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14ゴリ 文明



人間っちゅうんは、得体の知れんもんを怖がる。

もともと知性のある生きもんやから、その反対であるもんを怖がるのは

当たり前なんやろうな。


せやから、見識を広げて叡智を求めて探求する。

何でかっちゅうと、兎に角、わからんっちゅうのが怖いからや。

ようわからん生き物に出くわした時とか、真っ暗闇な場所とか誰かて嫌やろ?

なかにはワクワクするやつもおるかもしれんけどな。


それは俺みたいな立派なマッチョなゴリラのオッサンかて同じ話や。


恐くて怖くてしゃーない。

漏らす…とこまでは多分いかんやろうけど、身震いしてまともに立っとれん。

眼球は下手くそなバタフライでもするみたいに泳いで、

口はムンクの叫びみたいにかっぴらいて、死にかけの魚みたいにパクつかせて

まるで身体全体を小さな蟲どもがウゾウゾと這いあがってくるみたいに肌の神経が刺激されよる。


実は怖がりでピュアな俺は、その現象に過度に驚いたんや。



朝、目を開けると机の上にそれは置いてあった。





「……なんで重箱?」

ベッドで一緒になって寝とったクーペも寝ぼけた瞼をパチクリさせて、「ぅみゅ―…」っと小さい声で鳴いた。


重箱…

机の上に、臙脂色に桜の装飾が描かれた綺麗な重箱が置かれとった。

外を除くと日が昇って間もない様子。

「マドロミとかゴンが差し入れしてくれた…ちゅうわけやないやろうな。」

「まぁ?」

クーペも不思議そうにその角ばった箱を、っちゅうより興味深そうに眺めとる。

チビっ子にとっちゃぁなんでも不思議の塊やろうな。俺にしてみりゃ異質で怖いくらいやわ。

マドロミが、こんな気ぃ遣うわけあらへんし、ゴンの差し金にしてもアイツがこんな上等な重箱持ってくるわけあらへん。

アイツのゴミみたいなダサいセンスじゃ考えつかんわ。


「クーペ、あんま触んなよ?爆発すっかもしれへんからな!」

「おぼぉぉ!?」

「それは驚きの表現なんか?斬新な奇声やな」

ムンクの叫びに似とるなぁ。と思ったらもうそれにしか見えん顔になったわ。今度一発芸大会でもあったらやらせてみっか。


「あ、オーカワさんもう起きてる!おはよう!」

「朝からうっさいわ!」

矢先、ゴンが大声を発しながらドカドカと入ってくる。

「挨拶は大事だよ?」

と言いながらマドロミもフラフラと入ってくる。

俺の横でクーペが片手あげて「まぁ!」と奇声を上げる。

「ほら、おチビちゃんもオハヨウって言ってるよ?オーカワさんも見習わなきゃ。」

「はいはい。おはよーさん。」

ゴンはクーペの元気よさげな姿を見てか、俺にまくし立てる。

どうせおもろがっとるだけやろうから、俺は適当に挨拶をくれてやる。

「なんか安いよ。」とマドロミは言う。

「うん、オーカワさん、せっかくゴリラなんだからもっと大きい声で挨拶しなきゃダメだって!」

「ゴリラ関係あらへんやん!」

「そうそう!!そんな感じ!センス出していこう!!オハヨー!!」

「おッはよ!」

いや、センスに関しちゃお前に言われる事なんてあらへんわ!!

「ハロー!!」

「なんでネイティブなやねん!!?」

「その無駄な態度と同じくらい大きく!!ハロー!!」

「アルゼンチン・バックブリィィイイカァアア!!!」

と挨拶をしながら俺はゴンにプロレス技をかける。

「:lsfdぴぴいwwじゃsでぃあお!!!!!」

どっかのチワワそっくりの言葉にならない泣き声をあげる。

元気があれば何もできる!!

