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19.盗賊の 血しぶきと共に クリス舞い

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「ほな、いよいようちの番やな!」


 お忍び中の王様のルディさんに対して冒険談を語っていた私たち。トリとなったクリスが、スツールの上で胸を張っていた。


 彼女の名前はクリスティン、通称クリス。外見は北方系で、ストレートのプラチナブロンドに透き通るような肌、青い瞳を持ち、()()()()()()()()妖精のように可愛い女の子だ。喋るとバリバリの西方系訛りで、性格もそっち寄りなんだけどね。

 盗賊ギルドマスターのお嬢で、隠密行動や解錠などの技能を習得している。冒険者としては斥候とか軽戦士とかの扱いになるのかな。装備は短剣と、割とタイトでミニの真っ黒なソフトレザー、そしてフード付きのマント。背も高いし、出る所も割と出ているし、本来ならセクシーなんだろうけど、内面的にその手の要素が皆無だから、そういう雰囲気は残念なくらいになかったりする。


 私たちの冒険談も三話目となってきたからか、目を引く容姿のクリスが話し始めたからか、ルディさん以外の聴衆も増えてきたようだ。拍手が出たり指笛を吹かれたりして、更にクリスのテンションが上がってきたように感じる。


 そしていよいよ、クリスの冒険談が始まったのだった。


「とある商人を護衛してイレルダまで行っていたうちら、その帰路の話なんやけどな――」



              ◇   ◇   ◇



 イレルダからの帰路は、別の村々に立ち寄りたいとの事で往路とは異なる道を通ることになった。道中、特に問題は起きていなかったんだけど、3日目に低い山を越えているところで、やっぱりそれは起きてしまった。

 ぐねぐね曲がる峠道を荷馬車に同行して進んでいる途中、最初にそれに気づいたのはクリスだった。


「――これは、()よるな」


 次いで、シャイラさんも目を細めてぼそりと呟く。


「ああ、なにかちりちりしたものを感じる」


 ちなみに私にはさっぱり分からない。マリアも同じようだ。


「ま、たぶん、盗賊やわ。もし、せやったら、こないだアニさんから借りたアレ、試してみてもええかな?」


 クリスの提案に、私は少し考えてから返事する。


「う~ん。まあ、弱そうだったらね」

「了ー解。楽しみやわぁ。はよ出てこんかな」


 なんて言っているうちに、道幅が若干広くなった場所を通りかかったときに、脇から飛び出してきた人影があった。


「ひゃっはぁっ! 待て待てぇ!」

「おらぁ、ここで止まりやがれぇ!」


 私たちの進路を塞ぐように出てきたのは予想通り、薄汚れた不揃いの革鎧を着た盗賊共だった。全員徒歩で、荷馬車の前方に10人ほど、半包囲するように飛び出してきている。


「ひゃあっ!?」


 荷馬車を操っていた商人さんは、慌てて荷馬車を停車させる。

 少しだけ立派な装備――でもやっぱり薄汚れた小札鎧(ラメラ―)――を身につけた男が一歩前に踏み出してきた。ま、親分なんだろう。


「おうおう、俺たちの縄張りをタダで通ろうってんじゃないだろうな! 命が惜しければ、それなりの物を置いていって貰おうか!」


 そして全員の顔をじろりと見渡してから、下卑た笑い顔を浮かべる。


「護衛が居るようだが――女子供じゃねぇか。そいつらでも構わんぜ?」

「親ぶぅん、二人は上物っすけど、あとの二人はちーと早過ぎゃしやせんかね?」

「違えねぇ。ま、世の中にゃ、こんなちんちくりんが好きな物好きも居るって事よ」


 なんて言いながら笑い出す盗賊ども。ちなみに、私たちは同い年の四人組パーティ。上物二人と発展途上の二人がどういう配分になるかは、まあ、そりゃ、分かる、分かるけどね?


