ナインとの再会
「行きましょうよ!ウルスの街へ!私ももっと薬師としての知識を磨きたいわ」
と意気揚々と言うマリーンに、ベックは困惑していた。確かに薬学について指導してきたが、マリーンが旅をしてまで意欲的に薬学を学びたいと言い出すとは思ってもみなかったのだ。
「マリーン様、あなた様は姫君で薬師ではありませんぞ」
「そんなこと分かってるけど、姫だからと言って、薬学に詳しくなったらいけないの?」
「いえいえ、そのようなことは……」
マリーンは知っていた。ベックが、一代で宮廷薬師兼医師として起用されたのは己の能力が秀でているからだと自負していることを。深い知識と経験は自分の身を助けるというのがベックの信条であったから、自分の娘であるシンビーにも薬学を学ばせていた。
「姫だからってただ、可愛く微笑んでいればいいとは思わないのよね。薬学の知識があれば自分だけでなくお父様や弟、そのほかの身近な人の身に何か起きた時にも役立つと思わない?」
トドメだと言わんばかりに言うと、ベックは黙る。側で会話を聞いていたリムやルンナは恋人と別れて傷心であったマリーンが新しいことにチャレンジすることはいいことだとは思った。だが、判断はベック次第だ。
「お前達は、どう思うのじゃ?」
話を振られてリムとルンナはここぞと、マリーンの意思に沿う答えをする。
「私としては、元気なマリーン様がここにずっと留まっている理由は無いかと」
「私も!新しい知識を深めるのは良いことだと思います!薬師や医師を求める人は多いですし、マリーン様が積極的に学ばれていると広く知られれば、薬師や医師を目指す人ももっと増えますよ!」
「……そうか、参考にする」
病死する者が多いこの世界で、いかに薬師や医師が必要かと言われれば、ベックは否定する気にならない。むしろ、増やさねばならないと感じていたので、マリーンの言葉を聞いて、旅に出ることを前向きに考え始めていた。
(我が姫君は立派じゃ)
ベックは、王に向けて速やかにお伺いを立てることにした。マリーンも久しぶりに父王に手紙を書くことにしたのだが、普段、ベックが報告書を書いているのを知っていたから、マリーン自身はあまり手紙を書かない。何を書くべきか迷った。ぜひ、旅にられるようにしたい。何を書こうか。
(お父様や弟のことをいかに大切に思っているかについて書いておけば大丈夫かなぁ)
熱い思いが通じたのか、2週間後に王から旅立つ許可が下りた。王は“忘れられた姫”などと娘が呼ばれていることは知っていたが、新しい妻のアルゼの機嫌が悪くなることを恐れ、マリーンに会うことを避けている。せめて娘の希望を叶えてやろうと旅立つことを許可した。
だが、王は愛娘を旅に出すことを心配したので、マリーンにはまとまった軍を率いさせても良いと考えている将来有望なナインを帯同させることにした。ちなみに、リムはナインのかつての上司でもある。
王からの返信を受け取ったベックから内容を聞いたマリーンは、旅に出られる許可が出てとても喜んだ。しかもあの、初恋の人であるナインに9年ぶりに会える。
旅の用意をしながらナインの到着を待つことさらに1週間、マリーン達も旅に向けて町の人に別れのあいさつをしたり、旅立つための準備をしていた。
ちなみに、今回の旅の機会を最高の思い出にしたいマリーンには密かに望むことがあった。それは....
“なるべく世間の人に触れながら旅をすること”
今夜、その希望を叶えるためにある計画を実行する予定だ。マリーンの企みを知らないベック達は、ナインが到着するのをのんきな気分で待っていた。
「9年ぶりにナインに会うことになるのよね。彼、どんな風になっているかしら?」
「ナインは身体も大きく度胸もあり、指示に忠実に従うヤツでした。きっとマリーン様の役に立ってくれることでしょう」
「性格は昔のままかしら?昔はお兄ちゃんのようにやさしく接してくれたけど」
「今はマリーン様も大人。兄のように気軽に接してくることはないでしょうが、期待に応える働きをしてくれるでしょう」
「それは楽しみ!」
そんな会話をリムとしていると、屋敷の外に馬車が停止する音がした。
マリーン達が外に出てみると、荷物をたくさん積んだ馬車と共に、馬車につき従ってきたナインと思われる大柄な騎士が馬から降りてくる。リムと同じくらいの背丈があるから身長は190センチを超えていそうだ。
(あれが成長したナインかぁ……)
兜を脱ぐと、見覚えのあるダークブラウンの髪の毛がアゴのラインまで伸びている。マリーンの元まで来ると彼はひざまずいた。
「姫様、お久しぶりです。王の命により姫様をお守りするために参りました」
ナインの顔は、彫深く精悍でいわゆる美丈夫。日に焼けた筋肉が美しく健康的で何となく色気を感じられる大人の男になっていた。
「久しぶりね。すっかり騎士らしくなって驚いたわ」
顔を上げたナインはマリーンをしばし見つめると、下を向いて答える。
「姫様こそ、大変お美しくなられまして……」
ひざまずく騎士に言われ、マリーンはドキリとする。姫ではあるが、褒め言葉を当たり前のようにかけられる宮廷生活から遠ざかっていたせいで免疫がない。マリーンは照れを隠すように口を開いた。
「あ、ありがとう。あなたが憧れていたジュエルお姉さまには叶わないでしょうけどね」
マリーンの言葉を聞いた瞬間、ナインはピシリと固まったのだった。
久々に対面した2人は内心、“大人になっている!”と驚いています(*゜ロ゜)
作品が“気になる&いいな”と思われましたらぜひ【ブックマーク&評価&いいね】をお願いします(*ˊᵕˋ )⁾⁾コクコク
(広告下にあります☆☆☆☆☆が★★★★★なったら感涙!モチベーション爆up!❣️୧(⑅˃ᗜ˂⑅)୨皆さまに支えられております)
※投稿は毎日朝8時過ぎです。引き続きご高覧頂けるとウレシイです٩(*´꒳`*)۶