無能領主の末っ子の俺に一目惚れしたワガママ娘は無自覚最強の補助魔法使いでした!?〜彼女を追放した勇者パーティのみなさん?ご愁傷様です!〜
俺の名はレオス。
レオス・ケフォン・ブルティアス。
その名の通りここブルティア領の領主の息子。
……と言っても末っ子だ。
俺の27人の兄たちは皆飛び抜けて優秀だが、俺は何の才能も持ち合わせていない。
それ以前に期待もされてないのか、兄たちが受けている剣や魔法の教育も受けさせてもらえなかった。
だから俺が家を継げる可能性は万に一つもない。
俺ももはや継ごうとは思っていないが。
兄たちからは馬鹿にされ、使用人からも陰口を叩かれ、父からは相手にもされない。
なぜか飯が用意されていない日もしょっちゅうだ。
こんなことなら平民の家に生まれていればどんなに幸せだっただろうか…。
俺は夜の町を散策するのが好きだ。
領主の息子とはいえ顔を知られていないから周りの目を気にすることもない。
庶民街の宿屋を予約し、道ゆく人や家の窓から溢れる光に想いを馳せる。
そして何か暖かいものを感じ取ると、その間だけ自らの境遇を忘れることができる。
歩きながら路地裏にさしかかった。
するとそこには1人の女の子とそれに絡む2人の男がいた。
「ちょっ、やめて!手をどけなさいよ!」
「へっへっへ、いいじゃねえか嬢ちゃんよ。ちょっと一杯付き合うだけだよ!」
「兄貴の言うことは聞いた方がいいぜ?この町で兄貴に逆らったものは次の日には魚のエサになるのさ!」
この2人どこかで…。
いつか親父が部下と話していたならず者たちか?
なんとなく聞いていた特徴に近い気がする。
「ちょっと!そこのぼんやりした人!何突っ立ってるのよ!早く私を助けなさいよ!」
えっ?俺?俺にフってくんの?
「あ、ああ。今助ける」
反射的にそう言ったものの、勝てる気がしない。
しかし、どうせ俺には生きる気力もない。
俺はこいつらに負けて魚のエサにでもなった方が世のためかもしれない。
「ふん、助けるだと?小僧!何を思い上がったことを!」
「兄貴。こいつは魚のエサなんかじゃ生温い。炭酸スライムでじわじわ溶かす刑にかけてやりましょうぜ!」
なんだその刑は。
しかたない。戦うしかあるまい。
「か、かくごー」ポスッ
俺はパンチを繰り出したが…
「は?なんだそのパンチは」
ダメだ微動だにしてない。
実力差が大きすぎる。これは完全に負けた。
そう確信した。
「そんな実力で兄貴に楯突いたとは笑わせるぜ!」
「俺がパンチの手本を見せてやる…こうやんだ、よっ!!」ギュインッ
「うおっ…がはっ…」
なんて威力のパンチだ。まるで全ての内臓が破裂したかのような…。
俺はその場に倒れ込んだ。
「もう、何やってんのよ〜。しょうがないわね…聖魔法『絶力付与』‼︎」
な、なんだこの魔法は…!
まるで自分の身体じゃないかのように軽くなり、とてつもない力が湧き上がってくるぞ…!
「あ、兄貴っ、あの女が小僧に補助魔法を!」
「ほざけ!補助魔法1つでは何も変わらん!トドメだあっ!!」
スカッ
「なっ!消えたっ!?ど、どこだあっ!」
「兄貴!小僧が上空に…!」
我ながらすごいジャンプ力だ!
一体何が起きているのか、よくわからないが…。
今だ!男の頭にキックを叩き込む!
「スピンキーーック!!」ギュイーン
「う、うわー!!」
「あ、兄貴っ!なんてことだ!兄貴の身体が原子レベルで崩壊しちまった!!くそー!お前ら覚えておけよ!!」
………
……
…
「あなた凄いじゃない!補助魔法をかけただけであんなに動けるなんて!勇者より強いんじゃない!?」
「それは大げさだな。君の補助魔法がすごすぎるだけだ。俺なんか全然…」
「そんなこと…あたしの魔法なんて何の役にも…。でもあたし勇者パーティにいたことあるからわかるの。あなたは勇者パーティの誰よりも強いわ。あたしが保証する」
「ええっ!?勇者パーティってあの『真実の一眼』⁉︎…いたことがあるって、じゃあ今は?」
「それはクビに……じゃなくて!そう!家出してきたのよ!あいつらが不甲斐なさすぎてね!」
「はは…パーティを家出かあ」
俺にも家出する勇気があれば、もっと…。
「あたしは聖魔導師のセイア。あなた、名前は?」
「……レオス・ブルティアス。ブルティア領主の二十八男だ」
それを聞いた少女はプッと吹き出した。
「あははは!28男!?マジ?てんとう虫じゃん!あはははは!」
「……意味がわからないんだけど」
「それよりブルティア邸はこっから遠いよね。ってことはどこかに泊まるの?」
「ああ…近くの宿屋に」
「よかった〜!実はさあ、あたし今日いろいろあって泊まるとこがないの」
「ん?」
「ね、ね、だからさあ、よかったらあなたの部屋に一緒に泊めてくれない?いいよね!」
えっ?
「え?」
ええー!!
続きません