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14.友達と 魔術師ギルド 巡りかな

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 私は不死の王(アンデッドロード)、ヴィルヘルム・フォン・ホーエンハイムについて調べるため、魔術師ギルドの学長室を訪れていた。

 学長の命により、私を案内するために一人の学生が呼び出されたが、それは私の友人の一人でもあり、魔法を教えていた教え子でもあった、ジェシカだった。

 まあ、二ヶ月ほど前に魔術師ギルドに入るために王都に向かったはずだから、ここにいるのは不思議では無いんだけど。


 ともあれ、彼女の顔を見た私は、ぽつりと名前を漏らす。


「あ、ジェシカだ」

「え……あ、アニー! どうしてここに!?」


 突然の呼び出しに不安そうな表情で入ってきたジェシカだったが、私を見て驚きの余り目を丸くしている。学長さんも意外な展開に首を傾げているようだ。


「おや、同郷とは聞いていましたが、お知り合いでしたか」

「ええ、友人です」

「で、あれば、紹介は要りませんね。ジェシカくん。こちらのアニーさんには特別研究員として、当ギルドに参加していただく事になりました」

「は、はぁ……」


 いきなりの展開に、ジェシカは固まっている。学長さんは構わずに言葉を続けていた。


「本日は図書館にいらっしゃりたいとの事なので、ご案内をお願いします。それ以外の場所に関しては、アニーさんの希望があれば、それに従ってください。――よろしいですか?」


 にこやかな笑みを浮かべて、ジェシカに念を押す学長さん。ジェシカもようやく反応を示すことができたようだ。


「は、はい。承知しました」

「それでは、よろしくお願いします。アニーさんも、もし私に御用がありましたら、いつでもお申し付けください」

「はい、今日は色々手配いただき、ありがとうございました」


 私と学長さんは再び握手を交わし、私はジェシカと共に学長室を退出したのだった。



              ◇   ◇   ◇



 廊下に出て後ろで扉が閉まった瞬間、ジェシカは凄い勢いで顔を寄せてきた。


「アニー、これは一体どういうわけですか?」


 流石に部屋の目の前で大声を上げるわけには行かないから、あくまでひそひそ声での詰問だ。


「あはは……ま、まあ、とりあえず歩きながら、ね」


 廊下を歩きながら私は、これまでの経緯をかくかくしかじかと説明する。


「でまぁ、その不死の王(アンデッドロード)がヴィルヘルム・フォン・ホーエンハイムって名乗ったから、この図書館に何かないかと思ってね。――どしたの?」


 振り向くとジェシカは壁に片手を掛けて、がっくりと(うつむ)いていた。


「入学して二ヶ月、なるべく目立たないように地味に生活してきたところで、いきなり学長さんに呼ばれたから何事かと思いましたが……私の平穏無事な勉強生活は早くも終わりを迎えてしまうのでしょうか?」


 とりあえず、笑いながらフォローを入れておく。


「研究生扱いで目立たないようにするから、大丈夫だと思うよ? ギルド内で騒ぎを起こしたりしなきゃ」

「アニーの場合、それが心配なんですけど!」

「と、とりあえず、自重はするよ……ところで、ジェシカの方は?」


 話題を変えるため、苦し紛れにジェシカに近況を聞いてみる。


「まだまだ勉強し始めた所ですよ。早く一人前になって、冒険者にならないといけませんからね」


 その言葉を聞いて、私は小首を傾げる。まあ、色々あったからねぇ。


「ま、ジェシカならできるんじゃないかな。我が一番弟子よ」

「言っておきますけど、弟子だなんて名乗りませんからね!」


 うーん、つれないなぁ。



              ◇   ◇   ◇



 建物を出て歩いているうちに、広場で攻撃魔法の練習をしている一団が見えてきた。少し離れた石組みのカカシ相手に、"魔法の矢"や"火球"などの初歩的な攻撃魔法を使っているようだけど……


