事情聴取
俺達は駅から歩いて10分ほどにある夜柱警察署に来ていた。受付の人に要件を言うと、暫くしておくから大蔵刑事がこっちに歩いて来るのが見える。はぁあの人から事情聴取受けるの嫌だな・・・・一応バラバラで事情聴取されても良いように話を合わせてきてはいるが何処でボロが出るか分からない。出来るなら全員一緒に話を聞いてもらいたいんだが。
「やぁ昨日ぶりだね。それじゃこっち来て」
大蔵刑事の案内によって警察署の奥に進んでいく。警察署に来るのなんて2回目だな~出来るならもう二度と来たくなかったけど。大蔵刑事に連れられる俺達の姿を見て署に居る警察が不思議な顔をして俺達を見ている。確かに、少年課じゃない大蔵刑事が高校生3人も連れて歩いてるなんて変だよな。案内された場所は、学校にある会議室みたいな場所で全員が同じ場所に案内されたってことはバラバラに聞くんじゃないのか。
「それじゃあ、そっち座ってね」
大蔵刑事は俺達と対面するように座ると、俺が真ん中で右に遊斗左に夢さんの順番で座った。大蔵さんは懐から手帳を取り出すと俺達を見ながら
「今日はわざわざありがとう。学校どうだった?」
「何時も通りでした」
「そうね、特に変わりはなかったです」
「通り魔の話も学校ではあまり聞かないよな」
「そっか、まぁ結市は夜柱市から少し離れてるからね。あんまり話題に上がらないのかもしれないね」
学校周辺で不審者が出ると、基本学校から注意してくださいと言われるのだが今回は言われていない。生徒たちの話題にもあまり上がらないし大きな事件なのに変だよな。
「それに、死傷者や重傷者が居ないっていう所も話題に上がらない原因かもね」
「そうなんですか?」
「そうだよ、今の所全員が軽傷者なんだ」
「何がしたいんでしょうね犯人は」
なるほど、重傷者や死傷者が居ないのであればそこまで危険視しないのも分かるな。でも、これからエスカレートする可能性もあるよな。
「君達はどう思う?」
「え?」
「犯人が何を考えてこんな事をしてると思う?」
どうして俺達にそんな事聞くんだ?犯人は黒いのだから人じゃない、つまり人の常識じゃ測れない。警察は犯人が人間だと思ってるからこんな事聞いてるのか?それとも、俺達が犯人と接触してることを知ってるのか?
「さぁ・・・・色んな人を怖がらせたいんじゃないですか?」
「俺は、切り裂くのを楽しんでるんだと思います」
「うんうん、新倉さんはどうかな」
「私は・・・・注目されたいんじゃないかなと思います」
大蔵刑事はうんうんと頷きながら、
「参考になったよ。じゃあ、本題に入ろうか。まず悲鳴を聞いたときから教えて貰えるかい?」
俺達は悲鳴を聞いて女性の元まで駆け付けたこと、犯人を見つけて追いかけてこと、犯人を見失ってしまい戻って来て大蔵刑事と会うまでを話した。犯人を追いかけたことを聞いて眉を引冷めたが話を遮ることなく一通り聞いてくれた。俺達が話し終わると、うんうんと頷きながら
「なるほどね・・・・そういう流れだったのか。君達が女性を助けた事はとても素晴らしく勇敢な事だけど、危険だから次からはすぐに警察に通報するようにね。犯人は刃物を持ってたんだから、追い詰められた犯人が君達を襲ってくるかもしれないんだから」
「はい・・・・」
「素直で宜しい。それで犯人の特徴とか覚えてるかな?」
「全身真っ黒ってことぐらいしか覚えてないです」
「周りも真っ暗で全然見えませんでした」
「私は追ってないないので分からないです」
「そっか・・・・」
嘘は言ってない、犯人は真っ黒だし真っ暗で見えなかったのも事実。犯人が人間じゃないって言っても頭が可笑しいと思われるか、薬でもやってたかと疑われるだけだ。
「じゃあ他に気付いたことあるかな?」
「う~ん、特には」
「そういえば、俺達が女性の元まで駆け付けるまで少し時間が有ったはずなんですけど犯人は女性の目の前で立ってただけでした」
「そういえばそうだったわね。手当てした時一回しか切られてないから、その間何してたのかしら」
「・・・・なるほどね。ありがとう、有力な手掛かりになりそうだ」
「いえ、これくらいしか覚えてなくて」
「十分だよ。それでいくつか質問させて欲しいんだけど」
その後いくつか質問に答え事情聴取は45分くらい続いた。質問に嘘を少し混ぜながら答え、俺達は警察署を後にした。
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