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9ゴリ オッサンの叫び声vsサタデーナイトフィーバー


俺とゴンは再度荒れ地にされとった農園を背に

ネネさんが指さした山の方を駆けている。


「っちょ、まってオーカワさん…だから速いって…。」

「お前が遅いんじゃ!」

俺の後方3メートルくらいを相変わらず息切れしながらついてくる赤いキツネ。

走っては休憩し、休憩しては走っての繰り返し。なんで俺がお前の歩幅に合わせなあかんねん!

「友達なんだから…もっと友好的に、気遣ってくれよ。僕は君みたいにガッシリ体系じゃないんだからさ。」

「誰がハンサムスマートボディビルダー体系や!この温室狐が!」

「細マッチョだねとは言ったかもしれないけど…」

「これだから運動せぇへん奴はあかんねん。」

「運動ならしてたよ!中学の時に卓球部だったし!」

「ほほう、そいつは意外…かどうかはしらんけど、ほんで?レギュラーにでもなったんか?」

「ううん、入学した時に一日だけ入部した。」

「それは体験入部っちゅうんや!」

肩に担いどったまさに熟睡中のマドロミでゴンをどついたった。扱いがひどい?

こんだけ荒い扱いしとんのに起きひんコイツもコイツやと思うけどな!何で起きひんのや!


「なんか臭いな。」

「オーカワさん、オナラでもしたの?非科学的だね。」

思い出したように自分の口癖を披露するキツネ。

「ちゃうわ!さっきっから変なにおいせぇへんか?」

「例の紫の液体があちこちについてるね。」

見ると、木とかそこいらの地面とかに何かが這った跡と一緒に紫の粘液みたいなんが付着しとった。

なるほど、向かっとる方向は間違っとらんかったわけやな。

そういえば、昼にもマドロミが言っとったけど、それなりに強い毒性を持っとるって話やったな。

気ぃつけんといかんな。

「僕、帰ってもいい?」

ゴンはそんな事を言う。

「あぁ!?お前何を言い出してん!?」

いや、下手すりゃ死ぬような液体があちこちに付着しとるようなそんな環境、普通誰かて行きたくあらへんわな。

正直俺かて、あのクソウサギ…というよりネネさんの為やなかったら行きたくあらへんしな。

「特に理由はないんだけど、急に面倒臭くなって。」

「せめて理由をつけんかい!」

読んで字の如く。毒を食らわば皿までや。お前は皿どころか土鍋ごと食ってもらうけどな!

マドロミと一緒にゴンを担ぐ。



―ヌゴゴゴゴゴッ!!


ウオオオオオオオ!!


アホなやり取りをしとったら、そんな唸り声とも地響きともつかへん音がした。

空からなんか、真横からなんか、背後…やったらそれはマドロミのいびきやろうけど、まぁ、どっかすぐ近くでようわからん不愉快な怒号がした。

なんやろうな、なんか夜中に外から聞こえるオッサンの声に似とるな。

条件反射で俺も怒鳴ってしもた。

ほんまええ加減にしてほしいんやけど?夜中に自転車こぎながら唄っとるオッサン。

分かりやすく音痴やったな。なぁ酒よ。お前にはわかるか。なぁ酒よ。知るかい!帰って寝ろ!俺ももう寝てしまいたいわクソが!


「あ、スっきもい汚ゴリ!」

「む!?」

声の方を見るとウサギがおった。クソウサギ。白いウサギ。ネネさんの妹のウサギ。ノノがおった。

つか、お前俺ん事『汚ゴリ』とか呼んどるんか!俺は綺麗好きやぞ!

「アンタも私の事、毎回変な呼び方してるんでしょ!ミミズ姫とかさ!」

「…姫」

とは流石に呼ぼうとは思えへんかったな。けど、ご自分でそう呼称しよるんやったら呼んだってもええな。

センスを感じひんけどな!

「つか、何をしとんねんお前。ネネさん心配しとったで!」寝とったけど。

「う…お姉ちゃん…でも、でも…」

流石のクソウサギでもネネさんの名前を出すと弱いらしい。ほほうこれは使えるな。これからもどんどん使って弱らせたろう。

ある意味伝家の宝刀って感じやな。卑怯かもしれんけんどな。


ウオオオオオオオオオ!

