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5ゴリ 湯煙の彼女とフクロウの野望



「ほら見てごらん。あの星とあの星、それからあの星を繋げると、

フローリアン座。デザイン的にはあんまユーザー受けせんかったけど、クーペとは姉妹車にあたるし

そう思えば俺にとっては可愛い愛娘のような存在やな。」

夜空に浮かび湯煙で揺れる、まるでイルミネーションを思わせる星空を指さしながら俺は語って見せる。



「へぇ、大川さん物知りですね。じゃぁ、あの星とあの星とを繋げたら…

ほら、いすゞのベレル!丸目がとっても可愛い!」

「おぉ!せやな!しかも前期型の方やな。」

「そうそう!日本で最初のディーゼル乗用車なの!知ってた!?」

「そんなもん常識中の常識やん!トラブルの多い車やったからな、俺としてはおっちょこちょいな娘って感じやなぁ。

まぁ、なんといってもクーペが至高やな。」

「ねぇ、大川さん。」

「ん?」

「クーペと私、もしも結婚するなら、…どっち?」

「え?な、なんやねん急に!?」

臙脂色に熱る顔が俺に迫る。

「ねぇ、どっち…?」

彼女はずいっと迫る。

「そんな…。」



「そんなの…選べるわけ…がぁ!?」

ゴボゴボ…。

足を滑らせ俺は湯舟の中で溺れた。



「何してんの?」

「クーペ似の彼女は!?」

マドロミが横で顔をしかめとる。もともと訝し気な顔しかしとらんのやけど。

それともバカな奴を見とるような感じ…誰がバカや!アホと呼べ!

「わけがわからない…。」

すまん。俺も同し意見やわ。っと意識が正常に戻ってきたあたりでそう思う。

どうやら、ギルド内のマドロミん家で風呂を借りとったら居眠りをしでかしちまったらしい。

「そういや、この風呂ええ匂いやな。なんかの入浴剤か?バス〇マン的な」

「ニューハーフリザードっていう爬虫類の体液(×××)を調合して作った入浴剤。」

「いやぁああああああああ!!!?」

訊かなきゃよかった!!!

「いい夢が見れるっていう噂が。」

「つまり悪夢やろ!」

それじゃ何かい!俺はニューハーフと愛を語らっとったって事かい!

殺してくれぇ!今すぐに!!




ギルドはビックリするくらい巨大な木の中を無理やりくり抜いた感じで創られた建物やった。

そん中は、この前二人が粗雑に説明してくれた魔術?魔法の類で灯りがともされとって

白い壁と床の隅(名古屋弁でぐろ。はどうでもええ)にこれもまた木で出来たむき出しのパイプが繋いであった。

それが木の中に創られた家、というか住民の部屋に流れとる。

ゴン曰く、あのパイプで所謂生活水とか、あとは最低限の魔力を流しとるらしい。

巨大な木で出来たギルドの心臓部分に核のようなもんがあって、そこから全体に魔力を送り皆様の豊かな生活を御支えしとるとの事。

って地方の中小企業のCMか何かか!

俺はツッコミをする。


「ほぅ、貴方が例のゴリラさんですね。ゴンくんから話は聞いてますよ。」

風呂に入り、細マッチョな全身も真珠のように純真無垢な心もピッカピカに磨き上げられた俺と、黒い猫のマドロミが

ギルドの通路を歩き、「ちょっとリンゴを届けてくるから。」とフラフラ居なくなったダサいキツネを探していると

俺の頭上から、低い声が聞こえた。

「誰?」

頭上というか、もう俺の頭の上に留まっとるんやけど。

「どうも初めまして。私はフクロウのホトトギス14と言います。」

「紛らわしい名前やな。」

「アハハ(照)よく言われます(照)なので、皆さんには『ホトトギスさん』と呼んでもらう事にしてます(威張り)」

「そこじゃねぇやろ!」

そんでなんやねん、そのまるでひと昔前のチャットみたいな喋り方は!

しかも何で威張ってんの!どんだけツッコませんねん。疲れるわ!


