呪いの真実と、悪魔の使いの笑う声
街への帰り道。俺たちの間に会話はほとんどなかった。
ゴースト――この世界に俺たちを転生させた張本人との再会。本来なら憎しみをぶつけ、倒して終わるはずだった。
けれど、現実は違う。
ゴーストもまた、バルセロの人々を守るために呪いを背負わされた“被害者”だった。
ぶつけようのない気持ちを石ころに込めて蹴り飛ばす。乾いた音を立てて転がった石は、段差で跳ねて行方を消した。
「なんか……モヤモヤするね」
気まずい空気を察したのか、エリィが空を見上げながらそう呟いた。
俺は「……ああ」と短く返すだけ。その後の言葉が喉でつかえて出てこない。
ジークは無言のまま、ずっと地面を睨みつけていた。
「うぷぷぷ。あーあー空気わっる」
そんな静寂を破ったのは、突然空中から現れた雑音――ミラだった。俺たちの顔を一つずつ覗き込み、耐えきれないとばかりに大笑いする。
ミラが現れた瞬間、真っ先に動いたのはジークだ。
雷撃をまっすぐミラに叩き込む。
「ジーク!?」
俺の叫びも虚しく、雷はミラに直撃し、轟音が走った。
「うぷぷぷ。喧嘩っ早いのう。ジャイアンか、ガキ大将か、うぷぷ」
……ノーダメージ。
ミラはいつもの調子だった。
「チッ……!」
ジークが飛び掛かろうとするのを、エリィが慌てて止めに入る。
「ちょ、ちょっとジークさん! 落ち着いて!」
「離せエリィ! 今すぐコイツを殺す! そしてサンタクロースの居場所を吐かせる!」
「やめろって! 一旦深呼吸しろ!」
暴れるジークにしがみつく俺。エリィも加勢してくれるが、それでも抑えきれない。
そこでエリィは――自分の“溺死”の能力で、ジークの呼吸を一瞬だけ止めた。
「ぐっ……! ……分かった、悪かった」
肩を叩いてギブアップしたジークに、俺たちはようやく手を離す。
「ナイス、チームワーク。グッチョブ!」
「……お前、本気で俺を馬鹿にしてるだろ。ゴーストの一件、見てたんだな」
「モチのロンパ!」
ふざけた調子で親指を立てるミラ。
「まあ、見てなくても想像つくけどな。あいつは強いけどメンタル弱いし。お前たちがバルセロに行ってる間も、一睡もせず震えながら帰りを待ってたぞ?
……それにしてもノアス、お前は本当にお人好しだ。普通あそこで殺すだろ? まさか生かすとは。予想外すぎて笑っちゃったよ。うぷぷ」
「うるせぇよ。それより……お前らは何がしたいんだ。俺たちを異世界に転生させて、関係ない人たちを呪いで苦しめて……何が目的なんだよ」
「そんなの私様が知るか〜。サンタクロース様の考えなんて分かるわけないだろ。私はただ“面白い”ほうの味方をするだけさ。誰の味方でもないし〜」
「だったら……サンタクロースの居場所、知ってるのか?」
エリィの問いに、ミラはにやりと口角を上げる。
「うぷぷ。もちろん知っているよ、この小娘。実はその話をしに来たんだ。ナイスパス、エリィ」
「「「は?」」」
俺たち三人の声が重なった。ミラは腹を抱えて笑う。
「面白い重なり方したねぇ。トリオで“大馬鹿三太郎”としてデビューしろよ。まあこの世界お笑いないけど。はい無職〜!」
「いいから答えろ! サンタクロースの居場所を教えるって本当か!?」
「本当だよ。しつこい男は嫌われるぞ?
――サンタクロース様の居場所は、この街から南へ二日。深い霧の中にある場所だ。辿り着けば一発で分かるさ」
本気とも嘘とも取れるが、ミラは涼しい顔のまま続けた。
「罠じゃないよーん。ただ“そろそろ対峙したら面白いかな”ってね。
行ってみたら分かるよ。サンタクロース様が何を望んでいるのか。そしてお前たちがその光景を見てどう思うのか……想像しただけで笑いが止まらん! うぷぷ」
両手を広げて上機嫌に笑うミラ。
これ以上追及しても無駄だと分かる。
「……仕方ないね。行くしかない」
エリィに頷く。
バルセロから戻っても手がかりはゼロだった。
たとえミラが癪でも、この情報に頼るしかない。




