15ゴリ 難しい説明は大抵垂れ流し
紆余曲折。
っちう便利な四字熟語で大須や歌舞伎町や新世界によう似た雰囲気のマーケットエリアでのショッピングでの
物語を割愛するとして、俺はクーペを頭に乗っけて自室に帰ってきた。
すると、このゴリラの身体にはちょいと狭い部屋のど真ん中に今朝方と同じような感じで
同じような重箱が置かれとった。
クー…っという音が頭の上から響いて降りてきて、
「まぁ、せやなそろそろ小腹もすいてきたしな。」と俺は重箱の蓋を開けてみる。
三段積みの重箱で、一番上に漬物やサラダや野菜のような副菜、
二段目には「おお!こいつはええやん!昼からこんなん食ってバチあたらへん!?どこのどなたか存じまへんが!おーきに!」と
なんと鰻重が詰め込まれとった。なんども言うが異世界やから鰻かどうかは分からんけど、それによう似たなんかやろうな。
一番下の段にはデザートで色とりどりの果物が切り分けられて詰め込まれとった。
「きゃー!!」
クーペは嬉しそうに奇声を上げる。
「これはお前に全部やるわ。あぁ、せやったらさっきサイママに貰ったヨーグルト擬きを和えてもうちょい食べやすい感じに細かくして…
ほれ、オーカワ特性!ゴリラ印のフルーツヨーグルトの完成や!ってそのまんまやないか!」(一人ツッコミ)
ボトルに入った豆腐とワカメの味噌汁を飲みながら、俺はクーペと一緒に昼飯をもそもそと食べる事にした。
何故かクーペの為も考えてか置いてあった赤ちゃん用のスプーンを本人はかなり気に入って
それを器用に使い野菜とフルーツを交互に食べる。
「朝に続いてよく食べるね。」
「まぁ、食べ盛りやからやろ。よう食べた方が早うデカなるしな。」
「オーカワさんの事を言ったんだけど。」
ゴンは呆れたように肩を竦めて言うた。
「今度は鰻重か。この前まで宿無しだったのに、セレブになったね。人生なんてヌルゲー…。」
「ええやろ。因みにお前の分はない。すべて俺とクーペの胃袋に流し込んだるわ。ガハハハハ!!」
「その鰻、中に陽気になるような薬でも入ってるんじゃないかな。」
俺のテンションが上がると、ゴンはテンションが下がるんか?
因みにマドロミのテンションが上がる事はきっとないんやろうな。
「これは、どこ置いたらいい?」
後から来たマドロミと一緒にゴンが小さい本棚を持っていた。
「どこでもええで。とりあえず台車から全部出して適当置いといてくれたらあとは全部俺で置くわ。」
「そう?わかった。」
「言うても聞かなそうやしな。」
一言多いよと。とマドロミはむくれる。
「あ、そうそう。これホトトギス14さんから預かったんだ。」
マドロミはカバンからルンバくらいの大きさの円盤みたいなもんをよこした。
「なんやこれ、フリスビーか?」
「違うよ。」
お前のようなゴリラは、それでもやってろとか、そういう意味を込めた14さんのちょっとしたジョークかと思ったけど
どうやら違ったようやった。
万が一、正解やったら飛んで行って焼き鳥にしたるところやったな。危ない炙ない。
「あの人はそんな事言わないでしょ。」
「言わへんな。」
言うたとしたらキャラ崩壊もええところやろ。
「これはね、ココの取ってを引っ張ると、ほら円柱になるの。」
マドロミは円盤の中央にあるちょっぽりを掴んで上に引っ張った。
ゴンやマドロミよりもちょいでかいくらいの大きさになるった。
「なるほど、つまり14さんは俺に『お前みたいなゴリラはこれでも転がしてパンダみたいにあざとく可愛い表現して人気でも集めてろ』って渡して来た
ちゅうわけやな。」
「違うよ。」
「パンダは普通に可愛いでしょ。」
「かわええな。俺程やないけどな。」
「え?」
「え?」
「は?」
「これはね。まぁ、テレビだよ。ほらリモコンとかついてるでしょ。」
「テレビ!?」
円柱の側面あたりに小さいボタンらしきもんがいくつかつい取って、そこには見覚えのあるマークが刻まれとった。
「そう、テレビ。ホトトギス14さんが色々なサークルとコラボしたりドクと一緒に作ったんだって。」
そして、色んな人に配ってるんやとか。
時々手に入る小さい玉をエネルギーにしてるんやとか、そういう小難しいことをマドロミとゴンは説明しとるが聞き流した。
昭和の電車のトイレの用に垂れ流しにした。
「まぁ、これでテレビとか通話とか、色々できるわけやな。」
「そうそう、パソコンみたいな感じでね。漫画付きの説明書もついてるから、読んどいてね。これマードさんって人が書いた漫画で
