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46話 居場所

「シャーロットよ、ご苦労であった。クロード、お前は良い家族が出来たのだな」

 と、お父様。

「そ、それは……!」


「私がお前をこの国に送ったのは、女性に対する礼儀を身に着けてほしいからではない。お前の本当の居場所がどこなのか、それを見極めてほしかったんだ」

「どういう……ことでしょうか」

 クロードは首を傾げる。


「お前は真面目すぎるあまり、あのまま城にいては普通の人としての幸せを知らないままに、魔道の研究に生涯を捧げてしまうのではないかと危惧していた。そのため、女性に対する礼儀と称して、マルクス国王陛下に助けを求めたのだよ」


 ここで、お父様に替わり、お母様が続きを話す。

「この国の女性と接することで、あなたが幸せを感じてくれればそれでいいと思っていました。ですが、マルクス国王陛下は私たちの意図を正確に読み取って下さっており、まずは男性、そして王族のみのクランへと紹介をしてくださったのです」


 王族のみのクラン!? 突然のネタバレに声を上げそうになるのを必死に抑える。

 そんな私の努力は(つゆ)知らず、お母様は話を続ける。


「クロード、あなたの居場所はエルセイジ王国ではなく、クラン黒狼の牙であると私は感じています。あなたのためにこんなにたくさんの人が、あなたを見守って下さっている。なにより、あなたのあんな嬉しそうな顔は初めて見ました。クロード、国に帰るか、黒狼の牙に残りたいか、あなたの率直な意見を聞かせてください」


「私は……黒狼の牙に残りたいです……」

 クロードが静かにそう言うと、周りのみんなは顔を見合わせて微笑んだ。


 もう一度お父様が口を開く。

「エルセイジ王国の時期国王には、予定通りお前の兄であるリチャード第一王子を指名する。ちなみにシャーロットは、この度リチャードと婚約をした」


「ええ~!」

 と、一同。


「ははは、皆すまないね。マルクス国王陛下にクロードの婚約候補と伝えてくれとお願いしたのは私だよ。万が一クロードが不幸そうなら、連れ帰って国王を誰にするか再検討しなくてはならなかったが、それももう必要あるまい。クロード、私はお前をブライリアント王国への親善大使として正式に任命する。以後、両国の関係を最善に保つため尽力してほしい」


「父上……親善大使、謹んでお受け致します」

 クロードは立ち上がり、深く礼をした。


「試されてたのは、クロードじゃなく、どうやら俺らの方だったらしいな」

 レオンがそうコソッと耳打ちしてくる。

「うん、そうだね……マルクス様に騙されたね」

「だな。あいつ後でボコるか」

「それはだめ」


 そんな会話をしていると、虎丸さんも私たちの会話へと加わる。

「マルクスはさくら殿との練習とその後の反省会の光景を見て、これなら絶対大丈夫だと、そう判断していたようだ」

「あいつあん時から腹ん中では笑ってやがったな。やっぱボコるか」

「だからだめって」


 こうしてクロードのお家騒動は無事解決をしたのであった。


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