「ん、なにあれ?」


 低レベルの魔法の割に、形成される魔法陣がやたら大きく見える。"魔法の矢"の場合、普通だとだいたい手の平サイズの魔法陣なのに、あれだと2、3レベルは上の魔法のようだ。


「あれ? あれは審美派の人達です」

「審美派? なにそれ?」


 ジェシカの説明によると、魔術師ギルドは大きく二つの派閥があるという事だった。一つはジェシカが属している実践派。そしてもう一つが審美派。実践派はとにかく高レベルの魔法を使う事を目的としていて、平民出の学生と教官が多くそちらに属している。

 そして審美派の方はジェシカ曰く、


「無駄に魔法陣の形に拘ったり、本来の魔法のレベルより高いレベルの魔法陣を形成してみたり、実用的ではない事をしている、貴族や富豪の子息が中心の団体ですね」


 という事だった。まあ、実践派からすると、無駄な事に血道を上げているように見えるようだ。私はその言葉を聞いて、苦笑しながら頭を掻くばかり。


「あはは、まあ、彼らの気持ちも分からない事はないんだけどね……」

「そうなんですか?」


 怪訝そうな顔をするジェシカ。まあ、実は私自身2~3年前、そういう無駄な技術に凝る事にハマっていた時期があったんだよね。凝りすぎて、うっかり自分で本を書いてみた事があったくらいだ。保護者のリチャードさんが読みたいって言うから渡してから、はて、あれ、どうなったっけ……


「魔法陣を綺麗に描く技術を磨くには良い方法ではあるのよ。あとは、本来よりも高レベルな魔法陣を形成するって事は、それだけマナを練る練習にもなる事だし。確かに、高レベルの魔法を練習する事も大事だけど、そうやって足下を固めるのも、どちらも大事だと思うよ」

「アニーが言うのなら、確かにそうなのかも知れませんね」

「もちろん、低レベルに居座ってそこから上に行こうとしないのも問題なんだけどね。要はバランスかな」


 ジェシカは、私が言ったことを無言で噛みしめているようだった。



              ◇   ◇   ◇



「はい、こちらが我が魔術師ギルドが誇る、大図書館です」


 中庭を抜けて到着した図書館。それは元は礼拝堂だったのだろうか、大きな尖塔が非常に目立つ建物だった。

 中に入ると……そこは巨大な本棚で埋め尽くされていた。領主館(うち)の図書室もちょっとしたものだったけど、流石にこの規模じゃなかったなぁ。


「これは……凄いね」


 思わず呟いた私に、ジェシカは胸を反らせて自慢げに囁いてきた。


「何しろこの国一番の蔵書数ですからね! ……なので、いくらアニーでも、この中から目当ての本を手助けなしで探すのは難しいと思いますよ」


 図星を指された私は、顔をしかめて頭を掻くしかない。


「うーん、確かに、これは、住み込みで探すレベルだよね……」

「アニーからの依頼と言うことで、注目を浴びてしまうのを避けたいのでしたら、私名義で検索依頼を出してみましょうか?」


 ジェシカの提案を聞いた私は、しばし考え込んだ。彼に関わる書物が人の目に触れるリスクはあるけど、探す理由が分からなかったらまだマシなはず。いずれにせよ、一人じゃとても無理な物量相手だし、これは助けを借りるしかないなぁ。


「悪いけど……お願いできる?」

「問題ありませんよ。ヴィルヘルム・フォン・ホーエンハイムか、その一族が書いた、あるいは彼らについて書かれた本を探せばいいんですね?」

「うん、ごめん。わたしは歌う鷲獅子(グリフォン)亭と言う冒険者の宿に泊まってるから、何かあったら、そこに連絡頂戴」

「ええ、お任せあれ」


 ――ちなみにその後、時間が許す限り本を読み漁ってはみたんだけど、見事に成果なしに終わってしまった。

 うーん、これは長期戦かなぁ……

 ご覧頂きありがとうございます。

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