「――さ、とっとと降伏すれば痛い目は遭わないが、どうするね?」


 親分の降伏勧告に、私は右手に持った杖でかつんと地面を叩き、満面の笑みを浮かべて言い放った。


「地・獄・に・落・ち・ろ♪」

「ま、そうだろうな。――仕方ねぇ。少々痛い目に遭って貰おうか!」


 親分の命令に応じて、手下共は抜刀した小剣や長剣を片手に、じりじりとこちらに迫ってきはじめた。

 私は周囲の様子を素早く確認し、頭の中で素早く作戦をまとめる。――正直、この馬鹿どもを魔法で吹っ飛ばしたい気分ではあったんだけど、クリスとの約束もあるしね。今回は彼女に頑張って貰おう。


「シャイラさんとマリアは防御重視で」

「分かった」

「了解です!」


 そして、懐から取り出した鈍く光るバングルを、そっと左手首に通しながら、クリスに指示を出した。


「クリスは遊撃。好きにやっちゃって。でも、手下一人は生かして残すこと。マナ全力使用解禁!」

「はいな!」


 最後に、背後の御者台に座っている商人さんに声を掛ける。


「そこに座っていて下さい。大丈夫、すぐ済みますよ」

「あ、ああ……」


 流石に盗賊共から目を切れないので、様子を見ることはできないけど、まあ、(うなづ)いているっぽいかな?

 そして私は、じりじりと迫ってくる盗賊達を見据えて、鋭い声で戦闘開始を告げたのだった。


「――戦闘開始(アクション)!」



              ◇   ◇   ◇



 前衛に立ったマリア、シャイラさん、クリスの3人には、それぞれ3人ずつの盗賊が向かってきていた。親分だけは少し下がったところで腕組みをして、余裕を持った表情で眺めている。


 それぞれ1対3ではあるんだけど、まあ、やっぱり、盗賊共の腕前は大した事がなさそうだ。左のマリアは両手斧を牽制がてら軽く振り回したりはしているけど、大振りにも関わらず盗賊どもに飛び込む隙を与えていない。中央のシャイラさんは、打刀を片手持ちとし、左手は盾を構えて、正統派の剣術で盗賊どもの攻撃を上手にいなしていた。


 さて右端のクリスの方は言うと、右手に短剣を構えて僅かに腰を屈めて立つ彼女に向かい、3人ほどの盗賊がニヤニヤ下卑た笑みを浮かべ、右手に持った剣をちらちら見せびらかすように振りながら近づいてきていた。

 クリスは、軸足をぐっと少し踏み込んだ。そして「フッ!」と言う小さな気合いの声と同時に、彼女の姿がふっとかき消すように消えてしまう。


「なにぃ!?」「消えた!?」「どこに――ぐっ」


 次の瞬間、クリスは一人の盗賊の背後に現れていた。彼女の右手の短剣は、すれ違いざまに盗賊の首筋を切り裂いていたようで、その盗賊は大量の血をまき散らしながら、バッタリと倒れ込んでいる。


 これは魔法なんかじゃない。彼女自身が身につけた、自らのマナによって瞬間的に身体能力を強化する、"ブリンク"と呼ばれる「必殺技」だ。彼女の場合は、フェイントと想定外の速度のジャンプの合わせ技で、相手の後ろに回り込む事が多い。


「こ、このっ!」「させ――がぁっ!」


 残り二人が慌ててクリスの方を向き直るも、再び彼女の"ブリンク"によって後ろに回り込まれ、また一人、血を吹き出しながら倒れていく。


「畜生! ちく――あぁあ」


 最後の一人はクリスの"ブリンク"を警戒して、左腕で首筋をかばいながら、右手の短剣を振り回していたが、がら空きの後頭部にうなじから短剣を突き立てられ、一瞬ビクンとなったものの、そのまま糸が切れたように崩れ落ちていった。


「これで、みっつ!」


 あとは一方的だった。


 シャイラさん、マリアと戦闘中に側背から襲いかかっている事もあり、抵抗する間もなく切り倒されていく盗賊ども。後方にいた親分が介入する間もなく、一人を残してあっさりと全滅していた。


「マリやん、そいつはよろ!」

「はぁい!」


 背中側に回ってガンとマリアの方に蹴飛ばされた盗賊は、素手になったマリアに組み伏され、哀れあっさりと絞め落とされてしまったのだった。

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