暗黒剣士を追放した俺たちの末路
俺たち勇者パーティは最強だ。
これはもう、既に魔王の首を討ち取ったようなもの。
考えてもみろよ。
このパーティ。
最強の勇者である俺と、攻撃を完全にシャットアウトする盾役のガードナーと、奇跡を呼び起こす祈祷師アクナと、あともう1人の助っ人も強いし。
勝ち確。
無敵なんだよ俺たちは。
世界最強クラスのメンバーが揃ってるんだよ。
ダルクという足手まといの雑魚がいなくなったおかげでこの世界最強クラスのメンバーが最高のパフォーマンスを発揮できるってわけだろ?
こんなのもう魔王死んだも同然よ。
なんか最近世間ではさ、帝国勇者がどうのこうの言ってるけどな。先に魔王倒すのは俺だから。
だいたいクラムとかただの雑魚よ。俺に負けた雑魚。
あいつにできるか?
ただ何かを消すしか能のねえやつにこんな凄いパーティを組むことが、できるか?
いや、できまい。
なぜならあんなクズで人望のないやつには誰もついて行こうと思わないからだ。
ついてくるのはせいぜい勇者の称号目当てで加入するどうしようもないゴミだけよ。
俺たちは無敵だ。間違いない。
もう今日行く。今日で魔王軍を壊滅させる。
この手で。
そんなわけで俺たちは魔王城のある島まで来ている。
いやあここまで長く辛い道のりだったな。
騎士団長一人がここまで自力で来て、転移魔法で俺たちをまとめてワープさせてもらったのだ。
さあて、今日を魔王軍壊滅記念日にしてやろう。
俺たちにはその実力がある。
「なんで俺たちは『臓物撒散亡骸』ごときに苦戦してるんだよーーー!!!
「ダルクを追放したからだ!!」
「んなわけねーだろバーカ!!ペッペッ。頭沸いてんのかミハイレスクてめえ」
『臓物撒散亡骸』とは不死者系モンスター最弱の種族である。
魔王軍に必要以上に酷使され、その腐りきった肉体はとうに限界を迎えており、ゾンビとしての形すら保てなくなって内臓をポロポロこぼしながらやってくる雑魚だ。
ランクはF、低いものだとGもありえる。
そんな最弱のモンスターに俺たちが苦戦している。
どういうわけだこれは。
魔王城のは特別なのか?
「俺の盾がもう持たない!!ゾンビと魔王城の腐敗した空気によって盾が弱っている!!」
ガードナーが叫ぶ。
そして騎士団長の反論。
「ダルクがいれば暗黒の力を制御してガードナーの盾に闇のバリアを張ることが可能だったはずなのに!!」
いつまでダルクの弁護してんだこいう。
もう過ぎたことだってのにネチネチとうるせえな。
「ここは私の祈りも通じない……瘴気が多すぎる」
はい、アクナもギブアップ。
「ダルクとアクナが力を合わせれば邪神に祈ることも可能だったはずだ!!」
なんだこいつうぜえ。
邪神に祈ってどうすんだよ。
「黙れミハイレスク!そんなもの机上の空論だ!ダルクは足手まといでしかなかったし、増してや不死者系モンスターとの戦いで役立つことはなかった!!みんな納得ずくで追放した!それが全てだ!!」
「レフ、君の光魔法も弱点のはずのゾンビ相手に力を発揮できないでいる!!もしダルクがいれば……」
「はあ?誰に口聞いてるんだミハイレスク、いや騎士団長!!俺は勇者様だぞ敬語を使え敬語を!!レフ殿と呼べえええ!!!」
「君が敬語はやめろと……」
「はあ!?社交辞令だろ社交辞令!!それすらわかんねえとかそれでも貴族か?ああん?」
「で、ではレフ殿。恐れながらこの場は撤退した方がよろしいと……」
「そう思うならなんで転移魔法を使わねえ!!さっさとしろ!!」
「はい、直ちに。転移魔法『転移転々』‼︎」
騎士団長は転移魔法を唱えた。
「……っフフ。だっせえ魔法」
〜宿屋〜
結局戻って来ちまったよ。
王都の宿屋。いつもの場所。
「今からでもダルク殿を呼び戻した方が賢明です。今の皆様では勝ち目がありません」
「はあ?意味がわからん。足手まといの無能を呼び戻したらより悲惨な結果になるだけだろうが」
「いえ、闇の力を知り尽くした彼だからこそ、皆様の助けになるはずです」
「やけにダルクの肩を持つな」
「変な人。無能を持ち上げるなんて」
「そうかわかったぞ。ミハイレスク。お前さてはダルクと組んでるな?」
「いえ、私はただ、このパーティにはダルク殿の力が必要であると申し上げておりまして……」
「ふん。ごまかしたって俺にはお見通しだ。俺たちが『臓物撒散亡骸』に苦戦した理由もわかった。ダルクは暗黒の力を増幅させる能力がある。多分ダルクが『臓物散撒亡骸』の力を強化したからだろう。でなければ俺たちが負ける理由がないからな」
「なるほど。それなら合点が行く。さすがレフだ」
「私の祈りを阻害してた力もダルクかも」
「ありえません。あの『臓物撒散亡骸』は通常の個体と相違ありませんでした」
「今さら確かめようがないことだ。まあ仮にそうだったとして、敵が強化されたわけじゃないのに苦戦してるんなら俺たちが急激に弱体化したということになる。デバフは暗黒剣士の得意技。やっぱりダルクが犯人だ」
「その線もありません。私たちのステータスはずっと正常です」
「ふん、それももう確認できないだろう。戦闘時だけ弱体化してた可能性もあるしな。お前はたぶん金でも受け取ってダルクのステマをしてるんだろ。ダルクを再びパーティに加入させようとしているのはそのためだ」
「違います!私はただ……!」
なおも食い下がる騎士団長に向かって、俺は叫んだ。
「もういいミハイレスク。てめえは勇者パーティから追放だ!!」




