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22.あの人が 知り合いだったの 王様と!?

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※今回は都合により少し早めに投稿しました

 私はCランク冒険者に上がったと同時に下った指名依頼のため、執事のルーカスさんを(たず)ねて一人、王城を(おとず)れていた。


「それでは、こちらで少々お待ち下さい」


 通用門の衛兵さんに用件を伝えると、私は応接室に案内された。しばらくの間、ぼーっと待つしかなかったのだけど、思ったより早く、応接室の扉がノックされたのだった。


「あ、はい、どうぞ!」

「邪魔するぞ」


 てっきりルーカスさんかと思ったら、違った人が入ってきていた。謁見の時の礼装でも、変装した姿でもない、高級そうな普段着を着ていたけど、入ってきたのはまごう事なき、国王のロドリック陛下その人だった。


「陛下!?」


 私は慌てて起立して礼をしようとするが、王様は手で抑えるような仕草をする。


「ああ、この格好は気にするな。ここには他に誰もおらんからな、冒険者のルディがここにいると思って構わん」


 そして王様は私の対面の席にどっかりと腰を下ろした。

 いや、そうは言われても、やっぱり今の王様の格好を前にしたら、冒険者姿の時と同じ対応は難しい訳で。私はおずおずとなるべく行儀良く腰を下ろす。


「あ、あの、ルーカスさんは?」

「流石に、オレの名で呼び出すと目立ちすぎるからな。とりあえず名前を借りたまでだ。ただ、公務の間に抜けてきただけだから、余り時間が無い。すまんが手短に済まさせて貰うぞ」

「は、はぁ」


 どういう反応を示したらいいのか分からない私を尻目に、ルディさんは腕を組んで話し始めた。


「まず、お前さん達の処遇について、だが。すまんな、王都に呼び出して以来、きちんと説明をする機会がなかった」


 確かに、わざわざフライブルク(地方都市)から呼び出された挙げ句に、謁見一つでそのまま放り出されて、冒険者にでもなれば?、みたいな感じだったからねぇ。


「仕官させずに、冒険者として送り出した事だが……外交が絡んでいてな。まずは野に放たざるを得なかったのだ」


 王様が語ったところに寄ると、つまり、私という強大な破壊力を持つ人物が突然、この国の指揮下に戦力として加わると、周囲の国はそれに脅威を感じて、連合して敵に回る可能性すら考えられたそうだ。なので、まずは指揮下に無く、行動を抑えることができない、と言う体裁を整えなければならなかったんだとか。


「だからお前さんは、山を割ろうが谷を埋めようが、罪に問われたり賠償請求される事はないぞ」

「それにしても、いささか乱暴に過ぎませんか? 仮に私が、気分のままに街を爆撃しまくっても、それを罪に問うことは無いって事ですよね?」


 あきれた表情の私の質問を聞いた王様は、にやりと笑って返事した。


「でも、やらないだろ?」

「それはまあ……やりませんけど」


 そりゃそうだ。悪人をアジトごと吹っ飛ばす事に良心の呵責は覚えないけど、一般市民は、ねぇ?


「お前さんを信用しているからさ」

「信用って……根拠、あるんですか?」


 私の質問に、王様は少し腕を組んで考えた後、あきらめたように口を開く。


「うーむ……仕方ないな。言ってしまおう。お前さんがリチャード・ロンに育てられたから、だよ」


 王様から出た意外な名前に、私は驚きを隠せなかった。



              ◇   ◇   ◇



 リチャード・ロンさんは、フライブルクで高名な錬金術師で、私と妹のアレックスとは、血のつながりはない。でも、私たちを育ててくれた人だ。


 私が4歳の頃、住んでいた村が邪教集団に襲撃されてしまい、生き残ったのは私と妹のアレックスの二人だけになってしまった。そして私たちは、事件の直後に村を訪れたリチャードさんに拾われて、16歳になる今まで彼の館でお世話になっていたというわけ。

 それにしても、なんで王様にそこまで信頼されているんだろう?


「え……リチャードさんをご存じなんですか?」


 不意に出た名前に、思わず問い返した私に対して、王様は笑みを浮かべながらあっさりと答えた。


「ご存じも何も、オレが冒険者だった時の元パーティメンバーだ。魔導具マニアの人嫌いは変わってないだろ?」

「へ!?」


 私は驚きの余り腰を浮かす。


「オレがいわゆる勇者的な事をやっていたのは知っているだろう? その頃からの付き合いだ」


 今から25年前のこと。この国は南にある"混沌の大陸"からの侵攻を受けた。

 混沌の大陸は土地が痩せていて亜人が多く、その名の通り、弱肉強食で小さな部族単位が争う混沌に満ちた土地だ。しかしその時は大皇を名乗る指導者が総ての部族を統一し、こちら側に侵攻してきたのだ。

 その頃の王様は三男坊で王位を継ぐことは考えられていなくて、地位を隠して冒険者として生活していた。でも結局、王様を含んだパーティの活躍により、彼らの侵攻を頓挫させたんだそうだ。


「え、でも、25年前ですよね?」

「そうだな」

「リチャードさんの見た目、いいとこ30前ですよ!? そりゃまあ、私が物心ついた頃から変わってないんですけど」

「ああ、あいつ、あの頃から歳食ってないんだよな」


 王様は頭を二、三回掻いた後、腕を組んでそのまま話を続ける。


「まあ、なんとなく理由はわかるが、不確かなことは言いたくないからな、詳しくは本人に聞いてくれ」


 そして話を変えながら、更なる一撃を加えてきた。


「あとは、お前さんが――怒るなよ?――正義の味方(ハニーマスタード)をやってたからかな」


 それを聞いて私は椅子から転げ落ちかけた。


 そう、私は最近まで、正体不明の謎の魔法少女「ハニーマスタード」に変装し、街の正義を守るために活動していたのだ。

 でも、今はやってない。邪教集団との一件で正体バレちゃったし、変装していたのは、私自身が強力な魔法を使える事を隠してたのもあったけど、もう隠す必要はなくなったから。


 第一、魔法少女って言うのは、子供の頃のアイデアだったし、辞めた今から思うと、正直……恥ずかしい! あの頃の話を持ち出されると、部屋の中をゴロゴロ転げ回りたくなるくらいに! ほら、14歳くらいの頃によくなる流行病(中二病)みたいな奴!?

 それにしても、王様まで魔法少女(ハニーマスタード)のことを知ってるのか……ま、まあ、フライブルクの人間なら誰でも知っているんだから、不思議じゃないんだけど。


「わ、分かりました。もうそれ以上言わなくて結構です」


 かろうじて座り直して頭を抱える私だった。

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