遊ぼう、ねぇ遊ぼうよ
「まったく、もう!手長を倒したのに次も腕ってなんか腕に恨まれてるのかしら!?」
「迂闊に攻撃できないからこっちの方が断然きついけどな!」
2人は愚痴を言いながらも迫り来る腕達を避けているが、その表情には焦りが浮かんでいる。俺の射撃は、異形には全くと言って良い程効果が無い。それなら爆弾ならどうだ!今俺は2人と少し離れた位置に居るため巻き込む心配も無いため、威力を上げた手榴弾を追いけてくる腕に投げる。
「嘘だろ!」
少しでもダメージになればいいと思い投げた手榴弾だったが、なんと迫り来る腕にキャッチされそのまま爆風ごと握りつぶしてしまったのだ。流石にこれは予想外、結構威力を高めたんだが、どんな握力してるんだよ!あんなのに掴まったらプチッといかれるって!!!
「絶対に掴まれちゃ駄目ね」
「あぁ俺でもあれは無理だな」
異形は俺達で遊んでいるつもりなのケタケタと笑いながら呪いの様に恨みの様に言葉を吐く。
「アソボ アソボォオオオオオオオ ギャハハハ」
「断る!」
「声まで禍々しいとか、本当に最悪ね!」
襲い掛かる腕を躱しながら顔をしかめ2人が言う。さっきまでの少女の声とは違い幾重にも子供の声が重なった声をしていた。まるで発狂しているかのようにケタケタと笑い、時には叫び怒りながら遊びに誘ってくる異形。
倒すにはどうにかしてこの腕を何とかしないとな・・・・どんな攻撃も全く効果ないし弱点探るために、乱射してみるか。アサルトライフルを消し、サブマシンガンP90を異形に向かって連射する。ダダダダダダと軽いが、大量の銃弾が異形と腕に当たるが全く効いていない。また俺と相性悪い奴かよ!!!腕を避けながら無意味だと思っていても攻撃しないわけにはいかないので撃ちながら走る。斬撃は腕の数増やすだけだし、潰しても瞬時に再生する。爆発も効かないし打つ手が・・・・どうしようと考えていたその時いきなり腕が引っ込んだ。
「は?」
腕には何も攻撃していないのに、いきなり攻撃が止んで驚いた。陽太と夢さんも攻撃がいきなり止み驚いたが異形の様子を見てさらに驚いた。
「少女の体を守ってる?」
引っ込んだ腕は少女を隠すように、少女の体の前に集合しており守ろうとしている意思が感じられる。
さっきまで全くと言って良いほど反応しなかったのに何故だ?・・・・もしかして!
アサルトライフルに変え、少女を狙い撃つと腕は少女を守るように銃弾を防いだ。
やっぱり!少女の部分が弱点なのか!
「遊斗もしかして」
「たぶんそうだと思う」
「なるほどね・・・・入れ物だと思ったらあっちが本体なのね」
少女を腕で守ったことによって2人も気付いたようだ。恐らく乱射している時に偶々少女に当たりそうになったんだ。それで、少女を守るために腕が引っ込み攻撃が止んだ。偶然だけど、弱点が見つかったが・・・・
「弱点は見つかったけどどうするの?あの守り崩すのは相当難しいわよ」
「夢さんと俺で能力使って拘束すれば何とか行けんじゃないか?」
夢さんの言う通り、現在4本の太い腕が少女を守っているので銃弾は通らないし斬り付ければ新たに腕が生まれる。時間を掛ければ掛けるほど消耗して戦えなくなってしまう。やるなら短期決戦、陽太と夢さんの能力で決めに行く方が良い!
「2人ともやれる?」
「任せろ」
「勿論よ」
2人は俺の言葉に力強く頷くと、異形を睨みつけ体から光が溢れる。
まったく・・・・頼もしいね
2人は能力を使うのに集中してもらい攻撃するのは俺だ。失敗は出来ない、今異形は俺の事を警戒して動いていないし攻撃もしていない。つまり、落ち着いて狙えるってことだ。一撃で沈めるために、俺は対物ライフルバレットM81A1を作り出し、バイポットを立て地面に伏せてスコープを覗く。異形との距離は50m程度こんだけ近けりゃ絶対に外さない。
「準備出来た!」
「分かった、夢さん!」
「えぇ合わせるわ!」
フーッ
息を吐き撃ち抜くことだけに集中する。2人から光がはじけると、幾つもの鎖が異形時の地面から生え出し腕に絡み拘束していく。異形は鎖から逃れようと腕を振り回そうとしたが、陽太の力によって腕は押さえつけられる。異形次々腕を生み出し、拘束から逃れようと暴れるが陽太と夢さんが許さない。腕が少女の前から退かされていく・・・・新たな腕で守ろうとした瞬間射線が空いた。
ドンッ
銃から空気を震わせるほどの音が放たれた。銃弾は真っ直ぐ腕と腕の隙間を潜り抜け少女の頭に直撃した。その時、
「ギャアァアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
異形から叫び声が上がった。叫び声は魂からの絶叫だった。聞いているだけで精神が乱れ頭が痛くなる。弾は少女に当たった、だが異形を倒せていない。
もう一発!!!
異形の顔は弾を撃ちこんだ俺を睨みつけ、守りなど捨て俺を殺そうと全ての腕が俺に向かってくる。向かってくる腕によって少女が隠れてしまっているこれじゃ撃てない、すぐに腕が俺を潰すだろう。だが、
「やらせるか!」
「無視しないでよね!!」
鎖と光の衝撃が腕を弾き飛ばす、弾き飛ばした事によって少女の体が露わになった。さっさと沈め!!!!ありったけを少女に撃ち込む。
ドンッドンッドンッ
当たるたびに叫び声を上げる異形
ドンッ
5発目によって少女の体が砕かれると異形は叫び声を上げなかった。少女と繋がっていた部分からどんどん消滅していく異形。俺を殺そうとしていた腕は力無く動かなくなっていた。
やった!倒せた!!!!・・・・・・・ッ
スコープから目を離すと息を呑んでしまった。
異形が泣いていたのだ。全ての顔が泣き声を上げる事無く悲しそうに寂しそうに泣いていた。さっきまでの禍々しさは無く、訳も分からず悲しくなる。
「アソビタカッタダケナノニ」
ぼそっと異形が呟いた。その声が余りにも寂しそうで、思わず駆け寄ってしまった。
「遊斗!?」
「遊斗君!?」
2人に止められそうになったが振り切り異形の元まで走ると、消えていく異形に向かって
「遊び楽しかったぞ!ちょっとスリリングだったけど、お前との遊びは楽しかったぞ!!!」
これは本心だ。戦いは辛かったが、攻略を考えたりアスレチックを攻略するのは楽しかった。
「ソッカ」
異形は笑いながら消えていった。
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