っと再び不愉快な叫び声が地面を揺らした。

「あ、巨大ミミズちゃん!」

「ウホ!?」

うっかりゴリラそのもののような驚きのリアクションをしてしまった。

ノノの目線の先に、言った通りの巨大なミミズ…というか、なんやあれ!

そこいらの木々と同じくらい大きく長い胴体に紫の粘液。

昆虫や爬虫類みたく手足や翅が生えとるわけでもない、その生き物は正しくミミズと呼んで相違ないはずやろう。

しかし、俺がうっかり捻りのない単純な驚きのリアクションをせにゃならんくなる要因は、

その不愉快な唸り声でも、単純にでかいってだけの理由でもない。

「多すぎやろ!」

頭が何本も生えとって、いやもうこれは神話とかゲームとかで見るヤマタノオロチとかそういうやつやん。

こんな物語のしょっぱなで登場してええやつやないやろ!

つか、こんなバケモンをミミズって言い張るノノもノノやけど…。

どこがミミズや!


「ヒャアアアア!でっかぁい!かわいい!」

変化球過ぎるリアクション!

「お前、まさかコイツを見るために追いかけてきおったやないやろな。」

「は?何言ってんの?当たり前じゃん。」

お前、ネネさんはお前が犯人を追いかけていったと思っとったんやぞ?


「オーカワさん、彼女をはやく連れて帰らないと!」

ゴンに促される。

「わかっとるわ。」

ノノは今にも巨大ミミズちゃんにダイブしてしまいそうな勢いやった。毒で死ぬぞ。

いや、むしろ既に毒で脳みそをやられとるんやないか?とも思う。

「おい、クソウサギ!ネネさん心配しとるから帰るぞ!」

「嫌!」

即答やった。


「我儘言うな!」

「嫌!」


「ええ加減にせんかい!」

「嫌!」


「お姉ちゃん心配してんねんから!」

「嫌!」


ちっこいウサギの腕を掴んで引っ張るが、ゴリラの俺を圧倒するくらい強情に粘るウサギ。

つか、なんやねんこれ買い物いっとる子供とオカンみたいになっとらへん?

自分で思っといて腹が立った。

どういう事?


オオオオオオオオオオ!!!!!

叫び声と共にミミズはこちらに迫ってきた。


そんで、カプッ!とかいう安い音とともにノノは巨大ミミズに食われた!

食われて飲み込まれていった。

「ウサギィイイ!!!!」

巨大ミミズは満足そうにゲップをしとる。漫画みたいな感じで。

「いやいやいやいやいや、あっかんやん!お前、自分の大好きなミミズに食われとったら世話あらへんやん!おうコラ!出さんかい!」

握りこぶしを作り、俺はミミズをボカボカ殴る。

多分、腹のあたりやと思う。

因みにいうと感触としては腐って中途半端に液状化したコンニャクを叩いとる感じやな。

いや、想像もつかんけど。

しかし、ゴリラの力をもってしてもミミズには大して利いとらんらしく微動だにせん。

それどころか、食後のマッサージを受けとるような心地になっとる。舐め腐りおって!

アメフト選手ばりのタックルをお見舞いすると、俺は盛大に弾き飛ばされた。

「グヘッ!」

仰向けに倒れこんだ拍子にマドロミとゴンを潰してしまう始末。


が、何をしても巨大ミミズは歯牙にもとめん有様。

そんで相変わらずでっかい叫び声をあげる。オッサンの咳払いみたいな不愉快な叫び声をあげる。

「くっそ、そんなでっかい声あげて、そんな目立ちたいんか!」


「言っとくが、物語の主人公は俺やから、お前は俺より目立てへんからな!」

何でこんな事をしたんか自分でもわからんけど、俺はミミズの前でサタデーナイトフィーバーのように人差し指を天に高々と掲げ

セクシーな腰を突き出して、凛々しい顔で叫んどった。

そんで、俺もミミズに食われ丸のみにされてまった。





出来るかなぁ。と思って三味線を買いました。


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