75-銀階級と私
初めにギルドの階級についての説明がございます。
銀階級。一般的な冒険者としては上級。冒険者が目標とする階級。地方都市ならば指導者として望まれる事もある程。
ちなみに、護衛や討伐の任務を受けられる様になる階級の中では最下位の銅階級はオーク、ゴブリンといった魔獣と1対1の勝負で勝利出来るレベルとされるが、銀階級はボスオーク、ボスゴブリンと1対1の勝負で勝利出来るレベルと言われる。
青銅階級は鉄階級取得者の採取のレベルが一定以上、採取、危険性が薄いとギルドが判断した迷宮等に向かう場合、パーティーメンバーに加入できる最低階級。鉄階級は採取依頼のみ。ただ、鉄階級持ちの場合、ギルドがある程度の金額で公平な査定をしてくれる為、取得希望者は少なくない。尚、公平な査定をするギルドとして最も評判が良いのは、国内外を通じてコヨミ王国の中央冒険者ギルドである。
以上、世界ギルド協会監修『冒険者ギルドに初めて行く人の為に』より。
もうね、覚えましたよ。さっきリュックさんが出してくれたこの本、詳しい!千斎さんに見せたら、
「この本は、人気があり過ぎて今は印刷待ちなんです。世界ギルド分布図も詳しくて。リュック殿は本と言う物を理解されていますね。素晴らしい。実は私ももう一冊欲しくて予約しているのですよ。あ、今度、一の都市の大書店に一緒に行きませんか?ナーハルテ様もご一緒に!第三王子殿下と異世界考察の書物を、ナーハルテ様と召喚術の文書を選びたいですねえ。」
とのお言葉。大書店、興味ありますけど、ナーハルテ様も、というのはすごくすごく惹かれますけれど!お仕事して下さい。千斎さん。
あと、私は選抜クラスの編入試験、大事な試験が控えてますから、その後ですかね。ただ、転移可能な座標があれば是非教えて下さい。絶対役に立つ本がたくさん!ですよね。
「え?選抜クラスの編入試験……ですか?」
……千斎さんは高等部の選抜クラスから士官学校に進まれたのでは?私、また何かした?
「あ、はい。そうです。確かに編入試験は学院長先生が認められた場合、年度末に行われますが。座標をお伝えするのもやぶさかではありません。ただ――あ、スコレス殿、もうよろしいですか?王子殿下の階級試験の事ですが。」
「はいはい。儂も緑達もたっぷり水分補給したから、さっそく始めましょうか。」
ギルドマスタースコレスさん、すごいの!
ご自身はマジックバッグから取り出したお手製ハーブティーで喉を潤して、蔓達には、
「雨雲よ、来ておくれ!」
と叫び、空中から開いた天井へと雨雲を召喚して、蔓達にたっぷりお水をあげていた。雨雲が植物の大小に合わせて水量を加減してあげていて、蔓達の緑の色彩が少しずつ鮮やかになっていく様子が目に見えるのが印象深かった。
「あの試合の後にこれかよ。ジジイ、底なしの魔力だな相変わらず。」
「ハンダ、スコレス殿を見習って、お前も身体と魔力のバランスをもう少し考えろ。」
「魔力もたまには使ってる!」
「お前の魔力消費のメインは診療所の魔石作成だろうが!それもセレンお嬢のお陰で全自動給湯魔道具を導入したからほとんど作業がなくなったくせに!本来お前は対魔法防御を常に自分に掛けておくべきなのに。」
ぎゃあぎゃあ。まだ叫んでるハンダさん、あの試合の後に、は貴方もですよ。
「確かに、ハンダはたまには魔力も活用しないとのう。どうじゃ、第三王子殿下の銀階級試験監督、お主がやってみるか?」
え、ちょっと、何を言ってるのスコレスさん!
「ふむ。王子殿下にはあの指輪がありますからな。良いかも知れませぬ。」
え、千斎さん?貴方まで!もしもし?
「いやあの、本にも銅階級以下は一律、銀階級以上の試験内容はギルドに一任される、ってありましたけど。ナーハルテ様みたいな筆記試験を先にお願いします!もしかしたら私、実技試験を受けるレベルにも達してないかも知れないじゃないですか!」
「いや、筆頭公爵令嬢殿が受験されているのは召喚士資格試験じゃから。王立学院でも教鞭を取っておられる王宮所属召喚士殿の推挙、聖教会本部から提供頂いた召喚映像の複写、この映像は千斎殿が儂に渡して下さった。この二点で既にほぼ資格者と言えるが、ご本人の希望で一応筆記試験を行っているのじゃよ。このギルドは召喚士資格試験実施資格取得済での。あと、一応召喚獣の鳥殿を召喚して頂く予定じゃが、あれは大方、うちの召喚士が趣味で拝見したいのじゃろうなあ。」
まあ、それで同時に銀階級試験も終了じゃがの、とスコレスさん。そうかあ、ナーハルテ様、銀階級と召喚士資格の同時取得の快挙を達成されるのかあ。私の隣に、って仰ってたけど、私の方こそ、お隣にいたい……。
あれ、じゃあやっぱり、銀階級試験受けられるなら受けさせて頂きたいなあ。現金だな、私。
「でも、ハンダさんと試合って、どういう形式になるんですか?」
ハンダさん対寿右衛門さん、緑簾さん、リュックさん連合とか。これならいけるだろうしむしろ見たいけれど、私の実力確認にはならないか。
「第三王子殿下とハンダの魔法試合だ。縛りの魔法はスコレス殿か千斎殿がなさるから心配はいりませんよ。」
「カバンシ殿、念の為、盾に戻られてハンダを監視して下さらんか。あいつは無理矢理自力を使いかねないからのう。そして千斎殿。万が一にでも王子殿下のお体に何かがあってはいけないでな、儂と其方の二重掛けに致しましょう。術式の相談を。」
「「分かりました。」」
「おい、ちょっと待て!カバンシが盾になるのはまだいい!けどジジイ、てめえと千斎殿の術式二重掛けって!何の苦行だよ!」
「たまにはお前も肉体に頼らないで戦ってみろ。ああ、大丈夫ですよ王子殿下。御身は我々が必ずお守りいたします。」
「勿論、映像水晶で撮影もいたします。これで選抜クラスの編入試験も同時進行できますね。学院長先生へは私が責任を持ってお届けしますので。」
「まあ、それはそうだな。しょうがねえ、殿下の為になるならやってやるか。」
「そういう事だ。まあ、やってみろ。」
「ですな。」
「じゃの。」
皆様方、うんうんと肯きあっておられますが。
今さらっと、選抜クラスの編入試験、同時進行って。
……一体、何が起きているのかな?
読了ありがとうございます。2月の毎日更新が何とか達成できました。読んで下さる皆様のお陰です。短編版もブクマが増えておりました。誠にありがとうございます。連載版とは違う部分が多くなって参りましたが、作者にとってはあちらも大切なお話です。連載版も、ブクマ、評価を本当にありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。