俺の芸術的な技をクーペとマドロミが楽し気に拍手する。



「ところで、どうしたのこの重箱。」

消し炭みたいな色合いになったゴンに腰掛けてマドロミは件の重箱を凝視した。

「いや知らん。朝起きたら置いてあったんや。」

俺がそう言うとマドロミはふぅん?と首を傾げてから、蓋を開ける。

「お、おい。そんな躊躇もなく!!」

爆発とかすっかも…と思ったが、別にそんな事もなく、当然、煙がモクモクと出て気付いたら爺さんになっとった。なんちゅう事も

なかった。

そんで重箱の中身はというと、普通に美味そうな魚とか野菜とか漬物とか、そんなバランスの取れた弁当の数々やった。

「…そういや、運動したら腹が減ったな。」

腹の虫が嘶き、俺はクーペと一緒に重箱の弁当を食べる事にした。

「いや、さっきまで散々警戒してた癖に、誰が作って持ってきたのかも分からないもの食べちゃうんだ…」

とかいう、ゴンの呆れた顔をよそに俺は美味しく朝ごはんを頂きました。

因みに、よう分からんエビみたいな甲殻類がいっちゃん美味かった。

クーペは変な赤い粒粒したやつをシャクシャク音を立てて頬張っとった。実に満足そうにしとった。

アレかな。味はどうかしらんけど口あたりの新触感に感動したんかもしれんな。

また新しい発見やな。




さてさて、人間っちゅうのは知識のある種族や。

ほんでもって文明、文化を築いてく生き物や。

せやから地球やと途方もなく永い年月ででっかい文明を作ってったんやな。

沢山の偉人に感謝やで。

カール・ベンツ氏が居らんかったら、自動車は生まれんかったやろうし、

ヘンリー・フォード氏が居らんかったら、電気自動車は発展しとらんかもしれん!

数々の文明・文化が俺らの生活にオイル色の潤いをもたらしてきとるんやで!


