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合流

アレリアはとりあえず、ジルと一緒に来た道を戻る事にした。ここにいても仕方ない。

瞬時に現れたハルは、去り際も姿はどこにも見当たらない。どうやってここまで来たのか謎だ。


「ジルは豹になってたけど、道わかる?」

「なんとなく」


今は人間だけど、変身してる時の名残があるのかな


きょろきょろしながら道を探る動作がどこか動物っぽい。ふふっと笑うとジルがこちらをちらりと見て、微かに笑う。


「リアが笑った」

「ええ…?そんな、珍しくもないでしょ?」


不思議そうに首を傾げると、ジルは頭を振った。


「最近はあまり笑わなかった」

「そうかな?そうかも…」


帝国にいたことを思い出して少しだけ気分が落ち込む。決して辛いばかりではなく楽しいと思える事も沢山あった。けれど…


「俺が戦場で思い出すリアの顔はいつも笑ってたから、見たかったんだずっと」


それを聞いて嬉しさが沸き上がったが、同時によくわからないむず痒さも感じた。何だか良い歳した姉弟で褒め合ってるような気恥ずかしさだ。


ジルも大きくなったんだからお姉ちゃん離れしないとね…


「時間がかかりそうだ。リアがいるからもう一度変身しろっていうなら出来そうだけど」


アレリアは無言で手だけで制した。街道でもう一度真っ裸になるのは勘弁して欲しい。


「そういえば、ジルはいつから豹に変身できるようになったの?」

「う…ん?十三くらいかな。初めて戦場に出た野営で、夜ひとりでいたらリアに会いたくてたまらなかったのは覚えてる」


三大貴族はかなり幼い内から交流があり、その頃はハルやジルとすでに打ち解けている仲だった。

あの頃の思い出に浸っていると、いきなりジルから引き寄せられて抱き込まれた。


「え!?」

「誰かいる」


と言われても、ゆっくり気配を探ってもアレリアにはわからなかった。しばらく待っていると、遠くの茂みから人の頭を見えた。


「あっ」


相手を認識したアレリアは、ジルの制止を振り切って茂みから飛び出した。


「ラエル!」


その声にラエルの方も気づいたのか、少しだけ安堵した表情で近づいてきた。


「お前な~無事なら無事って言っとけ!」


そんな無茶な


けれどそんな無茶ぶりも懐かしく感じるほど、もう一度会えたのが嬉しかった。


「探しに来てくれたの?もうみんなで先に言っちゃったかと思った」

「置いてったら二度と会えないだろ。お前どんくさいし」


それは間違いない


すると話してる途中で、ラエルが警戒するようにアレリアの後ろに目線を移した。

足音もなくアレリアの後ろに立ったのはジルだった。


「誰だ」

「それはこっちの台詞だろうが」


じっと無言で睨み合う二人を交互に見た。え、なにこの雰囲気?

次の瞬間、同時に殴りかかった二人に目を疑う。


「ええ!?何やってんの!」


ラエルの方は武器を持っていたが、丸腰のジルを見て素手を選んだようだ。こういう所はどこか冷静なのに、行動がおかしい。

拳は二人とも直撃は避けたが、体格からしてラエルの方が受け身をとりにくそうだった。


「男には目で喧嘩売られる時があんだよっ」


意味わからないから!二人とも野性味がすぎる!!


「ジルもやめて、ラエル達がいたからここまで来れたんだよ」

「ならリアをこんな所まで来させた張本人じゃないか。消そう」

「そんな事したら二度とジルとは口聞かないから」


するとジルはぴたりと動きをとめて、アレリアをじっと見る。どうやらわかってくれたらしい。わかってくれたよね?


「ラエルもごめん。ジルは悪い子じゃないし、そのうち帰ってもらうから」


ジルが無言でいやいやしているが、見ないふりをする。先ほどまでの勢いは沈静化したのか、もうラエルに争う気はないようだった。


「…はあ、とりあえずジーク達と合流しようぜ」




獣道から出てくると、ジーク達は元の道で待っていてくれた。

そして、なぜか一人増えている事に不思議そうな顔をする。


「アレリアさんは何を拾ってきたんですか」


金を管理しているルイは、これ以上食費が増える事を歓迎しないようだ。


「えっと、幼馴染のジルと言って…」

「ジル?」


言葉を遮ったジークが、ジルをじろじろと見定める。


「もしかしてジルバー・フォン・ヘルシェベルク?なぜこんな所に?」


うん、それは私も思った…


しかしジルは無言で目線を外して答える気はないようだった。アレリアがジル?と促すと途端に口を開く。


「リアを連れ戻しに来た」


質問したのはジークなのに、なぜかアレリアだけをみて話す。ラエルにお前はこいつの翻訳係かと突っ込みが入る。


「私は戻らないって言ったよ?もちろんジルに力ずくで来られたら太刀打ちできないけどね」

「そんな事は…しない」


しゅんと落ち込みながらも、アレリアの意志は尊重してくれる。ジルの本質は素直で優しいのだ。だから実直なラエルとも気が合いそうだと思ったのだが、おかしいな?


「えーと?何なの?お前らもしかして付き合ってるとか?」


そしてそのラエルのあさってな発言に、アレリアもジルも目を丸くする。同時に二人の言葉が重なった。


「そんなわけない」

「ジルは弟みたいなものだよ」


言った瞬間にジルはえっ!?みたいな顔をした。


「ジルだってそうでしょう?何より私達がそんな関係になるはずないのは、帝国人なら誰でも知ってる」

「どういう意味?」


ジークが興味深そうに聞いてくる。彼はどちらかというと知識を求めるタイプなので、ハルと気が合いそうだなと思った。


「三大貴族は配偶者に同じ家門の者を選ぶのが当たり前なの」

「血統を重んじるという事?でも人の気持ちなんてそう理想通りはいかないだろう。直系が政略結婚を強いられるのはまあわかるけど、末端の者まで?」

「ええ、仮に他の家門と結ばれようとしたら駆け落ち同然になると思う。今までの地位や名誉を捨ててね」


あれ?これって言ってもいい情報よね


特に規制されているわけでもないので普通に話してしまったが、もしかしたら他国では馴染みのない話かもしれない。元々大国のトップ貴族の情報は知られてない事の方が多い。西の人間からしたら、公国の情報がほぼ入って来ないのと同じだ。


「へえ、興味深いね。それがおかしいとも思わないのも含めて。貴重な帝国の家門の二人がいるんだから是非話を聞いてみたいよ」


今まで特に反発もなく続いてきた事柄なので特におかしいと思わなかったが、実際に口に出すと違和感があった。

そして怪しい笑みを浮かべるジークに、眉根を寄せているラエル、そして食費が増える事に戦々恐々しているルイに、なぜかジルが加わる事になった。

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