ある女の子の探し物の見つけ方
ある小さな町の小さなペットショップに小さな女の子がママと入ってきました。
女の子は窓ガラスの向こう側にいる、ある動物を見つめます。
女の子はただその動物を見つめるだけでした。
「可愛いね」
「うん。とっても可愛い子猫ちゃんだね」
ママが言うと女の子が言います。
「飼いたいね」
「うん。飼いたいね」
「パパに聞いてみようか?」
「うん。パパに聞いてみようよ」
ママと女の子はパパに猫ちゃんを飼っていいのか聞く為に家へと帰りました。
「ただいま」
「ただいまぁ~」
ママと女の子が家へと帰ってきました。
「手を洗うよ」
「手を洗うよぉ~」
女の子はママの言った言葉を真似してパパに聞こえるように大きな声で言います。
「パパの好きなリンゴを切ろうか?」
「うん。パパの好きなリンゴを切るよぉ~」
女の子はキッチンに立つママの横に立ちます。
ママがリンゴの皮を剥いています。
「今日の皮はいつもより長いよ」
「ママ、それはパパには内緒だよ。後で見せるから言わないでよ」
「内緒ね」
そしてママはリンゴを切ってお皿に並べパパの元へ持っていきます。
「パパ。今日のリンゴは美味しいかな?」
「パパ、聞いてよ。今日のリンゴの皮はいつもより長いよぉ~」
ママはパパにリンゴを渡します。
女の子は床につきそうなリンゴの皮を持ってパパに見せます。
しかし、パパは何も言ってくれません。
でもいつもの優しい笑顔は見せてくれます。
「パパ。この子が聞きたいことがあるみたいなの」
「パパ。猫ちゃんを飼ってもいい?」
女の子がパパに聞いてもパパは何も言ってくれません。
「パパは飼っていいよっていってくれるよね?」
ママは何も言ってくれないパパに言いました。
「明日、ペットショップに行って猫ちゃんをくださいって言おうか?」
「いいの? パパ。ありがとぉ~」
パパは何も言っていないのにママは勝手に猫ちゃんを飼うことを決めました。
でも女の子もパパは何も言っていないのにパパにお礼を言っています。
何故、二人はパパが何も言っていないのにパパの気持ちが分かるのでしょう?
それは二人の目の前にあるパパの写真が教えてくれました。
パパはもう天国に逝ってしまい、ここにはいないのです。
パパはいなくてもママと女の子の中で生きています。
だから二人にはパパの気持ちが分かるのです。
次の日、猫ちゃんが二人の家に来ました。
猫ちゃんは家に入るとパパの写真の前で止まります。
そして一度パパの写真の方を向いて鳴きました。
女の子が猫ちゃんを呼ぶと猫ちゃんは女の子の膝の上に乗りました。
「パパ。この子はリンゴちゃんだよ。パパの好きなリンゴと同じだよ。リンゴちゃんって呼んでよぉ~」
女の子はパパに聞こえるように大きな声で言いました。
六年後、女の子は成長し、リンゴちゃんも大きくなりました。
「ニャー」
リンゴちゃんがパパの写真の方を向いて鳴きました。
「リンゴちゃん? そこにパパがいるの? ずっと探していたのにパパはそこにいたの?」
女の子はリンゴちゃんを抱き締めた。
「私にはパパは見えないけどリンゴちゃんが見えるならパパはそこにいるんだね。パパ、やっと見つけたよ」
女の子は新しい制服を来てパパの写真の前に立っています。
「パパ。今日は入学式だよ。行ってきます」
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