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本の中の少女は白の夢を見る  作者: ぶちの野良猫
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夢の中 その1

 気が付くと歩は知らない部屋に立っていた。6畳くらいの部屋だろうか?右側の隅にはきちんとたたまれた布団が2組。その横には学習机とカバンがかけられた椅子。机の上には可愛いイラストが表紙を飾る小説が1冊置かれている。左側の壁には3段の引き出しの洋服ダンスが2つ。1つには子供の手造りの工作品だろうか?絵や動物の折り紙などが飾られ、もう一つには化粧道具が入ったかごの横には写真立てが。写真には5歳くらいの女の子を中心に笑顔を浮かべる男女。なぜか女性の顔はしっかり写っているものの、男性の顔だけがぼんやりとして良くわからない。部屋を仕切っている襖を開けると。部屋の中心に置かれたダイニングテーブルの先に見えるキッチンでは、女性が何か調理をしている。

「あ・・・」

まさか人の住んでいる家に迷い込んでいるとは思っていなかった歩は、思わず声をあげてしまう。

「だだいま、お母さん買ってきたよ」

キッチンの横にある玄関ドアから中学生くらいの女性が、手に持ったレジ袋を振り回しながら入ってくる。

少女と目があった気がした。

これは言い訳の余地はないよな。いくら記憶がないからと言っても、人の家に入り込んでいたなんて。

しかし少女がこちらに気が付く様子はなく、冷蔵庫に買って来た物をレジ袋ごと入れると、乱暴に冷蔵庫の扉を閉めると、冷蔵庫の扉に引っ掛かりけられていたカレンダーが左右に揺れた。

あれ?このカレンダーなんかおかしい。今日は平日のはず・・・西暦が10年前になってる、そっか、これは咲さんの記憶。また入り込んでしまったんだ。記憶を共有しているとはいえ、もっとほかに方法はないのだろうか?人の記憶をのぞき見する趣味はないんだけどね。そう思いながら居間からキッチンに移動し、二人の会話が聞こえる位置へ。

「メイちゃんたち、まだかなぁ?」

母親らしき人物は来客用の料理だろうか、オーブンの扉を開け、中から天板を取り出してガステーブルの上に置くと、壁の時計を見る。

「もうそろそろじゃないかな?14時には来る約束だからね」

「今日はどこにでかけるの?わたし、本屋さん行きたいな」

「そうね、お話が終わったらね。今日はね咲にも聞いてほしい大切なお話があるのよ」

「ふーん。そうなんだ」

チャイムの音が鳴る。

「来た」

咲が慌てて玄関に走り扉を開ける。扉の外には細身の体に、おろしたてのような背広を着たメガネの男性と、小学生くらいの子供が男性の足にしがみついていた。

日向ひなたさんこんにちは」

「ああ。咲ちゃん、こんにちは。これ、メイ。挨拶は」

男性がそう言うと、メイとよばれた子供は恥ずかしそうにますます男性の後ろに隠れてしまう。

「ごめんね、何度も遊んでいるのにね、恥ずかしがり屋過ぎるよね」

「そんなことないですよ。どうぞ入ってください」

日向と呼ばれた男性は、キッチンの横に置かれたテーブルに案内されると、キッチンに向かって二人は座る。咲と母親は手早くお茶や先ほど焼いていたクッキーをテーブルに並べると、対面するように席についた。

「このクッキーおいしい」

「これ、メイ。いただきますは」

口にいっぱいクッキーほばるメイ。その様子を笑顔で見つめる日向。仲の良い親子だなと歩は思った。

「僕から話したほうがいいかな?」

咲の母親と


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