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13.ギルドにて 不死王調査の 種を蒔き

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 部外者の小娘のアポ無し訪問に対し、態度が悪かった受付のおっさん。そいつに王様名義の紹介状をドヤ顔で示してビビらせたりもしたけれど、ともあれ私は魔術師ギルドの学長室に案内されたのだった。


「"フライブルクの魔女"にお会いできて光栄です。学長のヨハン・ハーマンと申します」


 私が座った応接用のソファ、その対面に学長さんは腰を下ろしていた。王様と同じくらいの歳なのかな、五十代くらいの男性だ。魔術師ギルドの学長だけに、魔術師である事は間違いないんだろうけど、ローブではなくて仕立ての良さそうな平服を身に纏っている。そして学長さんは、白く染まった髪に人の良さそうな笑みを浮かべ、私に右手をさしのべてきた。


「アニー・フェイです。こちらこそ」


 短くしっかりとした握手を交わす。"フライブルクの魔女"と紹介状のどちらが効いているのか分からないけど、高々16歳の小娘にも丁寧な挨拶をする人のようだ。


「さて、アニーさん。当ギルドには、どのようなご用件でいらっしゃたのでしょうか?」


 改まった口調で問われた私は、しばし考え込む。

 さて、どう答えるべきか。今回の目的は、不死の王(アンデッドロード)、ヴィルヘルム・フォン・ホーエンハイム自身が書いた本、あるいは彼について書かれた本があるかどうかを調べる事。そりゃまあ、魔術師ギルドに依頼して調べて貰った方が、何か出てくる可能性は高いんだろうけど、逆に先を越されるリスクが出てくるからね。信頼できる誰かいればともかく、ここは自前で調べた方が良さそうだ。

 考えを決めた私は、あくまで些細な用件といった感じに理由を説明した。


「ちょっと調べたいことがありまして。図書館を使わせて頂きたいだけです」

「図書館……それだけですか?」


 王様の紹介状を持参した割にはささやかなお願いに、目を丸くしている。


「ええ。丁度良い所にコネがあったので使わせていただきましたが、そんなに大層な用があるわけじゃありませんから」


 と、一つ聞いてみたい事を思いついたので、ついでに質問してみた。


「そういえば、紹介状には何と?」

「国王陛下のご依頼によると、魔術師ギルドは"フライブルクの魔女"を全力で支援すべし、と。人員、施設、資材、無制限の使用を許可されています。そして、この投資は必ずや王国にとって有意義な報酬が得られるであろう、と」


 王様の大盤振る舞いに、苦笑しながら頭を掻く私。


「随分、買いかぶられているようですね。ともあれ、私としては目立たない形で、図書館に出入りできるようになる事だけが希望です」


 私の申し出に、(あご)に手をやってしばし考え込む学長さん。


「ふぅむ――そうですね。それでは、特別研究員の立場を用意しましょう。これなら、学内を出入りしても目立ちません。私としては、噂に名高い"フライブルクの魔女"に、教授の地位に就いていただきたい所ですが……」


 私は慌てて手を左右に振って拒絶する。冗談じゃないよね。まったく。


「教授なんてよしてください。先月まで学生ですよ? 柄じゃ有りませんし、16歳の教授だなんて、目立って仕方ないでしょう」


 この返答は想定の範囲内だったのか、学長さんはあっさり肩をすくめるばかり。


「承知しました。大抵の所にはそのまま立ち入れるようにしておきますが、各教授の研究室等には、その教授の許可が無ければ入れませんから、注意してください」

「ええ、それで問題ありません」


 私の返答に学長さんは二三度(うなづ)いた。


「それでは、本日からご利用になりますか?」

「はい、できれば」

「では、証明書を用意させておきますので、お帰りの際に受付にてお受け取りください。図書館に関しては、今つけられているゲスト用の証明書で問題ありませんから、すぐにご利用頂けますよ」


 その証明書があれば、入り口にあった入館ゲートがそのまま通れるようになるって事なのかな。これで気楽に来る事ができそうだ。私は頭を下げて学長さんに感謝の意を示した。


「ありがとうございます」

「あとは、学内のご案内ですが……私自身がご案内すると目立ってしまいますからね。学生に案内させましょう」

「はい、助かります」


 一人で散策して、おのぼりさんよろしくキョロキョロするのも目立つしねぇ。案内がつくのは助かるかな。

 私の返答を聞いた学長さんは、デスクの上に置いてあった呼び鈴を鳴らし、秘書なのかな? 一人の女性をを呼び出して、なにやら小声で指示を下していた。


「丁度、アニーさんと同郷の学生がいましてね。少々お待ちください」



              ◇   ◇   ◇



 呼び出された学生が来るまでの間、魔術師ギルドについてとりとめの無い話をしていた私と学長さんだったが、ノックの音にその会話は中断されたのだった。


「どなたかな?」

「ジェシカ・ベルモントです。お呼びと伺いましたが」

「ああ、入ってください」


 学長さんの声に応じて、一人の女の子が不安そうな表情で室内に入ってきた。

 年の頃は私と同じくらい。長いブロンドの髪を後ろに綺麗に結い上げた、かわいい女の子だ。ちなみに服装は学生共通のローブを纏っていて、その下は何を着ているかよく分からない。

 ただ、私はその顔に見覚えがあった。私の友人の一人でもあり、家庭教師として魔法を教えていた教え子でもあった、ジェシカだった。

 彼女の顔を見た私は、ぽつりと名前を漏らす。


「あ、ジェシカだ」

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