掴めない男
マリーンはジェクトに自分の思いを伝えるべく向き合う。
「私は、あなたとは“友人”になりたいの」
「友人?」
ジェクトの眉間にシワが寄る。
「両国の平和を得るためには、“友人”では関係が弱いよ」
「そうかしら?私はそう思わないわ。あなたとは少し話しただけど、あなたの頭がキレるところを私は評価しているもの」
「評価か........でもね、それだと僕の望むカタチじゃないな。...だったらこういう提案はどう?マリの元恋人のオムという男を我が家のピアニストとして雇うというのは?」
「何ですって?」
「マリが望むなら、彼を側に置いてもいい」
「何を言っているの!?」
「オムという男をまだ想っているんじゃないの?」
「もう終わったことよ。彼には恋人がいるわ」
「そんなの別れさせればいいじゃないか。彼は宮廷音楽家になるのが夢なんだろう?呼べば恋人を捨てでも来るさ」
「やめてっ!!」
マリーンが叫ぶと、リムとナインが走り寄って来た。
「どうされたのです!?」
リムがジェクトに問う。
「ちょっと意見が食い違っただけだ。もう戻るよ」
リムがジェクトを送って行くと、ナインとまた2人きりになる。
「何を言われたんです?」
「私が友人になりたいと言ったから話がこじれただけよ......」
オムの名前をナインの前で出したくなくて、曖昧に答えた。話を聞いたナインは黙ってマリーンの背中に手を添えると、私室まで送ってくれる。マリーンは扉が閉まる前にサッとナインを引き寄せると、昼間にできなかったキスを頬にした。
...........次の日、マリーンはジェクトと庭のガゼボでお茶をしていた。今日はリムとルンナが後ろに控えている。
またアルゼ王妃の暴走により、開かないはずの舞踏会が開かれる見通しになったのだ。そのための打ち合わせという名のお茶時間を知らないうちに組まれていた。
「昨日は失礼なことを言った。すまない」
「……」
「機嫌を直してくれ。怒らせるつもりはなかった」
「あなたは私だけでなく、オムにも失礼なことを言ったと思うわ。私は彼に会いたいと思ってないし、彼だってそんなことで呼ばれても嬉しくないハズよ」
「そうなの?調べさせた報告では、かなり彼は野心家だと聞いたんだけど」
「野心家であったとしても音楽家としてのプライドはあるでしょう?実力で呼ばれたいはずよ」
「君は優しいね」
「優しいとか、そういう問題ではないの」
「ごめんよ.........僕にも平民の彼女がいたことがあるから、彼女の生活がラクになるなら雇用してあげるのも1つの愛情だったのかなと思ったんだ」
「あなたはその彼女だった人を側に置きたいと考えているの?」
「いや、それは無い。もうだいぶ前に終わったことだし、彼女の新しい生活は始まっている。それに、僕は君に真剣に向き合うつもりだ。だから、愛人なんて置かないしつくるつもりもない。僕はただ君の心を手に入れたかったから提案しただけだ」
「...........私の心を手に入れるためにかつての恋人を呼び寄せようとするなんて、私には正気の沙汰とは思えないわ」
「君が喜ぶなら僕は手段を問わない、ということだったんだけど」
「もし、その提案を私が受け入れたとして、あなたは私がかつての恋人と仲良くしていたら嫉妬しないの?」
「嫉妬?するよ。だけど、君が好きだというならば仕方ない」
(......私にはこの人のことを理解できないわ)
ジェクトは少し変わっている。というか、大部変わっているとマリーンは思った。だが、彼は大臣達との話し合いでも一般的には考えが及ばないよう鋭い回答をしていたから、優れた柔軟な思考の持ち主であるのかもしれない。
お茶の時間が終わると、ジェクトと別れて部屋に戻った。
「マリーン様、先ほどの会話で気になる点がいくつもあったのですが.........」
リムとルンナが難しい顔をして立っている。
「聞いた通りよ。ジェクトは変わっているわね。オムのことを知って脅してくるのかと思えばそうでもないみたい。ズレてるけど」
「マリーン様の心を手に入れたいと言っておりましたが、イマイチ本心が掴めませんな」
「私もそう思うわ。掴みどころがないのよね」
「しばらくより注意を払いましょう」
そんなことを話した翌日、ジェクトが突然倒れたとの知らせが入った。
「え?昨日まで元気そうだったのに?」
リムとルンナとマリーンがジェクトの滞在している部屋を訪れると、ジェクトはグッタリとしてベッドに横たわっていた。
「やあマリ……こんな姿を見られてカッコ悪いな」
「ジェクト様はお疲れのようですな」
宮廷薬師兼医師としてベックの後を引き継いでいたジアムの言葉を聞いて、マリーンはジェクトの体調に全く気が付かなかったことを反省する。
「薬師である私が、あなたの体調の変化に少しも気付かずごめんなさい」
「いや、いいんだ。僕も悟られないようにしていたから。僕はたまに体調を崩して寝込んでしまうことがあるんだ。少し休めば治るから」
辛そうな様子のジェクトにマリーンは何かしてあげられないかとジアムと相談し、身体が楽になる薬草を調合する。
「ジェクト、起き上がれる?薬湯茶を持ってきたのだけど、飲めるかしら?」
ジェクトは枕を背に起き上がると、マリーンから薬湯の入ったカップを受け取った。
「マリ……いやマリーン、ありがとう」
少しずつ薬湯を喉に流し込んでいくジェクトは昨日までの冷静で自信家の姿とは違い、弱々しく見えた。
「“マリ”なんて呼んでゴメン。僕はかつての恋人と同じように君を呼びたくはない。かつての恋人を呼び寄せるのもやはりイヤだな」
「……それが自然な気持ちだと思うわ」
「君の前で見栄を張りたかったんだ。寛大な男だとね。でも、自分の心にウソをついたらストレスで倒れてしまった。情けないな」
「自分を偽る必要なんてないわ。自然なままでいいのよ」
「マリーン……」
ジェクトがマリーンの手を握る。
「ジェクト殿!手を放してください!」
声がして見ると、部屋の入口に怒った表情のナインが立っていたのだった。
ジェクトはカッコつけようとして自滅しました( ˊᵕˋ ; )
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