これで、一件落着
通り魔が完全に消滅するまで、見届けた俺達は肩の力を抜き勝ち取った勝利に喜びの声を上げる。
「よっしゃあ!」
「やったわね!」
「うむ」
「これで終わりだな!」
みんなで集まり勝利の喜びを共有する俺達。ガッツポーズやハイタッチをして通り魔に勝ったことに浮かれていると見吾が
「む、他の黒いのが近づいてきているな」
「マジか」
「もう用は無いし、その黒いのを確認したら帰りましょ」
「だな」
浮かれていた俺達は一瞬で気持ちを入れ替え、見吾が示した方角を見る。通り魔を倒したタイミングで来るという事は、恐らく通り魔の仲間では無いと思うが警戒するに越した事は無い。しばらく見ていると道の曲がり角から犬の形をした黒いのが現れた。
「なんだ普通の奴か」
「どうする?」
「今日は倒さず帰ろう、結構消耗してるしな」
このまま犬の黒いのと戦っても良いんだが、実はさっき通り魔に蹴られた横腹が痛むのだ。戦っている最中はアドレナリンによって、痛みを感じてなかったが戦いが終わりホッとした瞬間痛みだしたのだ。見吾も通り魔の蹴りを腹に喰らっていたので痛むんじゃないか?折角通り魔に勝ったのだからここで無理する必要は無い。俺は常闇の世界に入る時に使った扉でショートカットに繋げ、俺達は引き上げた。
ショートカットに入るとまず俺は救急箱を取りに行き、陽太達はソファーとテーブルの周りに座る。俺は救急場を取り見吾の隣に座ると
「見吾さっき腹蹴られてただろ?見せてみろ」
「そんなに痛みは無いから大丈夫だ」
「そんなにって事は少しはあるんだろ。いいから見せてみろ」
薬を塗ろうとしたら見吾が断ったので、無理やりにでも怪我を見せて貰う。こういうのは小さな怪我でもほっておくのは駄目だ。少しな怪我が命に関わることだって少なくないのだから治療できる怪我はすぐに治療するのが大事。見吾はしぶしぶだが服を捲ると、腹に足の形の内出血が起きていた。
「うわ酷いな。これは冷やさないと駄目だな」
「痛そう・・・・」
「さっきの蹴りか、凄い威力だな」
「俺部屋から氷取ってくる」
俺は打撲の跡を見てさっさと冷やした方が良いと思い、一旦部屋に戻り冷蔵庫から氷を取り出し袋に入れショートカットに戻る。
「ほら、これ当てとけ」
「感謝する」
「2人は怪我してないか?」
「私は大丈夫」
「俺も」
見吾に氷を渡し、2人に怪我が無い事を確認すると俺も服を捲り脇腹を見てみると見吾と同じような打撲が出来ていた。
「遊斗君も!?いつの間に?」
「みんなが来る前にやられちゃって」
「あいつ強かったからな・・・・」
俺が蹴られてる所を見ていない3人が怪我に驚くき、陽太は通り魔の強さを思い出してるようでしみじみと頷く。
「現実世界と差があり過ぎ。もっと時間かけたら、あれより強くなるって事だろ?恐ろしいな」
「だな~早めに見つけられて良かった。まぁ見吾がいきなり石投げた時は驚いたけど」
陽太は顔しかめながら通り魔の強さの差があり過ぎだと言う。俺は確かにと頷きながらも、見吾を責める様な眼で見るが
「うむ、やっぱり正しかったか」
「あ~それであんな声上げてたのね」
見吾は全く応えた様子は無く、自分の推論が当たったことに満足げだ。夢さんは俺が声を上げた理由がそれだったのかと納得している。はぁ・・・・いきなりあんな行動すると驚くからやめて欲しいんだが。だけど今回は見吾のおかげで通り魔を見つけられた様なものだし強くは言えないな。
「でも、通り魔の出現条件によく気づいたな」
「毎回電灯が壊されていたからな、照明器具というより電灯を壊すという行為が儀式になっているんじゃないかと思ってな」
「だからって普通はやらないって・・・・」
「人命が掛かっているからな、申し訳ないが仕方が無い」
「まぁ今回は大目に見て貰いましょう」
俺達がやったことは器物破損の完全に犯罪なんだが、人命救助ってことで大目に見て欲しいな・・・・あっ
「ちょっと待っててくれ」
俺はショートカットから常闇の世界に戻り、そこから現実世界に戻り壊した電灯の元に行くと見吾が投げた石を回収しショートカットへ戻った。
「何してたんだ?」
「証拠隠滅」
「あら、それも犯罪ね」
「うぐっ・・・・仕方ないだろ」
朝になって電灯が壊れてることに気付いて、石に付いている指紋を調べられても面倒だから石を回収してきたのだ。こんな事をするのは、今回限りだ。
読んで頂きありがとうございます!
コメント・感想・評価・ブックマークお願いします。
基本毎日投稿しており、時間は決まってません。
twitterで更新状況を発信しているので、宜しければフォローお願いします。