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完璧王子は死神である

はじめまして、くりはしあんずと申します

愛が重ければ重いほど、ヤンデレって良いですよね

 神城雅玖(かみしろがく)は、完璧王子である。

 眉目秀麗、文武両道、成績優秀。おまけに高校生にして、SNSマーケティング会社“bel ange(ベル・アンジュ)”の代表取締役社長とかいう、馬鹿みたいにハイスペックなスーパーダーリン。

 ……なぁアンタ『人は、目でも殺せる』って、知ってるか?

  

――――――――――


 20××年4月、県立成隆高校、入学式。俺(桜井誠人(さくらいまさと))は、昇降口前に掲示されたクラス分けに目を走らせ、愕然と立ち尽くした。

 俺の名が記された場所は、1組。1番から30 番まで記された氏名を、震える目でなぞる。今度はゆっくりと、俺の見間違いだと祈るように。

 1周、2周、3周……駄目だ、見間違いじゃない。背中をつう、と冷たい汗が流れた。

  

「…………最悪だ」

 俺の高校生活、下手すれば1日目から強制終了するかもしれない。



 重い足を引き摺りながら、1年1組の教室に足を踏み入れた。ぐるりと辺りを見渡し、思わず安堵の溜息が漏れる。


 ()()()は、まだ居ない。


 机に鞄を投げ捨て、やや手荒に椅子を引いてドカリと腰掛ける。前の席に座っていた男子がビクリと肩を揺らして恐る恐る振り返った。俺と目が合った瞬間、泣きそうな顔をしてそそくさと席を立ち、一目散に逃げていく。ちょっと凹んだ。

 

「おはよ、マサ。うわ、眉間の皺ヤバ。悪人顔ランキング、更新中?」

 ケラケラと笑いながら、一人の女子が今しがた空いた席に腰を下ろした。深緑色のサイドテールがふわりと揺れ、臙脂色の猫目が俺を映して悪戯っぽく細められる。


「……はよ、アサカ。お前、知ってて煽ってんだろ」

 忌々しげに吐き捨て、うんざりしたような視線を向けても、友人の速海朝夏(はやみあさか)は全く動じない。一層笑みを深くして、ブレザーの胸ポケットにしまっているスマホをとんとん、と叩く。

「分かってないわね、マサ。アレは、最高の()()()()よ?」

 彼女は、あの()()を『昼ドラ』と称して喜んで飛び込み傍観を決め込む、唯一の人間。恐ろしいほどに、肝の座った友人。


「―――ほら、お出ましよ」

 ギラリと目を光らせ、瞬時にスマホを構えるアサカ。録画開始を告げる“ピコン”という音に頭を抱える俺。ガラリ、と教室の戸を開ける人影。



――――来た。来てしまった。



 エンパイアブルーのマッシュボブに、切れ長サファイアブルーの瞳。そこらのアイドル以上に面の良い男―――神城雅玖(かみしろがく)が、恋人であり幼なじみの天瀬鈴(あませりん)と共に、教室に現れた。

 当然のようにりんの鞄を持つ、ごくごく自然な手つきで壁に手を当て怪我の予防をする等、一切隙の無い、完璧なエスコート。周りがざわつくレベルの、甘く蕩けた眼差し。

 やや緊張気味なりんは、その眼差しに全く気付いていないようだ。丸い大きな黒茶の瞳がそろり、と辺りを見渡し、うっかり目が合ってしまう。

 安心したように細められた瞳、薔薇色に上気する頬。


 やばい、と思った時にはもう遅かった。

 

「まさくん!アサカ!」

 柔和で弾んだ声が、鼓膜を揺らした。花が綻ぶような笑顔を見せながら、りんが此方に歩み寄ってくる。両耳の下で結ばれた濡羽色の髪が、彼女の動きに合わせてふんわり揺れている。


「朝一でコレとか……最ッ高……!」

 りんに手を振りながら、アサカが呟いた。スマホを持つ手が、震えている。恐怖ではなく、多分興奮で。


「また同じクラスなんて嬉しいわ。今年もよろしくね!」

 にっこり微笑むりんの周りに、パステルカラーの可愛い花のエフェクトが舞っている気がする。温厚で誰にでも優しい、まるで天使のように愛らしい友人。


「お、おう……よろしくな、りん………」

 ぐ、と喉が詰まる。冷や汗が止まらない。


 彼女は悪くない。決して非はない。

 だが、とんでもないレベルの問題がある。

 ()()()()()では無いが、厳密なきっかけは、()()()()()という一見矛盾した、厄介な問題が。


「……りん。そんなに急いだら、危ないよ」

 穏やかな声色でりんに語りかけながら、がくがりんの肩にそっと手を置いた。彼女に優しい微笑みを向けてから、視線が俺を捉えた、その瞬間。


 サファイアブルーが、暗く、淀んだ。


「良かったね、マサくん……()()()()()に喜んでもらえて」

 穏やかな微笑み、柔らかなテノール。端から見れば、ただの世間話。


 “幼少期からの長い付き合い”という名を借りた“恐怖体験”のせいで、俺には見えてしまう。

 がくの背後に浮かぶ、死神装束を纏った彼の幻影を。


 高笑いの如くガバリと開いた口、瞳孔ガン開きの殺気に満ち溢れた鋭い瞳、右手で振り上げられた大鎌。左手は『首、置いてけよ、なぁ?』と言わんばかりに地面を真っ直ぐ指差している。



 あぁ、終わった。俺の高校生活、お先真っ暗。



―――――――――――

 神城雅玖は、完璧王子である。

 眉目秀麗、文武両道、成績優秀。おまけに高校生にして、SNSマーケティング会社“bel ange(ベル・アンジュ)”の代表取締役社長とかいう、馬鹿みたいにハイスペックなスーパーダーリン。


 それら全ては、彼が()()()()()()()()ためだけに用意した、ただの布石。彼の行動原理全てに()()()がいる。


 天瀬鈴至上主義の超絶過激派狂愛系ヤンデレ。彼女が絡むと、彼は途端に狂い出す。人呼んで、白昼の死神。


 故に、完璧王子は、死神である。

ご拝読いただき、ありがとうございます。

彼が起業したのは中2の進路希望面談翌日、理由は「稼ぎが無いとりんと結婚できないから」です。重いですね。

もしかしなくても、彼の社名はりんちゃん由来です。重いですね。

お楽しみいただけたら、幸いです。頑張れます。

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