Ep.6
「——アーシャ兄ちゃん」
「ん、……ああ。フロウ」
ぱたぱたと近寄ってきたフロウことフローゼスに、おれはにこりと笑い掛けた。
「どうしたんですか?」
「……相談が、あって」
おれが聞くと、フロウはふっと目を伏せた。
……相談?
「相談、って……」
「……ボク、父上さまの跡継ぎに選ばれちゃって。ボクの母上さまは、ほんとは王妃さまじゃないのに」
「……、ああ……フィユも言ってましたね。なぜフロウなのですか? 第一王女さまは18歳でいらっしゃるじゃありませんか。フロウはまだ13歳でしょう? ……国王陛下は隠し子だと知っていらっしゃるでしょうし、遺書にも書かないでしょう?」
「、それは……兄さまたちが……」
そこで言いにくそうに口ごもり、フロウはまた続ける。
「『フロウが王になれ。一番社交性があり、頭もいいし剣の実力は随一だ。だから、君が国王になるべきだ』って……言ってきたんだ。ファエ兄さま……第一王子さまはご病弱だし、リル姉さま……第一王女さまは……えぇと、知力が芳しくないし。リベラ姉さま……第二王女さまは剣術が不得手で、あまり運動がお好きではないし。セシル兄さま……第二王子さまは人見知りで、国王にはお向きでいらっしゃらないし。アリズ兄さま……第三王子さまは、国王さまとも王妃さまとも血がつながってないんだ。上級魔法の中でも上級の魔法の使い手だったから……半ば売られるみたいな形で、将来的に国王の補佐、護衛をするために王族に来たんだって」
「第三王女さま……えぇと、ラビアさまでしたか? 彼女は、」
「ラビア姉さまは、元から乗り気じゃないんだよ。世界一周旅行をするとかなんとか言って、あんまり城にも帰ってこない」
困ったようにそう言って、フロウははぁと溜め息を吐いた。
「ボクが王なんて……アーシャ兄ちゃん、どうすればいいと思う……?」
「どうすれば、と言われても……どーんと構えてればいいんじゃ」
「それじゃダメだよぉ……」
肩を落として、フロウは涙目になる。
そりゃあ自分が王になるとは思ってなかっただろうから、重圧はものすごいだろう。おれには計り知れないし、多分今後も知ることはないだろうけど……。
ここまでになると、フロウが可哀想すぎるな。
「元気出してください、フロウ。フィユもいますし、他のごきょうだいも応援してくださっているんでしょう?」
「……上は、全員応援してくれてるんだけどね……下が。第四王女さまと第六王子さま……ハナさまとセレグさまが、異様に敵視してくるんだよ」
疲れたというように再度溜め息を吐いて、フロウは言った。
第四王女さまと第五王子さま……確か、第四王女さまは13歳、フロウと同い年で、第六王子さまは9歳だった……はず。
そんな幼いうちから、国王の座を狙ってるのか……王子じゃなくてよかった。
「……どんまいです」
「うう~」
そしておれは抱き着いてきたフロウを抱き締め返して、慰めてあげたのだった。
……おれにできることは、これしかないけど。




