64-魔馬車のナーハルテ様とヒヨコちゃんとあたし
セレンさんとナーハルテ様、白様の魔馬車で帰ります。ヒヨコちゃんも登場します。
「セレン様、これを。」
今、ナーハルテ様、あたしの事セレン様って仰った?
嬉しい!そしてナーハルテ様のお手元の特別な紙で作られた封筒。獅子の紋章……。まさか。
「そう、ライオネア・フォン・ゴールド公爵令嬢からの手紙です。貴女が自分のご意志で学院と聖教会本部に戻ると決められた時に渡してほしいと言付かって参りました物です。」
『一度は我が預かったが、ナーハルテから渡すのが筋かと思うてな。』
「あ、ありがとうございます。白様も、疾走中、ありがとうございます。」
どうしよう、どうしよう。いつどこで読もう。元々普通の馬車より早い聖教会本部の魔馬車を精霊王様の直参さんで凛々しくてカッコいい白い猫属の高位精霊獣様が引いて下さっているからここで読めても読んでる内に王都の聖教会本部に着いちゃうかも。ああ、でも、同乗者がおられるのに手紙を読むのはマナー違反か。
聖女候補の活動用の正装、割と可愛いのに動きやすいから皆に評判がいい白いワンピースの隠しポケットから、お父さんにもらった財布型のマジックバッグを取り出した。すると、
「よろしければ、ここでお読みになっても構いませんよ。わたくしは、白様に騎乗させて頂きます。」
良いんですか?パンツスタイルの召喚服だからこそ、ナーハルテ様が凛々しくて、一瞬、そのお姿を拝見したくなったけど、あたしがお手紙に興奮し過ぎないようにここにいらして下さい、と言ったら微笑んでくれた。
何だろう、この美しくて可愛らしい方は。第三王子殿下、最初の頃、あたしの笑顔に赤くなってたけど、こういうナーハルテ様を見る事ができていたら、あんな風にはならなかったのかも。ああ、でも。第三王子殿下がいらしたから、今のナーハルテ様がおられるんだよね。
さっそく、手紙の封を切る。聖魔法の切除魔法は、ペーパーナイフよりもピシッと切ることができて大好き。切り口もすごく綺麗だしね。
お手紙には、あたしが王都に戻るであろう事を嬉しいとされた後、お守りのお礼等。届いた時から力が漲り、学院長先生に相談して魔道具開発局に確認してもらったらあたしの聖魔力は制御できないとマズいレベルらしい事が分かったんだって。召喚大会の事故召喚も、元々はあたしの聖補助魔法がニッケル様のテンションを上げすぎてしまった為らしい。ただこれについては知の精霊珠殿があたしの無実を証明して下さったので何も心配ない、とも書かれていた。そして、本当はあの召喚大会で何が起きていたのかも。
後は、獅子騎士様応援会事務局のサマリちゃんとあたしの会話を伝令蝶で聞いていらしたことを済まなかった、として下さっていた。あの時は、ライオネア様のファンクラブに興味ないみたいなこと言っちゃって、うわー、って感じだったんだよね。あの伝令蝶の感覚、やっぱりあそこにいたんだ。でも、ライオネア様のお立場なら自分の事をお調べになるのは当然だし、そもそも、悪意があれば学院内では術式展開できないもんね。
こういう潔癖な所が騎士様らしくて、こんなのもう、ますますファンになっちゃうよね!
久しぶりに食べに行った八の街のイケメンコックさん、料理は相変わらずおいしかったけど前みたいにうわカッコいい!とはならなかった。あたしの中でのイケメンはもうライオネア様なんだなあ、と思いながらおいしい料理を食べたっけ。
あれ、待って。もしかしたら、あたし、聖魔力のせいで婚約者さん達皆に魅了の魔法掛けてたとか?うそ、やだなあ!あたしくらいが、とか思ったあの思い上がり、あれは本当、ただのノリだったんだよ!
『ちょれはありません。だいじょうぶでしよ、きゃぷてん。』
え、頭から声が。かわいいけど、何?
「セレン様、頭の上です。」
あ、頭。
慌てて、でも丁寧に手紙をナーハルテ様にお預けして(安心感が半端ない。)確認しようとしたら目の前に。
赤ピヨちゃん!何で?ナーハルテ様のあの朱色のキレイな鳥の精霊獣さんと一緒に七の街と八の街の聖女候補ちゃん達を送ってから精霊界に戻った筈じゃないの?
