第1話 どうして?
かろやかに馬車が走っていく街道は王都までまだ遠い。
私、エリザベスは、クロウニー男爵家の養女。今は政略結婚のために一人きりの寂しい輿入れの旅路にある。
窓の外はのどかな田園風景だった。
王都べリントンはとてもにぎやかだそうよ? どんな雰囲気なのか想像もつかないわ。
命じられるままに嫁ぐとはいえ、せっかくだから楽しみたいと思っているの。人生、なるようにしかならないんだもの!
ところが。
――ダンッ! ガタンッ!
大きな音がしたと思ったら、乱暴に馬車が停まった。
座席から投げ出されそうになり、私は慌てて背もたれにしがみつく。
外からは悲鳴。そして扉がガチャガチャと鳴った。
「え?」
馭者かと思ったのに、扉を開けたのは知らない男。
外套とフードで人相がわからない。この人――。
――賊でしょ!!
ドンッ!
響く重い音。胸に焼けつく痛み。
「カ、ハッ――!」
口から血の泡がこぼれる。
賊の手には銃。硝煙が上がっている。
――やだこれ、私、死ぬんじゃない!?
胸を撃たれた私は、為すすべもなく倒れ込んだ。
意識が遠のく。
……ひどい、私まだ二十歳よ?
これからお嫁に行き、末永く幸せに、てところだったのに運がないったら。
ま、会ったこともない子爵家の息子、が相手だ、ったん、だけど――――。