しかし、地球は滅びてしまった。

偉大なる偉人が築いてきた歴史は星屑になった。


っと思っとった。


「なんやねん。ここは?」

俺はゴンとマドロミに連れられギルドの地下に来とった。

上の生活拠点とまるっきり雰囲気がちゃう感じで、なんちゅうか埃っぽい感じやった。


「まぁ、だからギルドの地下だからさ。木造の作りだった住居とかのスペースと違って土とか岩の造りで出来てる。

所謂、砂のマーケットエリアってやつだよ。

商店街とあと製造工場のなり損ないが固まってるエリアね。」

ネネさん、とノノの任された新しい農園、マンボウ農園改めアジサイ農園もその一角に配置されとるんやとか。

そうゴンは説明してくれる。

「なんか感じが新世界とか歌舞伎町とかと似たような感じやな。」

「新世界やなくて異世界じゃろがぁい!」

ゴンはそう言いながら俺の脇を小突く。

「いや、ボケたつもりやないけどな。」

「……ぇ、あ、ほ、ホンマかいな…?でんがなまんがな。」

「お前次、そんな適当な関西弁しゃべったらどつきまわすからな。」

どうも俺にあわせようとしたらしい。

「バザーとかもあって面白いよ。」

とマドロミがそう言ってポケットから、なんか白い石っころを出して見せびらかした。

「この前、交換してもらった。オリハルコン。」

「え?オリハルコンってあのゲームとかでようあるオリハルコンか?いや、ただのそこらへんの石っころにしか見えへんけど?」

「違うよ。石じゃなくてオリハルコン。」

ムっとした表情でそう頑なに言いおる。

「…まぁ、綺麗っちゃ綺麗やけど。なんに使うん?」

「別に。」

沢尻エリカみたいなリアクションすな。

「なんか綺麗だったから交換してもらっただけだよ。」

「お前絶対騙されとるぞ。」


まぁ、ガキん頃なんてとにかく綺麗な石っころとか、変なもんを集めてたりしたもんやけどな。

小学生くらいの頃のクラスメイトやったカズヒロくんは、便所のタイルとか剥がして集め取ったな。

「貴重な魔石や!」とか言うて菓子の缶に入れて持ち歩い取った。

カワヤン家の便所の壁のタイルなんて特に綺麗やったから、勝手に入って持ち去ってっとったな。

俺んとこにも来たけどな。

そんで、「謎の魔石」とか称してクラスの連中に売りさばい取ったな。

今思えば普通に犯罪やん。

「不法侵入」「器物損壊」「窃盗」「転売」アイツ大悪党やん…。


「まぁ、ここでオーカワさんの部屋に必要なものを探していこう。」

そうゴンに連れてこられた場所は、マーケットの中でも結構手狭なところにあった。

廃材やらゴミやらが壁とかを覆っとってマーケットの一部っちゅうかホームレスの方々が住んどるような感じの場所やった。

いや、屋根んところからぶら下がっとる、申し訳程度の看板に書かれとる通り「リサイクルショップ」なんやろうな。


「こんにちわー」

ゴンが先導し中へ入ろうと扉に手をかけると引き戸はあっち側へ外れて倒れた。

「壊れとるやん。」

「まぁ、あってないようなもんだし。」

そんでそのまま中へ入る。せめて直していけや。

っと思う俺自身もズカズカと中へ入らせてもらう。

「やぁ、いらっしゃいませ。オーバー。」

丸椅子に座っとるオーバーオール姿のマンドリルは片手で電話の仕草をしながら言う。

オーバーオールと無線機の応答を掛けたのか、いや、無線機に限っては仕草でしかないから掛かっとるわけでもないけどな。

「おー・・・・ば」

「たまのまともな言語がそれってのは寂しいな。」

クーペの辞書が用途の微妙な言語で埋められていきそうやな。


「あぁ、貴方がオーカワさんですね。初めまして。アタシは最強にオシャレで賢いセンスの塊のドクター・ドリルと申します。」

「初めまして。」

まぁた、怒られそうな名前の奴が出てきおったなぁ。マンドリルやからドリルなんかもしれへんけどな。

「皆からはドクと呼ばれています。生前は医者をしていて、こっちでも医者として働きながら科学者とかもしてます。リサイクルショップは

まぁ、趣味ですねぇ。センスありますでしょ。」

「そーですね。」

自分でセンスあるとか言うやつは、基本的にセンスなんてないからな。

「ん?どうかした?」

キョトン顔のキツネ。

「なんでもないわ。」

「本名は、薮井って言います。薮井シンヤ。」

「薮井シンヤ…。」ヤブイシンヤ…ヤブ医者…。医者としてアウトな名前やない??