あ、お父さんとカバンシ兄ちゃんと緑さん(第三王子殿下の鬼の召喚獣さん。召喚大会の暴れん坊。お父さんとめちゃくちゃ仲良しになって、あたしもこう呼んでいる。)は聖魔法大導師様、茶色い伝令鳥さんじゅったん様と皆で先に王都に。
お父さん、冒険者業再開を考えるって。でも叙爵からはギリギリまで逃げる、って言ってたなあ。カバンシ兄ちゃん、人型の時思い切り人見知りだけど、竜の姿、目立つからなあ。
前と違って、自分から行くから朝のお母さんや八の街の皆とのお別れも淋しいけど何だか頑張るよ!行ってきます!な感じだった。まさか、最後にはお父さん達と一緒に戻る事になるとは思わなかったけど。
ナーハルテ様の朱色さんにお願いして伝令鳥をして頂いたら、薬師さんは優秀なアルバイトさんに入ってもらえたから、ってお母さんが言っていた。セレンの聖魔力の魔石のお陰だけど、信頼できる方の許可がない限り魔石の生成は駄目よ!って言われたよ。カバンシさんはいいけど、お父さんだけじゃ駄目!って、お父さんがかわいそうだけどすごく良く分かる。
『きゃぷてん、おはなしいいでちゅか。』
え、あ、はい。第三王子殿下も気にされてたけど、やっぱりこういう時って色々考えちゃうよね。あたしも気をつけないとなあ。って言うか、あたし、キャプテン?
『ごめんなさいね、紫色の聖女候補さん。その子がどうしても貴女の召喚獣になりたいと言うの。真名を主にしたい方の前で言い、他のものには聞かせない音声阻害魔法を同時に行使するのだけれど。』
朱色さんの名前があたし達に聞こえないあれですね。そう、今のこの音声伝達魔法も、ナーハルテ様と朱色さんが召喚獣とその主としてきちんと繋がっているからできる事なのだ。
『もしも、紫色の聖女候補がその子を受け入れて下さるなら、あたくしのナーハルテに名前が聞こえなければ是といたしましょう。白様も外で聞いておられるから、これ以上の承認はないわね。』
『どうでちょうか』
ええと、元々あたしにしかこのヒヨコちゃんの言葉は聞こえなくて。皆さん、ピヨピヨとしか聞こえていないって。勿論、召喚獣の皆様と聖魔法大導師様には聞こえていたけれど、ナーハルテ様とか今の第三王子殿下とかにまで聞こえなくてあたしにだけというのはおかしいので戻ったら考察を、って話だったのが、第三王子殿下が魔力欠乏で倒れられた後、聖女候補の皆を送ってからじゅったんさんとお話したんだよね。
それで、もしかしたら聖霊獣の血統のヒヨコちゃんなのかもってとりあえずの推論が出て、またナーハルテ様経由で会えたらなあとか思ってたんだ。
「よし、やってみて!」
『ありがとうございまちゅ。ぼくの真名は紅柿。しゅいろちゃまのけっとうのひよこぐんだんのりーだーでしゅ。』
「あ、ちゃんと言えた!ナーハルテ様、いかがですか?」
「は、はい。確かにこの朱色と紅の混色のヒヨコ様は、真名をお話になられました。筆頭公爵令嬢ナーハルテ・フォン・プラティウム、確かに見届けました。」
『我も聞いたぞ。朱色のものよ、これは認めても良かろう。』
「分かりましたわ。ただ、白様や他の方からの申し出がありましたら、精霊界に戻しますわよ。紫色の聖女候補、ナーハルテ、申し訳ないですがお願いしますね。そのものの仮名は紅です。それでは、また。」
「分かりましたわ。朱姫、この度はお力をありがとうございました。」
『よろしくでちゅ、キャプテン、ナーハルテちゃま。』
あ、少し言葉が堪能になってる!これもかわいい!
それから、あたしは紅ちゃん(外ではこう呼ぶ事にした)を挟んでナーハルテ様と色々お話をした。召喚大会の事をお詫びしたら、こちらこそ最初の頃の婚約者達の態度と貴女へのわたくし達からの誤解をお詫びいたします、と謝られそうになって慌ててじゃあお互い様だからもう謝らないって事にしましょう!って言ったらそういうお考えもあるのですね、と微笑まれてキュンとした。かわいい。かわいいよナーハルテ様!
そうだあたし、第三王子殿下に恩返しできてないから、二人の恋路をガンガン応援しよう!紅ちゃん、もし聞いててもまだ内緒ね。
『わかりまちた。あとおうとについたらおしごとをさせてくだちゃい。』
分かったよ。まず紅ちゃんの初仕事はライオネア様へのお礼を伝えてもらおう!紅ちゃんが大丈夫だったら、騎士候補様スズオミ君にも帰ったよって話そうかな。あと、あいつ。むかつく奴だったけど、あたしの危機だって本家の恥を聖教会本部に伝えてくれたから、お礼は言わなきゃね。あ、でもあいつの名前、何だったっけ。まあいっか!あと、サマリちゃんにも。驚くぞ!
読了ありがとうございます。前回、反省会になりましたが一応主役とナーハルテ様の気持ちが近付きまして、ナーハルテ様もセレンさんをしぜんにセレン様と呼べました。また、ブクマ、評価を誠にありがとうございます。ユニークが10000を超えて、ブクマが80を超えて、と短編版を上回ってきております事、本当にありがたく思っております。本当に励みになっております。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。




