Ep.4
「——え?」
いつか……そう、父上にロークさまにグレイ姉さまが嫁ぐという衝撃的な言葉を聞かされた時と同じように、おれはそう声を漏らした。
「……おれが……ロークさまと、グレイ姉さまと一緒に……住む?」
「ああ。俺とグレイティアの仲を深めるためにも、……アナスタシアが必要だと考えた。ああ、嫌だったら別に断っていいぞ」
仲を深めるためにも、の後に、「グレイティアの暴走に一人で対処しなくてもいいように」が入った気がした。
「……いや、いやいやいやいや。新婚の夫婦と一緒に暮らすなんて、そんな……」
「私は気にしないわよ?」
「俺も気にならないな。というかアナスタシアがいた方がいいと思う」
「……え、ほんとに? ほんとに言ってます?」
恐る恐る、聞いてみる。
すると、さらりと涼しい顔でロークさまは言った。
「本気だが? ……グレイティア、お前は弟がいてくれた方がいいか?」
「え? んー……別に、どっちでもいいわ。冷たいお言葉と視線が飛んでくればなんでもいいの」
「……グレイ姉さまはそういう人でしたよね……グエム姉さまですもんね……」
「グエム? グエムってなに、アナ」
「……グレイとドМを掛け合わせたんです。というかこの会話前もしましたよね……?」
本当に、グレイ姉さまは自分が興味のあること以外は全く覚えないな……。
「そうだったかしら?」
ん、と細くて長い人差し指を口もとに持っていき、グレイ姉さまはこてんと首を傾げる。
その動作は、弟のおれから見ても色気がふんだんに出ていて、おれははぁ、と息を吐いた。
グレイ姉さまは、自分の美しさと色気に本当に無頓着だ。
「……。おれがいた方が……いい、んですか? というか、おれいていんですか?」
「勿論だ。——アナスタシア、頼む。俺とグレイティアと、共に住んでくれないか」
「う……」
……そんなに真摯に頼まれたら、断れないじゃないか。
おれはむ、と口を結んでから、目を逸らしながら言った。
「……別に、いいですよ」