「ギルドマスター?だよ。」

マドロミが説明してくれる。っが、よくわかっとらんらしい。

本当かどうか怪しくなってくるわ。

「彼の言う通り、ギルドマスターを任せて貰ってます(笑)といっても此処を創ったというだけで、基本的に何もしていないので

名ばかりなんですけどね。えっと…」

「あぁ、どうも大川コーサクです。よろしくお願いします。」

「オーカワさん。礼儀正しいですね。バッチグーです。」

っと言って、ホトトギスさん…めんどいな。もう14さんでええか。は、器用に翼で親指を作りサインを示した。

というかバッチグーとか古いな。何年前の言葉やねん。

色々と個性豊かな人やな…。


「創ったって、ここをですか?はぁ、凄いですね。」

俺はテンプレのようなお世辞をする。

社会人として培われた先輩や上司に対して過不足ないコミュニケーションスキルや。

凄いですねぇ。はステレオタイプのショボいオッサンには得に効果がでかいからな。有効的や。

因みに俺も女の子に言われると良い気になってしまうステレオタイプのチンパンジーや。今はゴリラやけどな。


「創ったといっても、私はフクロウですから殆どは何もしていません。

この世界に転生した時に一緒に居た友人達と協力してギルドとして、皆の住処を創った、創設メンバーの一人に過ぎません(笑)」

「それでも、凄いと思いますよ。」

俺やったらこんな風にギルドとして造り上げるなんて無理やったろうしな。尊敬する。

「元はと言えば、一緒に幼女のエロ同人創るサークルの仲間ってだけだったんですが、その象が踏んでも壊れない固い絆が、このギルドを造り上げたと

そういう事です(尊)」

「・・・・・・・へぇ」

「オーカワさんも、これから私達、『湯煙あばらペロペロキャンディー』ギルドとしてよろしくお願いします(尊)」

涎を垂らしながら、14さんは翼で握手を求めてくる。

そのヤバい表情から、一気に尊敬できる気が失せてしまった。


ギルドやなくて、サークルやん!!

会話しながら、通路を歩いてて若干気になっとったんやけど

プレートに風変わりな名前の部屋名が彫られとった。

「荒くれエロイズム」だとか「真・魔女っ子同盟」、「お姉さん戦記」その他もろもろ。

目を逸らしながら、ツッコミも放棄しながら、どうも可笑しいと思っとったとこやった。


「サークルやん!」

今度はモノローグやなくて、口に出してツッコミをした。

そして、いつの間にか一つの部屋に連れてこられとった。

プレートを横目で見ると「湯煙あばらペロペロキャンディー」と書かれとった。

室内は数人の…数匹、数羽の「転生生物」と思われるメンバーが慌ただしく紙にペンを走らせとった。

「今は眼鏡幼女が異世界転生して、勇者になって、そこで友達になった、これまた別の異世界から転生してきた幼女と

イチャイチャ冒険するラノベの同人誌を描いてます。これが実は凄い人気でしてね。だからオーカワさんにも手伝ってもらおうと思いましてね(笑)」

異世界で異世界物描くな!

