表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
癒ししかできない無能聖女として追放されましたが、私がいなくなった国はもう保ちません  作者: 蒼井 玲


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/85

第43話 共鳴

 街道は、穏やかだった。


 空は高く、風は弱い。

 遠くで農夫が畑を耕している。


 何も起きないはずの午後。


 リリアは、ふと足を止めた。


「……どうしました」


 エルナが横を見る。


 リリアは答えない。

 ただ、胸元に手を当てる。


 鼓動が、わずかにずれている。


 世界と、半拍。


 風が、止んだ。


 畑で作業していた農夫が顔を上げる。


「……なんだ?」


 空気が、震える。


 熱でも寒さでもない。

 圧力でもない。


 “揺れ”。


 リリアの視界が、わずかに白くなる。


(……誰かが、祈っている)


 強い。

 真っ直ぐな祈り。


 遠くから。

 だが、確かに届く。


 エルナが、眉をひそめる。


「今の、なに」


「共鳴です」


 小さく答える。


 その瞬間。


 王都から離れた街道で、

 セレナもまた、息を詰めていた。


「っ……」


 胸が、焼けるように熱い。


 祈っていない。

 だが、祈りが溢れる。


 護衛が慌てる。


「聖女様!?」


 光は、出ない。


 奇跡も起きない。


 だが周囲の草が、わずかに揺らぐ。

 空気が、波打つ。


 セレナは、馬から落ちそうになる。


(……誰)


 遠くに、何かがある。


 自分と同じ“位相”。


 知らないはずなのに、知っている感覚。


 リリアは、目を閉じる。


 逃げない。


 拒まない。


 ただ、受け取る。


 世界の底で、糸が触れ合う。


 聖性は、唯一ではない。


 押し込められていた可能性が、

 今、わずかに触れた。


 エルナが、低く言う。


「……あんた、今」


「ええ」


 リリアは目を開く。


「中心が、動きました」


 セレナの呼吸が、ようやく落ち着く。


 護衛が動揺している。


「医者を」


「いえ、大丈夫です」


 セレナは、静かに首を振る。


 怖い。


 だが、はっきりと感じた。


(……いる)


 自分と同じ場所に立てる存在。


 王都では教えられなかった感覚。


 世界が、少しだけ広がった。


 街道の風が戻る。


 何もなかったように、午後が続く。


 だが――


 王国の根幹を支えてきた前提が、

 静かに崩れ始めていた。


 聖女は、唯一ではないかもしれない。


 そしてその事実は、

 まだ誰にも知られていない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