正解ではないと、


 公の場で初めて宣言された。


 少年は、まだ中心ではない。


 だが、選ぶ余地を与えられた。


 世界は、ゆっくりと


 単一の軸から、外れ始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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