一戸建独立軍
一戸建て住宅が全て悪いわけではない。
古宮も昔実家は一戸建てであった。
今でも一戸建て住宅には何の恨みもない。
強いて言えば、政府の政策が悪いのか。
マンション集住法が施行された時、一戸建て住宅に住む者の反発はすごかった。
当たり前だろう。
住む場所を追われるわけであるから。
ただ、一戸建てを手放した者には、順次、その価値に見合った集合住宅が割り当てられていった。
大きく分けて三者に分かれた。
法律に素直に従って、順番に集合住宅に移って行った人々。
ただ、法律には従わずに、今も尚一戸建て住宅で暮らし続ける人々。
そして、法律に従わず、組織化し、マンションの追い出し行為や破壊行為を始めた人々。
古宮達が防衛を続けているのは、三番目の人々がいるからである。
パッ。パパラッ。
銃声がした。
古宮は、前線指揮所に向かった。
「どんな状況ですか」
管理人の中川さん。
「ここからだと分かりません」
「了解」
外のキャンピング指揮車に近付くと野々原が指揮をとっていた。
「まだ攻撃は受けていない」
とだけ言った。
フル装備で防衛線に近付く。
今日現場指揮を執るのは、101号室の佐々さん(ご主人)だ。
「どうですか」
「おそらくニューコーポ側かと」
古宮はそのままニューコーポに向かって防衛線をスライドした。
大外にCCAもいるので心強い。
パッ。
また乾いた銃声がした。
確かにコーポの方だ。
「新川さん」
指揮を執っている新川さんと田中さん見つけ呼んだ。
「北側からのようだよ」
「おそらく高速道路」
北側には道路や緑地を挟んで高速道路が通っている。
なるほど。
こちらのCCAもフル装備だ。
ほとんどが小銃、アサルトライフルだ。
日本製とアメリカ製が多い。
たまにAKもある。
パラララララッ。
こちらに撃ってきた。
人影が2つ。
どちらかと言うと威嚇ぽい。
皆車両や建物の陰に隠れ、様子を見た。
新川「屋上班」
屋上からまず、サーチライトで照らす。
相手も隠れ様子を窺う。
「少し威嚇しますか」
「うん」
パッ。パッ。パッ。
屋上班の二名が、威嚇射撃をする。
パララッ。
反撃。
急に多数のエンジン音が聞こえた。
まあまあ台数がいそうだ。
走り去る音が聞こえた。
いなくなったようだか、油断はならない。
警戒段階を一段下げることとし、古宮は一度戻った。
野々原も近くまで来ていた。
「様子を見に来たみたいね」
「おそらく。何か情報を入手して来たのかもですね。この辺りだと基本的には一戸建独立軍だと思います」
「独立軍は最近武装化を進めているから気をつけないと」
確かに。
目を付けられたとすると、厄介だった。