凄い読みやすいし、出てくる女の子もすっごく可愛いし、オーカワさんも好きだろうしね。タイトルは、『ときめき☆ベートちゃんのテレビ!~キミのくれた思い出』
小説版も出てるから興味あったら読んであげてね。」
「後半殆ど、漫画の宣伝になっとる気ぃするけど大丈夫か?」
ゴンに渡された説明書とやらはかなりの分厚さやった。開いてみると…進〇ゼミの付録の漫画みたいやった。
「……この漫画、続きとか出てへんの?」
うっかり眼帯の魔女っ娘キャラにときめいてまった。
「それにしても、結局その重箱は誰からのプレゼントなのかな?オーカワさんにそんなものくれる人いたっけ?」
ゴンはそう切り出す。
「知らんわ。」
空っぽになった重箱をクーペが小さい舌で舐めとるのを、俺は「行儀悪いからやめなさい。」と取り上げると、クーペは「やぁ!」と怒る。
たまに見せる抗議の姿勢や。
「サイのオバちゃんとか?」とマドロミ。
「サイママか?いや、あの人やったら、こんなこっそりデリバリーなんかせぇへんやろう。それにさっき会ってきたばっかやしな。」
会話中に朝飯に置いといた重箱の話が出てきても可笑しい話やないやろ。
「おじちゃんには内緒で置いてるのかも?」
「ああいう人はな。夫婦で内緒なんてできるタイプやないと思うで?世話焼きタイプやけど、ああいうタイプのオバちゃんっちゅうのは
昨日の晩飯のオカズをそのまんま、次の日の朝飯とかにするタイプやからな。重箱やなくて近所で貰ってきたコロッケとか。うちのオカンもそうやったし。」
「オーカワさんのお母さんは関係ないかと…。」
「ほんで自分で食わへんくせに、人にばっか進めてきおんねん。」
半分愚痴である。
「最初は、お前らのどっちかやって思うたけどな。お前らにそんな料理スキルあらへんやろ。」
「火だったらおこせるけど。」
さすがチャッカマン担当やな。
「ボクはできなくもないよ。頑張ればね。」
「ほほう。嘘やったらサンドバックやな。」
「そのうち、できるようになります。」
身体一回り分くらい塩らしく振舞うゴン。お前はすぐ見栄をはるな。
段々、コイツがキツネになった理由がわかってきたわ。
「オーカワさん自身は、誰だと思う?心当たりとか。」
「ネネさんとかだったら、ええなぁ」
マドロミからの質問に俺はそう答えた。
「いや、それは妄想でしょ。マドロミさんが訊いてるのは推測の方だと思うんだけど。あ、じゃぁネネさんの妹のノノちゃんの方は?
この前のミミズ事件のことで、結構きつい対応をしたけど、でもオーカワさんに謝罪とお礼もしたくって、あぁだけど恥ずかしくって
どうしよううまく渡せないや…。みたいな感じでコッソリ手料理をデリバリーした…みたいな?それにあの子ならクーペちゃんの事もわかってるし
可笑しくはないんじゃない?」
「可笑しいのは、お前のそのテンションやろ。」
その妄想を本人に開示したら、百叩きされそうやな。それはそれで面白そうやけどな。
「でも、実際されたら嬉しいでしょ。」
「…まぁ、食いもんに恨みはないからな……って何を言わせんねん。」
マドロミに突かれて俺はちょい動揺してしまい、反動でゴンをどついた。
片付けも終えてしばらくして、俺はクーペを貰って来た乳母車に乗せた。
「あぁ?」
「おっと、起こしてまったか?すまんな。」
気が付けば、日はしっかり沈んでもう夜になっとった。
「ちょい散歩でもいこうや。」
人間の頃やったら晩飯前にちょっとBeatlesの『STARTING OVER』とか聴きながらマラソンして、コンビニで缶コーヒーでも買って
公園でたそがれるっていうルーティンをしとったが、
最近はそんな余裕もなくなっとったしな。
ジャージを手に入れたから思い出したっちゅうわけや。
まぁ、今ではクーペがおるから走ったりは出来へんし、その代わりにウォーキングくらいなら別にええやろ。
灯りを消して、乳母車を押しながらギルドの中を歩き、そして俺は吹き抜けの広間に出てきた。
喫煙コーナーになっとるところで何人かの転生動物達がたむろしとった。
その一群から離れてベンチに腰掛ける。
「お、そこの子連れゴリラさん。一本いるかい?」と声を掛けられるが「いえ、拙者、この通り子連れ故、遠慮するでござる。」と役者口調で断る。
いや、誰が子連れゴリラやねん。っと思ったが、まぁ言いえて妙やろ。っと思う。
代わりに缶コーヒーとは言わんまでも、そこにあった自販機みたいな機械からコーヒーを一杯貰ってきてベンチに腰を落ち着ける。
そんで俺は自分の自室を睨みつけた。
窓から灯りを灯す、模様替えしたばっかの自室を。




