36-チュン右衛門さんと雀さんとまぬけ王子と恋人とあたし
第三王子殿下転生のお話です。
「あたしが来たぞこよみん姉!」
やっと仕事が終わったさて帰ろう、と最寄り駅に着いたら恋人が何故かチュン右衛門さんを肩に乗せて笑っていた。あたしを見つけてぺこりとする雀は彼(仮)しかいない。
ほんとこの恋人は、高校時代は賢い眼鏡クール美人で隠れファンもいたくせに何だこのキャラ変更は。まあ、あたし(とまとい)に対してだけだから嬉しいのだけれど。これにチュン右衛門さんが加わったということか。
まあ、今も昔も賢い以外の要素は多分本人感知せずなところなんだけどね。恋人のあたしと部下のまとい以外の他人への対応はクールのままだ。
まといは自分の雇い主をずぼらなところ以外は本当に尊敬していると常々言っていたが、それはまとい(とあたし)にだけ見せてるんだよ、と何度言いそうになったことか。
本当に、あたしはいい恋人、妹はいい上司を持ったものだ。あといい雀さん。
いや、とりあえず早くまとい(の体)に会いたいし、この先生(まといの現雇い主、かつてはゼミの准教授)もまといに会いたいだろうから一緒に行こうか。さすがにそろそろ異世界転生の話もしないといけないだろうし。多分、彼女なら真剣に話したら、信じてくれないということはないだろう。
『久しいの、姉君。そして初めましてじゃな、姉君の恋人殿。』
三人でわが自宅に着いたらまたこの激シブイケボ!
……雀さんが来た、ということは。
『そう。マトイの転生は無事に終わった。』
よかった。じゃあ次はあたしの同居人さんだね。まといが旅立つ前に、あちらの世界のものがこちらの世界に転生する時は必ず同席するからの、姉君を一人にはせぬぞ、と言っていた約束を守ってくれたのだ。
「えーと、なんでパソコン使い雀がしゃべるのかな。」
パソコン使いって何。でもまあ、先に説明してあげないと、と思ったら。
『始まったのう。』
あり得ない量の光がまといの部屋から漏れている。
照明は切って外出するから、あたしがいない時は自然光以外は入らないはずだ。今はもう夜。それにしても雀さん、タイミングぎりぎり過ぎない?
あたしの髪色が茶色がかっているのでなおさら好きな愛する妹の黒髪ショートと黒目勝ちの大きな目。恋人の黒髪ロングと細フレーム眼鏡美人なところも大好きです、って違う!
「え。何、銀メッシュ?」
部屋のドアを開けて照明のスイッチを入れたら、布団の中の妹のきれいな黒髪ショートが、一部、銀メッシュになってる!
「あ、この色、銀じゃなくて白金だよ。きれいだねえ。」
確かにきれいなカラーリングだけど。そこじゃないんだよ!これだから理学博士号取得者は!
あの。白金色ってことは。もしかしてもしかしたら。
「お初にお目にかかる。コヨミ王国初代国王陛下のご血縁よ。我が名はニッケル・フォン・ベリリウム・コヨミ。コヨミ王国第三王子だ。本日より、コヨミ王国の俺の体に転生された妹御コヨミマトイ殿に代わり、マトイ殿としてこの世界に住まわせて頂く。姉君、そして姉君の恋人殿。以降宜しくお願いつかまつる。」
うわあ。やっぱりだ。よりによって、第三王子殿下が来ちゃった!あたしもキミミチ豪華版を購入して超豪華設定資料集を読み、ネット情報を探したりして勉強したんだよ。
そう言えば、こっちに転生してくる人が女性騎士だとか言ったのは誰だっけ。まといだよ。雀さん、あたしだけじゃなくてまといにも黙ってたんじゃないか?
「え。こよみん異世界転生?本当にコヨミ王国初代国王の血縁さんだったの?それじゃこよみん姉もそうなるんだ。あれ、じゃあナーハルテちゃんを実力で幸せにしちゃうんだ!やるじゃん!」
恋人はしきりに感心している。何でこんなにあっさり状況を理解できるの。
あ、そうか。まといは影ながらとかじゃなくて傍で婚約者として大好きな人といられるようになったんだ。これは、妹の幸せを姉として喜ぶべきなのか。いや、それよりこの状況!
「え、いやだって。雀が渋いイケボで人の言語を音声化したりくちばし打法でパソコンのキーボード叩いたりりしたら、ねえ……?」
あたしの恋人、先生に訊いてみたら、チュン右衛門さんが独自に動いてくれて、研究室のパソコンにあたしの危機だみたいなことを打ち出したらしい。すごい。
確かに雀に目の前でそんなことされたり、突然イケボの人語で会話され始めたりしたら、異世界転生だから不思議なことが起こるんだ、へー。になるか。
……いや、普通はならない。
『よかったよかった。茶色のものに感謝せねば。初代の茶色のものに伝えようぞ。』
「いやー、とりあえずまぬけ王子呼びはまずいから呼び方どうしようか。コヨミだからこよみんのままでいい?あ、暦が名字で名前がまとい。そちら風に言うと、マトイ-コヨミ。」
「異存はないぞ恋人殿。ただ俺もマトイ殿の話し方などを学ばねばな。記憶に残されているものを活用させて頂くか。白き高位精霊獣殿、お願いできますか。」
『よいよい、任せよ。先に転生成功をあちらに伝えてからだが。』
「こよみんの記憶から転生以後の脳と肉体に転生以前の活動内容を伝えるんだね。だったらけっこう早く仕事復職してもらえるかもだ。」
あたしを除いた連中は何だか盛り上がってる。先生も、いつもはあたし達以外には事務的なやり取りしかしないくせに、普通に接してるんですけど。
体がまといで中身が異世界の人だから特別なのか。あとは精霊さんだからか。あれ、なんか高位精霊獣とか聞こえたぞ。
あと、あたしの同居人が異世界の第三王子殿下なのは構わないのか、この恋人は。
「えー、へんな奴よりまぬけな奴の方がましだよ。パソコン使い雀氏もほとんど毎日見回ってくれるんでしょ?」
チュン右衛門さんへの信頼すごいな。だったらこのまま取りあえず過ごしてみたらいいのかな。
……そうなのかな?まずい。よく分からなくなってきた。
異世界のまといへ。元気でやっていることと思います。頑張ってナーハルテちゃんを幸せにしてあげなさいね。勿論まといも幸せになるんだよ。
ところでまといの体に、女性騎士さんではなく第三王子がやって来ました。お姉ちゃん、びっくりです。
読了ありがとうございます。第三王子殿下、意外とうまくやっていけそうです。あと2回で第一章終了かなと考えております。PVとブクマと評価を増やして頂いております。誠にありがとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。




