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8.初仕事 やっと貰えた 初報酬

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「まーじかー……」


 色々尾ひれの付いた衝撃的な噂の内容に、私はカウンターにべったり顎をついて倒れ伏していた。


「だ、大丈夫ですか?」

「うんー……大丈夫ー……」


 心配して声を掛けてくれたニーナさんに、顔を上げて返事をしてから、よっこいしょと身体を起こす。とりあえず、誤解を解かないと、話が進みそうにないよね。


「えーと、ですね……まず、魔女って言うのは、正直、この格好からついた名前だと思うんですよね」


 と、自らの格好――濃紺の魔術師の帽子(ウィザーズハット)外套(クローク)を示しながら説明する。まあ、これでホウキじゃないけど、杖に乗って飛んでいれば、魔女に見えなくはないよね。


「それから、いま伺った噂は正直、尾ひれが付きまくっていますね。――まあ、王都まで伝わる途中で、吟遊詩人がウケ狙いで誇張しまくったんでしょうけど」

「そ、そうですよね!? 首を切られて死なない人間なんていませんよね!?」


 同意を求めるニーナさんに、複雑な笑みを浮かべる私。うん、首を切られて死なないのはホントなんだ。理由は知らないけど、勝手に回復するっぽい。


「ともあれ、私自身はただの魔術師で、今回が初冒険という、たかだか16歳の女の子の冒険者に過ぎません。ニーナさんも、そんな感じで扱って貰えると嬉しいです。呼び方も、魔女じゃなくて、名前で、ね」

「はい、そうさせていただきます。動揺してしまって、ごめんなさい」


 よし、なんとか最低限の誤解は解けたようだ。そこで私は、冒険談を語ってから中断していた、依頼報告の続き――つまり、報酬の受け取りと、ランク確認――を再開するよう、お願いする事にした。


「それじゃそろそろ、依頼報告の方に戻りません?」



              ◇   ◇   ◇



「では、いよいよお楽しみの報酬のお支払いですね!」


 ようやく調子を取り戻したニーナさんは、カウンターの下からじゃらじゃら音を立てている革袋を取り出して来た。


「こちらが報酬の銀貨100枚です。この場で数えてくださいね。後から足りないって言ってもダメですよ?」


 カウンターの上に広げられた銀貨は、クリスとマリアによってあっと言う間に数えられ、それぞれの取り分を公平に仕分けられていった。

 助っ人で入ってくれていたエマさんとリアムさんとは、頭割りの――実際には少しだけ安い――二人で銀貨32枚という約束になっていたので、その分をまとめてお渡しする。

 ちなみに、私たちの取り分は残りを4等分だから、一人銀貨17枚と言う事になった。まあ、ざっくり言って、2週間くらい過ごせる金額かな?


「エマさんもリアムさんも、ありがとうございました」


 依頼料を渡しながら、エマさんとリアムさんに頭を下げる私たち。


「ああ、今回の旅は色々面白い物を見せて貰って、楽しかったよ」

「正直言って、自分の常識が根底から覆されたわ。魔術の可能性はまだまだ残されているって分かったのは、本当、あなたに逢えて良かったと思う」

「こちらこそ、冒険者の心得、ありがとうございました!」


 エマさんとリアムさんも、にこやかに私たちと握手を交わしたのだった。

 と、一段落ついた所で、改めてリアムさんが口を開く。


「で、本来なら、初心者育成支援クランである"(あかつき)明星(みょうじょう)"として、君たちをクランに勧誘するところなんだが……俺たちの支援はもう要らんよな?」


 特に冒険初心者の場合は、こういったクラン、つまりプライベートの互助組織に入って支援――訓練や手伝いと言った人的支援の他、割安な装備、消耗品の支給も含む――を受けるのは、不安定な立ち上がりの時期を生き延びるのに有用である事はよく分かる。

 でもまあ私たちの場合は、初体験の今回こそ、念のためにお手伝いをお願いしたんだけど、本来ならば十分な戦力は持っているからねぇ。

 私の表情を見て、支援は要らないのだと感じたのだろう。リアムさんは私の返事を待たずに、そのまま言葉を続けている。


「どちらかと言えば、逆に新米共への支援の方をお願いしたいくらいではあるんだが……君たちの場合、戦力としては問題なくても冒険者としての経験は浅いから、これも不適切ではある気がする。それに、せっかく冒険者になったんだから、しばらくは組織に縛られずにやってみたいだろ?」

「そうですね、お誘いは嬉しいんですが……」


 私の返事に、リアムさんは笑みを浮かべながら大きく肯いた。


「まあ、だろうな。――ともあれ、うちのクランの扉はいつでも開いている。別に加入とかに関係無く、暇なときにでもぜひ遊びに来てくれ」

「はい、ぜひ!」



              ◇   ◇   ◇



 リアムさん、エマさんは、私たちと挨拶を交わすと、再び彼らのクランハウスに帰っていった。

 私は、もう一つ確認しなきゃならないことが残っている事を思い出し、ニーナさんに声を掛ける。


「あ、そうだ、ニーナさん。冒険者のランクって、今回の依頼でどうなるんです?」


 冒険者のランクは、すなわち収入に直結するので、やっぱり上げられる物なら上げておきたい。

 ちなみに、この王都の冒険者組合におけるランクの定義はSからGの8段階あって、同ランクの冒険者達が1パーティを組んだ時、どの程度のモンスターを安定して倒せる事のかを示している。最初のGは無条件だけど、ゴブリンの集団を倒せるようならFになれると言うわけだ。そして最後のSは、ドラゴンを倒せる事が条件になっている。

 個人に対するランク評価ではあるんだけど、それが個人の強さを示すわけじゃ無いよ。でないと、個人戦闘力は乏しい後衛職や、特殊技能に価値がある斥候は不利だからね。あくまでパーティを組んだ時の価値を示しているわけ。


「はい、それじゃ、ランク確認作業を始めましょうか」


 ニーナさんは、私たちの台帳を取り出して更新の準備を始めたようだった。

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