表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/36

2.初ダンジョン 中には誰が いるのかな

 ゴブリン退治のため、遺跡の側にある洞窟を訪れた私たち一行。ところがそこで、ゴブリンではなくゴブリンゾンビと遭遇してしまった。

 ゴブリンゾンビそのものは楽な敵であるんだけど、それは死霊術師(ネクロマンサー)の存在を意味している。しかしそれでも、今後起こりうる危険を解決するために、私たちは洞窟を調査する事を決めていた。


 洞窟の入り口から入ってしばらく進むと、途中で三叉路が現れた。直進と、右方向に道が分かれている。

 私たちは分かれ道の中央で、ひそひそ声で相談を始めた。


「右が脇道っぽいから、右から行ってみようか」

「せやな」

「もう1本の道から来る可能性もあるので、最後尾のリアムさんは特に後方警戒をお願いします」

「ああ、そうだな」


 と言う訳で三叉路を右に曲がり、進撃再開。



              ◇   ◇   ◇



 少し進むとすぐに、少し広くなった部屋にぶつかった。地面には寝床らしきボロ布やムシロが転がっているが、それに寝ている者はなく、ぼーっと突っ立っている小さな人影が5~6体あるだけだった。

 そして、私たちの明かりが彼らに当たった途端に、彼らはゆっくりこちらを振り向いて戦闘態勢を取る。ゴブリンゾンビだ!


接敵(エンゲージ)! 前衛三人は前進、エマさんは待機。リアムさんは後方警戒継続で」


 私の指示により、全員行動を開始する。

 うーん、部屋の中、ちょっと暗いかな?


「"マナよ、光となりて我が前を照らせ"――照明(ライト)


 私は懐から小石を取り出し、"照明"をそれに掛けて部屋の中に放り込む。これで見やすくなったと思う。

 必要な仕事を終えた私は、前衛三人の戦い振りを観察し始めた。


 最初に攻撃したのは剣士のシャイラさん。右手に構えた極東の村正(ムラマサ)とか言う打刀で切りつけると、あっさりゴブリンゾンビの首が飛び、そいつはそのまま倒れ伏す。うん、まったく心配なさそうだ。


 次は神官戦士のマリア。


「そお~れぇっ!」


 巨大な両刃斧を、力任せに横にぶぅんと振り回すと、ゴブリンゾンビは見事に胴体から真っ二つに。


「邪悪は許しません!」

「マリア、頭を!」


 どやぁと、見得を切っているマリアに、私は警告を発する。


「え……ほわっ!?」


 マリアの足下に、上半身だけとなったゴブリンゾンビが這いずり寄ってきていた。慌ててバックジャンプで距離を取り、今度は斧を縦に振るって頭ごと真っ二つ。これでようやくゴブリンゾンビは動きを止めたのだった。


 さて、斥候のクリスは、と。

 ゴブリンゾンビが反応すら示す前に、素早く後ろに回り込んでいる。そして、ゴブリンゾンビの喉笛を短剣で一閃。


「ほい、一匹目!」


 が、しかし、そのゴブリンゾンビは喉笛に巨大な切り傷ができたまま、ゆっくりとクリスの方を振り向こうとしていた。――生物だったら即死なんだろうけど、ゾンビじゃ死なないよね。


「うわ、キモっ!?」

「クリス、後ろに下がって! シャイラさん、お願い!」

「承知!」


 こうしてゴブリンゾンビは、哀れ首を飛ばされたのだった。


 残ったゴブリンゾンビたちは、シャイラさんとマリアの手によってあっさり一掃された。――ちなみにマリアは、先程の失敗を踏まえ、脳天から足下まで縦に真っ二つにすると言う戦法に変更している。それはそれで、ちょっとグロかったよ……


「次は、投石帯(スリング)に石入れて直接殴った方がええかなぁ?」

「うーん、頭潰せると思うけど、スリング、汚れるよ? 腐汁が染みこむと洗いづらいし。余程でない限り、シャイラさんとマリアだけで充分じゃないかな」

「せやなぁ」


 クリスは返事しながら、念のため周辺の壁を調べている。


「さすがに、完全に自然洞窟やな。隠し扉って感じはなさそうやわ」

「それじゃ、三叉路に戻って直進、かな」



              ◇   ◇   ◇



 三叉路まで戻り、今度は奥に向かって真っ直ぐ進む私たち。しばらく歩いていると、また広い部屋に遭遇した。

 今度は先ほどより少し広く、奥の壁が煉瓦造り――つまり、人の手によって作られた壁になっている事に気がつく。そして何より、その壁に開いた亀裂から明かりが漏れていて、部屋が薄ぼんやりと明るくなっていた。

 私たちは部屋の中から気付かれないよう、入り口の物陰から慎重に中を観察した。


 やはり先ほどと同じように、ぼーっと数体のゴブリンゾンビが突っ立っている。たぶん、こちらに気がついたら攻撃してくるんだろう。でも、ゴブリンゾンビ以外の生物、死霊術師(ネクロマンサー)らしき姿は見えない。

 私たちは洞窟を少し戻って、小声で相談を始める。


死霊術師(ネクロマンサー)、いるとしたら壁の奥だと思う?」

「まあ、そうだろうね」


 と、シャイラさん。


「ゴブリンゾンビを誘導して、廊下に引きずり込んで戦う事もできるけど、こんな狭いところじゃ、もし死霊術師(ネクロマンサー)に気付かれると一網打尽だよね。となれば……」


 私は爪をかみながら少し考える。


「――シャイラさんとマリアは、まず正面からゾンビを倒す。そして、クリスとリアムさんは、壁際を迂回して亀裂の左右に立って、もし死霊術師(ネクロマンサー)や新手が亀裂から出てきたら、側方から攻撃する。私とエマさんはそれぞれ壁際の中間地点で待機して、様子をうかがう。――こんなところかな?」


 みんな同意して、作戦の準備を行う。

 リアムさんは私の肩をぽんと叩いて「本当に初冒険なのか? いい指揮だと思うぞ」と言ってくれた。


戦闘開始(アクション)!」


 私の合図で行動開始し――ゴブリンゾンビたちは瞬殺されたのだった。



              ◇   ◇   ◇



「さて、問題はこの中かな」


 洞窟の壁にできた亀裂を確認してみたが、どうも断面を見ると比較的最近崩れたように見える。この間あったと村長が言っていた地震で崩れたのかもしれない。

 中を覗いてみると、正面は踊り場になっていて、上への階段は瓦礫の山で埋まっていた。そして、右に短い道があって、その突き当たりに木製の立派な扉がある。壁には恐らく魔法の力で動いているランタンが掛かっていて、廊下を明るく照らしていた。


 クリスが先行して進入し、突き当たりの扉の周りを調べ始める。

 ――すると、中から声が聞こえてきた。ただそれは、金属が(きし)むような精神を逆立てる声だった。


『盗賊か? 罠なぞ無い。扉を開けたまえ』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2022年11月現在、新刊3本同時進行キャンペーン実施中です。
本作と以下2本を第30話頃まで同時進行で掲載しています。そしてその後、最も推されている小説を重点的に継続し、イラストの掲載も進める予定です。
他の小説もぜひご覧下さい!

banner_novel2.jpg
banner_novel3.jpg

以下は既刊の小説です
banner_novel1.jpg
script?guid=on

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