闇魔導師とかいらなくね?
「ディア、君はこのパーティから抜けてもらう」
「……は?」
動揺するディア。セイアとゴラドンはすぐに事情を察してニヤニヤしている。
やはり彼女らもディアを目障りだと感じていたのだろう。
「は?はこっちのセリフだ。なあディア、お前このパーティに来てから1回でも役に立ったことがあったか?」
「……俺はあんたに頼まれてこのパーティに…それに戦闘では…」
「言い訳なんて聞きたくない。なあ?はっきり言うぞディア。お前は『足手まとい』なんだよ」
「まあ確かに俺は貴様をこのパーティに誘った。世界でも珍しい闇魔法の使い手だったからな。才能、成長性を見込んでのものだ」
「でもゼーンゼン役に立たないんだよねー。あんたがいるとあたしの聖魔法の威力も半減だしぃ」
「セイアの言う通りだ。ディア、貴様が闇魔法を使うとあたりが闇に包まれる。そのせいで俺の光魔法や聖剣の威力、セイアの聖魔法の威力が下がる。
一刻を争う事態なのに回復魔法の効きも悪くなるし、ポーションとかの回復薬はダメージになるから回復もできない。これが足手まといでなくてなんだ?」
「そうだそうだ!しかも周りが暗くなるからモンスターだけでなく俺たちの視界まで暗くなるじゃねえか!てめぇのせいで俺の得意な物理攻撃も使えねえ!」
ゴラドンもディアへの鬱憤を吐き出す。
「……それは、しかし闇魔法だからどうすることも…」
「だとしてもだ。そもそもディア、貴様の闇魔法の威力は低い。それが最大の問題だ。大して強くもない貴様の闇魔法のために全員が被害を受けている。わかっているのか?」
「そうよ。あと闇を高めるために風呂に入れないとか言ってるけど普通に臭いのよ」
「………わかった。出ていこう」
ようやくその気になったか。臭いと言われたのが相当こたえたらしい。
「そう、それでいい。あ、そうそう、お前のその装備は置いていけ。闇装備は珍しいから高く売れる」
「ええー。ちょっと本気?やだーこんな臭いの置いとくなんて」
「それもそうだな。ディア、装備は見逃してやるから有り金を置いていけよ」
「………」
ディアは俺を睨みつけるように銀貨の入った袋をテーブルの上に置いて何も持たずに宿を立ち去った。
25円しかないじゃん!しょぼっ。
「臭えのがいなくなってせいせいしたぜ!でもよ?これからどうすんだ?新しく誰か雇うのか?」
「心配するなゴラドン。後任は既に用意してある」
俺は指をパチンっとやって合図を送った。
「どうぞ、入ってきてくれたまえ」
俺の声に応じてドアから若い青年が入ってきた。
「さあ、ダイ。あいさつでもしてくれ」
俺は青年に自己紹介を促す。
「どうも。私は大賢者のダイ。皆さんのことはレフ様より聞いています。どうぞよろしく」
「そ、その若さで大賢者だとお!?すげえなダイ!」
「よろしくね!ダイさん!」
そういうとセイアはダイにウインクをしてみせる。
さっそく取り入ろうって魂胆。とても彼女らしい。
「ダイは光と闇以外の全属性の魔法を使うことができる。前任のディアなんかとは違って、きっと世界を救うための助けになってくれるだろう」
こうして俺たちのパーティも完璧になり、これから勇者レフの英雄譚が幕を開ける……はずだったのだが…。