第53話 未熟な光
翌朝、炭鉱町は妙に静かだった。
聖堂の伝令は町長の家に泊まり、
未登録適性者の事情聴取を行うと告げている。
事情聴取。
柔らかい言葉だが、町の空気は硬い。
レオンは広場に呼び出されていた。
「名は」
「レオン・ハルヴァ」
「年齢」
「十五」
記録官が淡々と書き込む。
「発動時の状況を説明しなさい」
昨夜から何度目かの質問。
レオンは、同じ説明を繰り返す。
「崩れた坑道を見て、助けたいと思った」
「祈ったのか」
「……わからない」
本当だ。
祈ったというより、叫んだ。
伝令の神官は、レオンを観察している。
警戒と、期待。
その視線が重い。
「再現は可能か」
その言葉に、広場がざわつく。
レオンの胸が締め付けられる。
父が前に出る。
「無理にさせるな」
神官は表情を変えない。
「適性の確認は必要です。
制御を誤れば危険ですから」
危険。
その言葉が、レオンの耳に残る。
(俺が危険?)
広場の端で、子どもが転ぶ。
膝を擦りむき、泣き出す。
レオンは無意識に動いた。
触れる。
意識しない。
ただ、痛みが引けばいいと願う。
指先が、淡く光る。
傷が、ゆっくり閉じる。
小さな奇跡。
広場が、息を呑む。
神官の目が光る。
「確認された」
その一言で、何かが決まる。
レオンの背筋が冷える。
拍手が起きる。
「やっぱり聖女だ!」
「町の誇りだ!」
誇り。
昨日までの自分は、ただの炭鉱夫の息子だった。
今日は、違う。
その違いが、重い。
遠く離れた街道。
リリアは、はっきりと感じていた。
「発動しましたね」
エルナが、ため息をつく。
「あの子、制御知らないわよ」
「ええ」
怒りも、恐れも混ざっている。
未熟な光は、鋭い。
炭鉱町。
神官は告げる。
「王都への同行を求める」
静まり返る広場。
「拒否権はありません」
父が叫ぶ。
「まだ子どもだ!」
「だからこそ、管理が必要です」
管理。
その言葉に、レオンの胸が熱くなる。
「俺は物じゃない」
低く言う。
神官は、わずかに眉を動かす。
「聖性は国家資源です」
はっきりとした言葉。
広場の空気が凍る。
レオンは、初めて怒りを自覚する。
(資源?)
拳が震える。
足元の砂が、わずかに浮く。
小さな歪み。
誰も気づかない。
だが、世界は確実に揺れた。
丘の上。
リリアが目を閉じる。
「……急ぎましょう」
「今度は本気ね」
「はい」
これは観測では済まない。
未熟な光は、
押さえつけられれば、反発する。
レオンは、広場の中心に立っていた。
望んでいないのに。
中心は、いつも、
望まれた者ではなく、
立たされる者に与えられる。
少年の瞳に、
初めて、反抗の色が宿った。
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