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怪しいの少女

「そう、そこのピルエットが全然間に合わないの」



木漏れ日の下を歩く15時。同じバレエ教室に通うじゅんな、りん、まなかは三人で同じ歩道橋を歩きながら、今回の発表会で踊るバリエーションについて話していた。


「この曲回転する動き入れすぎだと思う」

「ほんとにそれ!!!やっとステージの半分くらいまで回ったと思ったらまた折り返して反対側まで回って移動するわけでしょ」


嫌になっちゃう、とりんは頭を抱えた。

三人が踊るのは、動きの激しいバリエーションだった。

回転する動き、三半規管が強くなければ酔ってしまいそうな動きが得意なまなか、三人の中で一番体が柔らかく、柔軟性が顕著に現れる動きが得意なじゅんな、それからキャトルやパドブレなど、足先を綺麗に見せることが得意なりんの得意な分野を活かせるように考えた先生の判断で、今回のバリエーションを踊ることになった。

が、りんやじゅんなはおろか、回転が得意と自他共に認めるまなかさえ今回のバリエーションは回転系が多かった。

回転系が多いとそれだけ疲れが三半規管に蓄積するわけで、次の動きまでに目が回ってしまって綺麗に踊り切れないのだった。



「先生も、ちょっとは減らしてくれてもいいと思うんだけど」



じゅんながしょんぼりしながら言う。それに対して、りんとまなかがうんうんうんと勢いよく頷くくらい、今回のバリエーションは難しかった。



「つま先伸ばして!って言われるけど、まだ全然そこまでいけないよね」

「そう!!目が回って全然他のところ気をつけてられな」



その時だった。

日向を歩いていたはずの三人の頭上が不意に暗くなった。自然と会話が途切れ、上を見上げると、大きな雨雲がF市を覆っていた。




「・・・きた」





りんがぽつりと呟くと、雨雲が真っ二つに割れ、その間から全身毛むくじゃらの8メートルはありそうな怪物が落ちてきた。遠くでドシン、と大きな音がして、三人が立っている地面が揺れた。それを皮切りに、怪物が落ちた方から悲鳴が聞こえる。





「いくよ」

じゅんなが二人に呼びかけると、二人は黙って頷いた。





・・・





どすん、どすん、と地面を揺らしながら怪物が走っている。その先を見れば、一人の少女。ロングヘアで白いワンピースを着た、三人と同じ歳くらいの女の子が無我夢中で壊れた街の中を走っていた。が、スカートの裾が倒れたビルの破片に引っかかって少女は転んでしまった。追いかける怪物が足を緩めることはない。悲鳴をあげる少女。それでも怪物はどんどんと追い詰めていき、あと3メートル、2メートル、、、、



「そこまでよ!!」



どこからか制止の声。



「アア?」



怪物が振り向き、ビルの上を見上げる。



「私たちは世界を守るための」



「ぶりっこバレリーナ!!」



「「「ぶりっこせんたい!!!!」」」




そこには、りん、じゅんな、まなか、否、りんグリーン、じゅんなブルー、まなかイエローが立っていた。

怪物は新たに現れた三人の獲物に興味を示し、追いかけていた少女に背を向けた。



「あなたは私と一緒に」



その隙を見逃さず、まなかイエローが少女を介抱する。その様子をりんグリーンが怪訝な顔をして見つめたが、すぐに目の前の敵に目を移した。



「さて、やりますか」



じゅんなブルーが怪物の真正面に立って、キッと睨みつける。



「ハアアアアッッ!!!」



勢いをつけて地面を蹴り、一瞬で怪物の目の前へと移動する。その様に怪物は驚いたのか、身動きが取れずに、じゅんなの攻撃を一身に受ける。



「じゅんなキーックッ!!!」



顔面に蹴り技を喰らった怪物は、そのまま後ろ地面に倒れた。

キラキラと光の粒を放出しながら蒸発していく怪物。

さっきまでの闘気はどこへいったのか、と思うぐらいふわふわとしたいつものじゅんなの空気を纏いながら、今回の敵はそんなに強くなかったね、とじゅんなブルーが振り向いた。

それに対して、うんうん、とまなかブルーも頷いた時、気がついた。



「あの子どこー!?逃げたの!?」



まなかイエローが叫んだ。ロングヘアに白いワンピース、まなかが介抱していたあの子がいなくなったのだ。慌てふためくまなかに対して、じゅんなブルーが、



「腰抜かしてたし、逃げたってことはないんじゃないかな、、、?まだ近いところにいると思うよ」と苦笑いをした。



確かに、そうかも!!とまなかブルーも返して、三人で辺りを捜索することにした。



「りんは向こう頼むね」



そういって、じゅんなブルーが東の方向を指すと、りんグリーンはオッケー、と笑ってビルの影なんかを探し始めた。

しかし、りんグリーンは少し疑っていた。

突如消える少女。

腰が抜けているように見えたけど、まなかに支えられると容易に立ち上がった様子。

それから、あの笑顔。

りんは見ていたのだ。まなかに介抱されたあの瞬間、少女が不敵な笑みを浮かべていたのを。

怪しい、とりんはさっきまで少女がいた辺りを見つめた。

調べてみる価値はありそうだ。




と、その時、ガヤガヤと避難していた人が戻ってくる声がした。別々の方向にいた三人はさっきまでいた場所に戻ってきて、アイコンタクトを交わす、一瞬で姿を消した。

人にバレてはいけない。それが、ぶりっこ戦隊のルールなのである

受験勉強の合間に続けたい

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