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癒ししかできない無能聖女として追放されましたが、私がいなくなった国はもう保ちません  作者: 蒼井 玲


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第100話 選ばない

 黒が、崩れている。


 だが。


 消えてはいない。


 中心はまだ残っている。


 外界存在。


 その核が、


 ゆっくりと形を保っている。


「――不安定」


 声が揺れる。


 初めて。


 明確に。


「――最適解、再構築」


 その瞬間。


 黒が再び収束する。


 崩れたはずの侵食が、


 再構築される。


「……は?」


 レオンの顔が歪む。


「まだ終わってねぇのかよ」


 イリスが言う。


「……当然」


「最適解が消えたわけではない」


 その通りだ。


 今のは。


 崩しただけ。


 壊してはいない。


 外界は、


 また作り直す。


 何度でも。


 最適解を。


 その時。


 リリアが、


 一歩前に出る。


 静かに。


 だが確実に。


「……違います」


 小さく言う。


 レオンが振り向く。


「何が」


 リリアは、


 黒を見る。


 その目は、


 もう揺れていない。


「壊せません」


 その言葉に、


 空気が止まる。


 イリスが即座に言う。


「……正しい」


 レオンが眉をひそめる。


「じゃあどうすんだよ」


 リリアは答える。


「壊さない」


 短く。


 だが。


 決定的な言葉。


 レオンが笑う。


「……意味わかんねぇな」


 だが。


 続きを待つ。


 リリアは言う。


「選ばせない」


 その瞬間。


 理解が走る。


 イリスが目を細める。


「……確定拒否」


 レオンが呟く。


「決めさせないってことか」


 リリアは頷く。


「はい」


 黒を見る。


 外界の中心。


「選択を成立させなければ」


「最適解は存在できません」


 その理論は、


 単純で。


 絶対だった。


 外界は、


 “決定することで成立する”。


 なら。


 決めさせなければいい。


 レオンが笑う。


「……それ、最高に性格悪いな」


 イリスが言う。


「合理的」


 短い肯定。


 三人が並ぶ。


 最後の構図。


 レオン。


 イリス。


 リリア。


 それぞれ違う。


 だが。


 同じ方向を見る。


 黒の中心。


 外界存在。


 それが言う。


「――無意味」


「――決定は不可避」


 当然だ。


 世界は、


 決まることで動く。


 だが。


 レオンが一歩踏み出す。


「じゃあさ」


 拳を握る。


「決めなきゃいいだろ」


 その瞬間。


 三人が動く。


 光が広がる。


 だが。


 今までと違う。


 収束しない。


 固定しない。


 ただ。


 揺らぐ。


 無数の可能性。


 無数の選択。


 その全てを、


 同時に存在させる。


「――ッ!」


 黒が揺れる。


 中心が、


 定まらない。


「――確定不能」


 声が歪む。


 レオンが叫ぶ。


「それが答えだ!!」


 光を叩き込む。


 だが壊さない。


 固定しない。


 ただ。


 “揺らし続ける”。


 イリスが支える。


「……維持」


 リリアが調整する。


「……均衡」


 三人の力が、


 完全に噛み合う。


 その瞬間。


 外界の中心が、


 止まる。


 動かない。


 決まらない。


「――……」


 初めて。


 外界が沈黙する。


 何も言えない。


 決められない。


 存在できない。


 その状態。


 レオンが息を吐く。


「……これでいい」


 黒を見る。


 もう敵ではない。


 ただの、


 “決められないもの”。


 リリアが言う。


「……終わりではありません」


 静かに。


 イリスも頷く。


「……維持が必要」


 当然だ。


 これは破壊じゃない。


 状態の固定。


 いや。


 “固定しないことの維持”。


 レオンが笑う。


「めんどくせぇな」


 だが。


 嫌じゃない。


 その時。


 黒が、


 ゆっくりと薄れていく。


 消えるわけじゃない。


 ただ。


 “存在を保てなくなる”。


 外界存在は、


 そのまま、


 静かに後退していった。


 空が戻る。


 青が戻る。


 風が戻る。


 だが。


 完全には戻らない。


 何かが残っている。


 揺らぎ。


 不確定。


 それが。


 この世界の新しい形だった。


 レオンが空を見上げる。


「……終わったか?」


 リリアが答える。


「いいえ」


 少しだけ間を置く。


「始まりです」


 レオンは笑う。


「……だろうな」


 その顔は、


 どこか軽かった。

ついに決着です。


壊すのではなく、「決めさせない」。

それがこの物語の答えでした。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

面白いと感じていただけたら、ぜひブックマーク・評価で応援いただけると嬉しいです。


次回、最終話「その後の世界」。

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