「俺、絵心なんて無いで?図工の成績はいっつも〇一個やったしな。あ、ウンコ描くんは得意やで。色んな形状の、色んな状態のウンコ。」

「ウンコは…ちょっと出てきませんね。すみません。オーカワさんのせっかくのアイデンティティを生かせなくて…」

「そっか、ウンコ出てこんのかぁ。別にゴリラだからってウンコに固執しとるわけやないけどな!」

「オーカワさんが自分で書いてみたら?」

「書くって?」

マドロミの提案に俺は耳を傾ける。…が、期待はしていない。

どうせろくな事じゃない。

「ウンコに転生したゴリラの話とか。」

「俺がこれからウンコになるみたいやないか!!」

憤慨した。むしろ糞慨した。意味が分からん。



「まぁ、冗談はさておき(笑)」

っと14さんは切り出した。


「表向きはサークル活動して、みんなで作品の見せあいっことかして生活してるわけなんですが、

(むしろ、最近はそっちがメインと化してますが)本来はしっかりギルドとして、動いてるんですよ。

よくあるラノベの異世界物やゲームと同じで、ギルドに貼りだされた依頼や事件をみんなで解決したりしてます。

まぁ、当然、依頼を出すのも私達と同じ『転生動物』の仲間なんですけどね。今朝ゴンくんがやってたリンゴの採取なんかもそうですね。あれに関しては

依頼というか当番みたいなもんですけどね。」

だから、俺にもゴンやマドロミみたいに依頼を解決したり、当番で食べ物を探しに行きやがれ、このチンパンジーが。という事らしい。

ゴリラやけどな。


「しゃーないわな。地球壊滅して皆仲良う爆死してまったんやし、

俺も腹くくったるわ。元の世界に帰りたいだの言うたところで無理やろうしな。」

そもそも、帰る世界。帰る地球。帰る家がもう無いんやし、鼻水垂らして泣き喚いたところでどうにもならんしな。

…悔しいけどな。

そんな事言うてると、横でぼっ立ちしとるマドロミに「諦めの悪いゴリラだ。」とか言われそうやしな。

「…諦めの悪いゴリラだ。」

「言うんかい!」



「それが、そんな悲観的になる事もないんですよね。」

飽きもせず、ツッコミまくる俺を頭の悪いやつを見るような目で見続ける猫に、それでもツッコミにツッコミまくる。

そんな光景を笑いながら、14さんは空気を遮るような言葉を発した。

「オーカワさん、このギルドハウスいくらなんでも大きいとは思いませんでしたか?ちょっとした灯りとか、不自然に思いませんでしたか?」

「…それは異世界だから、やないの?」ゴンならそう言うやろ。

「それはそうです。異世界だから、ちょっとした魔術やらで、ここまで大きいギルドハウスが出来上がっています。だけど、それはこのギルドハウスの

元となっている『木』があってこそです。この巨木は『玉』の力が関係しています。」

「『玉』って…『玉』?」

「下半身じゃないですよ(呆)」

真っすぐ呆れられた。


「魔力を送る為の、核のようなものがある。っちゅうのは聞いたけど、それの事?」

「そうです。」

それはゴンから聞いた話やった。

巨木の心臓部に核がギルド全体に魔力を送っとるっちゅう事やった。ここテストで出ます。


「その核っていうのが『玉』です。実は、この『玉』はこの異世界の色々なところにあって、

そして、使うといろいろな魔力的効果をもたらしているのですよ(笑)」

なんで笑ってんねん。

「その一つが、巨木を作った。っちゅう事かいな。」

もともとあった杉の木か何かに、その「玉」ってのが引っ付いて、でかくなったんかなぁ。空想。


「だから、依頼をこなしながら『玉』も探してほしい。って事です。

いろんな効果がありますからね。とても高く売れたりするんですよ(悪)」

「ほほう。例えばどんな?」

「例えば…可愛い妹が出来たり。幼馴染の女の子が出来たり…」

14さんはニヤリと下卑た顔を浮かべ、コソコソと話す。

すげええええ!

「…したらいいですねぇ。」

「妄想かい!」期待して損したわ!!



「あぁ、でもだから、悲観的になる事もないんです。」

さっきと同じセリフを14さんは繰り返す。

まぁ、聞いてください。とそう話す。


「実は夢をみたんです。」

「夢…?」

俺は彼の居室の机に佇む一羽のフクロウに鸚鵡返しをする。フクロウ相手やけどな。




「女神が現れたんです。そう、例えて言うなら仲間由〇恵とイモトを足して2で割って、もう一回、具〇堅さんを足したような

そんな女神様が現れたんです。」

それは女神やなくて、キメラやない??


「女神は言いました。・・・・ぴえん!リンゴでウサギさんが出来ないにょぉぉお!」

「え!?何が起きたん!!」

今はリンゴ関係ないやろ!

「すいません。間違えました。」



テイクツー

「女神は言いました。・・・・やめてぇ!アタシはハチミツかけない派なのぉおおお!…ッハ!?」

「何?その女神虐められとるん?」

やっぱ関係ないんやけど、俺もハチミツなんてかけへんから、その女神さんとは気ぃ合いそうそうやな。どうでもええけど。

「唐揚げにレモンかけたら?」

「あ?しばきまわすわ。」

だから、唐揚げもリンゴも関係あらへんし。



「この世界には、使うと様々な摩訶不思議な力をもたらす玉が隠されています。

あるいは力を、あるいは富を。…もしかしたら、貴方たちの世界を取り戻す事もできるかもしれませんね。」


と、女神は言うたらしい。

その「世界を取り戻す」とは、ひょっとして、死ぬ前の世界に戻る事ができる。って事か?

いや、そうは言うても夢のはなしやろ。

「ホトトギス14さんの夢は結構、現実になるんだ。この前も、ゴンが彼女にフラれる夢が現実になったし。」

「ざまぁ(笑)」

14さんの喋り方が伝染してしまった。


俺が転生してきた時に、いちはやく駆け付ける事ができたのも、どうやら

14さんの夢のお告げのおかげなんやとか。それなら少しは信憑性は増すかなぁ。と思う。

もしも、その「世界を取り戻す玉の夢のお告げ」ってのが本当なら、俺の悲願が達成できるかもしれへんな。

クーペの待つ世界に帰れるかもしれへんな。

ジワリと身体が熱くなる。

「だからね、オーカワさん。私達と一緒に玉を探しましょう。」


「まぁ、ちょっとだけならな。」

俺は決断した。

湯煙に消えてった妄想を、現実に変える為の熱い熱い野望を滾らせた。


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