「確かにセンスを感じますね。っちゅうか、なんちゅうか、異世界って感じせぇへんもんばっか転がっとる感じしますわ。」

見ると店?の商品はなんやろう。異世界ちゅうよりは現代の文化といわんまでも、それなりに文明にレベルを感じる気ぃする。

それに関して言えば、このマーケットエリアに来たときから感じとる。

「さすがに車とか電車とか観覧車とかはまだだけど、別に異世界だからって草原とか土とかだけのRPGみたいな感じとは限らないよ。はぁ…」

「長台詞で疲れるくらいならワザワザツッコミせんでええやん。」

つか、なんで文明の例えが乗り物によっとるんや。

「マドロミさんが言いたいのは、だから異世界に転生したわけで、過去に飛んでったわけじゃないって事だよ。

みんな一斉に転生してきて、結構経ってるからそれだけ色々な知能がある人が結託して開拓してるから、文明は発達してきてるんだよ。

あぁ、でも一斉にって言っても同じタイミングで死んだから同じタイミングで転生してるってわけじゃないけどさ。」

それなりに誤差がある。っちゅうはなしやった。

「まぁ、それで文明がえらい勢いで進化しとって、もとの時代の文明レベルとは言えんけどそれなりに文明が進んどるんやな。」

ちょい納得がいったわ。

「もとの地球とこっちの世界とで物資の有無でできるものに差があるんですよ。」

とドクターは言う。

俺、この人の事なんて呼ぼうかな。医者やって言うとるし、ドリル先生でええか。

「物資がなくて作れないものは、玉を見つけてそれで作れたりするかもしれないよね。オーカワさんの大好きな車とかさ。」

「車が好きやってはなしはしたかと思うけど、ちゃうねんって。寧ろそのあとの夢がセットなんやって。」

そう言うもマドロミは理解できひんっちゅう顔やった。

人のセンスに対しては雑すぎんかコイツ。



「ほんまに貰ってまってええんですか?」

「構いませんよ。まぁ、台車はちゃんと返してほしいですけどね。」

「あんがとございます。そん時またおもろいもんあったら見ていきますわ。」

「よろしくお願いしますね。」

今回のミミズ事件の影響が大きすぎるんか、単純にみんなが親切なんか

俺はドリル先生から自分の寝床に必要な家具を貰ってしまった。タダでな。

必要のないもんも貰ってしまった気ぃするけどな。

紫のチワワの剥製なんかは、先生曰く買い取ったはいいが、気持ち悪くて店に置いておきたくないという理由で

半ば押し付けられた感じやった。

呪いの人形みたいやな。かさばるし、ちょいリアルやし。

あとは怒ってひっくり返すのにちょうどいい感じのちゃぶ台とか、なんとラジカセがあった。


自室に戻る前にサイのオバちゃんとこによった。

スカジャンが粘液で溶けてしまった為やった。

「あらあらあらまぁまぁまぁ!!!!アンタ、パパになったのぉ!!?おとーさん!!ゴリラさん!!ゴリラさんきたよ!!」

「お前、もうちょい小さい声でねぇのか!!このヘチャムクレ!!」

「あ、あの、俺、オーカワです。」

大きい声で再び痴話喧嘩が勃発。

「あぁ!スカジャン!!?そうじゃろ!!あんな軟弱なもんな!!かまわんわ!!それよりどうじゃ!!!こっちのが若いもんはええじゃろ!!」

「ダメよ!!そんなの古いわよアンタ!!今時の子はもっとオシャレな感じがいいの!!シュッとした服作っといたんだから!!」

背中に髑髏が書かれたライダースジャケットを押し付けるサイのおじさんと、今度は虎の刺繍が入ったスカジャンを推してくるサイのオバちゃん。

貴方ならどっち?

俺はどっちも選ばん!どんなセンスやねん!

「あ!!」

っと短い指で棚を指すクーペ。その先には赤くでかいジャージがハンガーに吊るされとった。

そのクーペの機転なのか、お陰で今度は生前で寝間着だったのが、ただの普段着になった。

おじちゃんもオバちゃんもちょい残念そうやったけど、クーペの嬉しそうな顔を見て「仕方ないな。今日は負けを認めよう。」と

ジャージを差し出した。

そもそも何の勝負やねん。


「これ、ばあちゃんからのおまけね。今度は嫁さんも連れてきてね。ゴリラさん。」

と、オバちゃんはクーペ用にと奥から赤ちゃんようの服と半纏を持たせてくれた。

つか、嫁さんって、なんで実家に帰ってきた息子みたいな扱いを受け取んねん。オカンか!

「ばーば!!」

っとクーペはキャッキャと笑う。「お前のバーバやない!まったくの他人やからな!」

「うみゅう?」

「まぁ、ええわ。とりあえず、さっさと帰って片付けすっか。」

また奇声を上げてクーペは俺の頭へと飛び乗る。



っと帰って貰った家具を整理したり、昼めしにしたりしようと思っとったら

また今朝と同じ事件に出くわす。


「…重箱や…。」

今朝がたと同じ、パンドラボックスが、同じような形で部屋の中央に配置されとった。




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