嘘つきは追放のはじまり
俺の名はレフ。
前回、俺たちはCランクモンスターごときに苦戦していた。
まあ、勝てないものは仕方がないので、今度はDランクダンジョンでレベル上げを行う羽目になった。
Dランクモンスターはさすがに倒せるが、Cランクモンスターに比べると経験値の効率が劣る。
そこで鑑定士ミルソンの出番である。
ミルソンはダンジョンを鑑定することで、ダンジョン内に出現するモンスターをデータ化。
レベル上げに最も効率の良いモンスターと、そのモンスターの生息域、狩るための最も効率の良い戦い方を割り出した。
レベル上げの効率化により俺たちはメキメキと成長。
ついには前回苦戦したCランクモンスターを瞬殺するほどの実力を得た。
見たか!
これが俺たち勇者パーティの実力だ!
勇者?
そうだ、勇者と言えば、大事な話があるんだった。
〜王宮〜
俺たち勇者パーティは今、国王謁見の間にいる。
「もうすぐ国王様が到着なされます。粗相のございませんように」
誰も漏らしたりしねえよバーカ。
ミハイレスクも偉くなったもんだ。
「ふん、騎士団長風情が偉そうに」
「……失礼いたします」
「それにしてもまさか盗賊の俺が王様に会えるなんてなあ」
「なんで今日は王様に会うんですか?」
「お前ら静かにしろ。今、デブが靴を引きずるような音が聞こえるだろ。それが王の足音だ」
金ピカの王冠を深く被って頭皮を隠し、顔には小ジワと立派なヒゲをたくわえた、太った中年の男。
国王が謁見の間に現れた。
「誰がデブじゃ。聞こえておったぞ」
「おっと、これは国王様。失礼ながらこの部屋は防音性がイマイチですね」
「ワシもそう思う。この前も掃除係がワシをハゲと呼ぶ声が聞こえてきた」
この王は温厚だが、自分の容姿をいじられるとマジギレする。気をつけよう。
「で、その者は今どこに?」
「新しいカツラの材料になっとるよ」
「そんなものよりハタキの毛にしましょう。この部屋はホコリっぽくていけない」
ゲホゲホ、と俺は咳き込んでみせた。
「そんなことより勇者レフよ。今回は何の用で参ったのじゃ?」
「ええ、実はですね」
俺はマナトの方を向いて言った。
「マナト、お前は勇者パーティから追放だ」
「え……。俺を追放?」
俺は再び国王の方に向き直した。
「まあこういうわけですよ。国王様」
「どういうあれじゃ〜!」
王様、そのセリフはみんなワクワクに変えちゃおうとするネコに言ってください。
そんなことよりも、俺はマナトを追放するためにわざわざ城までやってきたのだ。
マナトは城から派遣されてきた人だから普通に追放するのもまずいかなと思ってな。
「マナト。お前にも追放される心当たりはあるだろ」
「ええっと、それは……」
「待てレフよ。マナトはワシが異世界から召喚したのだ。なぜそれを追放するのじゃ?」
「そうだぜ!マナトはステータスもそこそこ高いから追放する必要ないだろ!」
「そ、そうですよ!俺のステータスは高いです!」
「見苦しいぞマナト。たしかにステータスは高く見えるが、本当に役に立っていたか?」
「あれ?そういや俺はマナトが役立ってるとこをあんまり見たことねえな。おかしいな」
「マナトよ。どういうことじゃ?お主は戦闘で役に立ってはおらぬのか?」
「それは、えっと……」
「ミルソン、説明してやってくれ」
「はい。実はマナト様がステータスが高いにも関わらず、戦闘でそれに見合う動きをしていないと思いまして、レフ様と相談の末、マナト様に『鑑定・強』を使わせていただきました。こちらがそのデータです」
ミルソンはマナトのデータをみんなに配った。
「うっ!それは!」
「どれどれ……。おい!なんだよこれ!ステータスが一般人以下じゃねえか!」
「習得魔法も明らかに以前測定したときより少なくなっておるぞ!」
「それに『勇者適正値』はたったの32。一般人よりは高いが勇者認定を受けるには低すぎる数値だ」
「マナトよ、これはどういうことじゃ!」
「えっと……」
「そのデータ表のスキル一覧をご覧ください。『ステータス偽装』というユニークスキルがございます」
『ステータス偽装』とはマナトの持つユニークスキルである。
自分のステータスや習得スキルを改竄し、ステータス測定時にその改竄した数値が参照される。
ハッタリには使えるが、戦闘においては一切役に立たないスキルである。
「つまりマナト様のステータスは全くの出鱈目。国王様から授かった上級装備の能力だけでここまでついて来ていたのです」
「『ステータス偽装』で自分を強いと思わせて勇者パーティに寄生してたってことかよ!」
「戦闘慣れしてないのに騎士団長に匹敵する高いステータス。おかしいと思ったわい!」
「魔力がやけにすぐ尽きると思ったら魔力の値は低い。撤退魔法が使えると言ってたのにそんな魔法持ってない。しかも『自爆特攻魔法』も本当は使えるのに使えないと嘘をついてローガンを見殺しにした」
ローガンを見殺しにした経緯はローガンの章を読んでくれ。
100%マナトが悪いことがわかるだろう。
「なに?あの高名な魔術研究家のローガンを見殺しにしたじゃと!我が国の魔術界の大きな損失ではないか!」
「マナト様。何か反論はございますか?」
「……いえ、ミルソンさんの言う通りです」
なにせ王の前だ。
嘘をつき続けてきたマナトも、
今回は認めざるを得ないだろう。
「だそうですよ?国王様」
「うぬぬ……!マナト、このワシをたぶらかし、世界を救うための勇者パーティの足を引っ張り続けてきたとは……!」
さすがの国王もキレてるな。
自分がハゲと言われたときくらいキレてる。
「追放じゃ!パーティ追放ではなまぬるい!マナト!お主はこの国から追放する!」
「ええっ、元の世界に帰すという約束は……」
「貴様のような罪人生かしておくだけでも感謝するがよい!」
「そ、そんなあ……」
「ミハイレスク!エルディシュ!こやつを外へ!」
「はい、只今」
「仰せの通りに」
マナトは騎士団長と親衛隊長に両腕を掴まれてズルズルと引きずられていった。
「まさかマナトがこのような卑劣な者だとは思わなかった。すまぬ」
「いえいえ、とんでもない。顔をお上げください。誰にでも失敗はありますから」
「おお、そうじゃな。しかしこのままではワシの気が済まん。何か償いをしたい」
「そうですね、そこまで言うのであれば……」
俺は考えるフリをした。
「では予定されている30人単位での勇者召喚の儀、これを取りやめてください。またマナトのような者が現れる可能性が高いですから」
「おお、そうじゃな。異界からの勇者召喚は中止しよう」
「そしてもう一つ、今私たち勇者パーティは財政難です。大規模召喚を中止するのであれば、集めた召喚師たちに払う予定だったお金の2割を、いえ、1割で結構です。それを私たちにください」
「うむ。よかろう。ちと痛い額じゃが、これもワシの失態じゃ。くれてやろう」
バカな王様だ。
すぐに丸め込まれた。
こうして俺たちは王様から大量の資金を受け取ることになった。
やったぜ!




